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序章:乃々子さんの息子
飲み会でも飲み過ぎにはご用心 02
しおりを挟む少し長いようにも窺えるが、目付きが少々悪いので、逆にキツい雰囲気を緩和させているようにも思う。
頬には程よく肉も付き、唇もふっくらとしている。
こういう職業柄か、出会った人間を、先ずは攻めか受けか判断する癖がある。
羽李はどちらかと言えば受けかもしれない。
座敷に長テーブルを二つくっつけて、計10人で囲んだ。
上座には澤田が陣取る。
短い縦の辺に一人で座っていた。
横に長い辺の壁側に羽李が座り、楼はちゃっかりとその向かい側を確保した。
扉側で出入りが激しいが、澤田に酒を勧めやすい好都合な配置だ。
横目に強面を確認すれば、既に人を一人か二人始末してきたような顔の澤田が立ち上がる。
好き勝手に喋っていた一同は、途端に黙り込んだ。
「あー、皆揃ったみたいだからよ、夏木の歓迎会、始めんぞ! 今日は無礼講だ。飲めや飲め! 乾杯だ」
思わず笑みが溢れてしまう。
本当に不器用な人だ、と思うと自然と笑えてくる。
澤田の強面はほんのりと赤い。
楼には解っていた。
彼はこういった仕切りが苦手なのだ。
それなのに、親分顔が災いして仕切りをやらされてしまう。
意外と真面目な性格なのか、澤田は頼まれると断われないようだ。
各々にグラスやジョッキを持って、かんぱーいと叫ぶのを目にして、彼は安堵の表情を浮かべて座り込む。
可愛いな、と考えてしまう自分はどうかしている。
僅かに湧いた感情を押し込めて、楼は澤田に酒を勧め続けた。
彼は断われない人間だ。
勧められるだけ飲んで飲んで、会が終わる頃には、真っ赤な顔で畳に突っ伏していた。
いざ帰ろうか、となっても澤田に起きる気配はない。
勿論、楼の計算通りである。
困り顔の先輩達に、自分の家が近いからとこじつけて澤田を請け負った。
どんな理由であれ、彼等は安心して帰って行く。
澤田は怖いことで有名だ。
誰も面倒などみたくないのだろう。
一番の後輩の羽李だけは最後まで気にして、手伝いましょうか、と言っていたが、有無を言わせない笑みを浮かべれば、彼も素直に帰って行った。
タクシーを呼んだ。
到着した車に澤田の体を押し込んで自分も乗り込む。
己の住所を告げると、タクシーは走り出すのだった。
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