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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
死にかけキノコに恋をした 04
しおりを挟むばしん、と響いた音は、涼子が明紫亜の頬を打ったものだった。
肩をガッと掴み揺さぶる涼子の顔には怒りが滲んでいる。
「馬鹿野郎! 産まれてきて悪い生命なんかある訳ないだろ!? 明紫亜に出逢えて、私は幸せだったよ。あの部屋で、明紫亜を見付けた時、お前が生きていてくれた時、神に感謝した。無神論者の私が、だ。お前は汚れるからと抱き締められるのを嫌がったけど。嬉しかったんだ。明紫亜という存在が愛しくて堪らなかった。明紫亜が私に幸せをくれたんだ。姉さんは、明紫亜がいてくれたから、今も生きている。それがどんなに尊いことか、わかるか?」
明紫亜の顔を覗き込む涼子に、彼は小さく頷いた。
そっ、と涼子の頬に手を伸ばし、か細い指が彼女の涙を拭う。
「おかあさん、ぼくのこと、嫌いなんだよ。死ねって、叩くんだよ。それなのに、ぼくよりも痛そうな顔してるの。辛そうな顔でぼくのこと叩いてた。時々ね、ぼくがいなければ死ねるのに、って泣くんだ。ぼくがいるからおかあさん死ねないんだよ。ぼくが死ねば、おかあさんも死ねる。でも、ぼくはおかあさんに生きていて欲しかったから、死ねなかった。いっぱい汚したし、死ねなかったから、だからおかあさん、ぼくのこと、もういらないんでしょ? 涼子さんは、汚いぼくのこと、ぎゅ、ってしてくれた。うれしかった。ぼくが生きてること、よろこんでくれた。もう大丈夫だって言ってくれた。安心したけど。ぼくのものじゃないよ。ぼくは涼子さんの子供じゃないもん。愛してもらう資格なんて、どこにもない」
くたり、と傾いだ首は折れてしまいそうだ。
寂しそうに目を細める様は、拒絶を示しながらも、愛を欲しているように見える。
胸が、ぎゅう、と切なくなった。
愛して貰うことに資格などいらない筈なのだ。
それなのに、明紫亜は資格がなければ愛して貰えないと思っている。
蒼真の中で、やるせなさと憤りがぐちゃぐちゃに混ざり合い、気付けばベッドに駆け寄っていた。
「家族だ、って言っただろ! 僕はメシアのこと、好きだぞ! 家族になろうとする前から諦めるなよ! 僕が幸せにするから。絶対に護るから。僕の家族になれよ! 家族が家族を愛するのに、資格なんていらないだろ。僕はメシアのこと、もう沢山好きだし、いっぱい愛してる。黙って愛されろ!」
明紫亜に触れないように気を付けながらベッドに上半身を乗り上げ、大声で言い放つ。
ぱちくり、と瞬きを繰り返す明紫亜の瞳に自分が映ったことを認識し、得も知れぬ恍惚感に息を吐き出した。
「……めいわくじゃ、ない? 生きてても、いいの? 家族になっても嫌じゃない?」
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