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一章:教育されてます!
作家様は大学生 11
しおりを挟むふんわりとした微笑みの裏に、何やらブラックな気配を感じ取り、羽李は必死で首を上下させる。
「彼女とかいないんで、大丈夫です」
「なら良いんだけど。食べ物は好き嫌いない? 嫌いな物があれば、今の内に言っておいてね」
今、女児の間で人気の、女の子向け戦闘物に照らすならば、酒都はさしずめブラックハートと言った感じかもしれない、と頭の隅っこで気持ちの悪い想像をしてしまい、苦い顔になってしまう。
酒都が、ん? と首を傾げている。
相当嫌いな食べ物があると思われたのだろう。
「……強いて言うならば、漬物全般、食べられないです。幼い頃からの天敵で」
「そうだよね、誰にでも一つぐらいは苦手な物ってあるよねえ。覚えておくよ」
何故だろう、嫌な予感しかしないのは。
羽李が冷や汗を垂らしつつ、はいと小さく返事をした頃、背後に気配を感じた。
後ろに振り向けば、其処にはツンデレさん改め鈴見さんが、お盆を手に立っていた。
そう言えば、と今更ながら、酒都のいつものメニューとは何かが気になり始める。
鈴見がお盆を置く手元を凝視していた。
パスタとサラダに、飲み物も付いている。
烏龍茶のようだ。
パスタは、和風のツナオロシ系で、ほうれん草やコーン、鷹の爪等も入り、色鮮やかに見える。
美味しそうな醤油の香りに、鼻を刺激され、空腹感が増した。
鈴見は一礼すると、その場を離れて行った。
ありがとね、とその背中に声を掛ける酒都は、紳士なのだろうか。
よく解らない人種である。
「漬物って、定食にはつきものだよね。必ず付いてくるけど、どうしてるの?」
羽李の分が来るまで待っているつもりなのか、目の前の食事に目線を落とすも、手を付けることなく、また羽李に視線を戻し、酒都は問い掛ける。
「あー、と。人と一緒なら食べて貰います。一人の時は、申し訳ないんですけど、残してます。漬物だけは、戻しそうになるんで」
「そっかそっか。じゃあ、今日は僕が食べることになるのかな?」
うんうん、と頷いた後で、酒都の首が傾いた。
途端に、羽李の顔は、申し訳なさそうに歪んだ。
眉尻が下がっている。
「いや、まあ。先輩が食べても良いよと仰るなら、お願いしたいですけど。無理にとは言いませんよ」
「んー、どうしようかなあ。パスタに漬物って、微妙じゃない?」
酒都は、左手で顎を擦りながら考え込んでいる。
考える時の癖なのか、唇が尖っていた。
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