鬼畜極道と似非王子

Neu(ノイ)

文字の大きさ
7 / 25
一章:鬼畜極道は似非王子を騙す

死にかけキノコに恋をした 05

しおりを挟む


不安そうに聞いてくる明紫亜は部屋にいる全員に視線を配らせる。
冷子は口元を片手で覆い静かに泣いていた。
彼女は、温子が明紫亜にした虐待や育児放棄の事実を最後まで信じようとはしなかったのだ。
あーちゃんはそんなことしない、と温子を信じていた。
それだけに、明紫亜の台詞がショックだったのだろう。
肩を震わせて彼女はしゃがみ込み、顔を伏せた。

「迷惑じゃないよ。生きて欲しいよ。家族になりたいよ。……お願い、あーちゃんを、許して、っ」

縋るように声を発する冷子の華奢な体躯はガタガタと振動し、嗚咽が溢れ落ちていく。
そんな彼女の肩を抱き締めて背中を擦る真胡の表情は優しい。

「冷子ちゃんは、温子さんのことが大好きなのよね。優しいお姉ちゃんだもの。明紫亜君はお母さんのこと好き?」

真胡の静かな問い掛けに明紫亜の痩けた顔に、ほんわり、と笑みが浮かんだ。
こくん、と頷く彼の口からは、くふり、と独特な声が漏れる。

「おかあさん、が、ぼくのこと、嫌いでも、ぼくは、おかあさんのこと、だいすき。すきなの」

くふくふ、と不思議な笑い声を発して明紫亜は目を細めた。
幸せそうな、それでいて何もかもを諦めたような、6歳の幼児とは思えぬ表情で真胡を見ている。

「そうよね。それならいつか上手くいく時がくるわ。今は辛くても、きっと解り合える時はくる。それを知らずに人生を終わらせるのは、勿体無いと思わない? 一度だけの人生だもの。どうせなら色々なことを知ってから終わらせたいと、私は思うわ」

真胡の台詞に明紫亜は口を半開きにして何かを考え込んでいた。

「メシア。メシア。どうしよう。涼子、どうしよう。メシアが死んじゃったら。僕、僕、生きていけないよお。せっ、せっか、く、家族に、っ、なれ、るっ、て……、っ、おもっ、た、のに」

うううう、と唸る明紫亜を黙って見ていた蒼護が耐え切れないと顔面蒼白で泣き出した。
子供のような父は泣き方もまるで幼児である。
蒼真の隣にしゃがみ込み涙を流して明紫亜を見詰めている様は、不様である筈なのだが、美形の特権なのか、美しいものに思えるから不思議だ。
明紫亜も呆然と蒼護を眺めて何度も目を瞬かせている。

「おい、蒼護。明紫亜君が驚いているから泣き止みなさい。お前はいつまで経っても泣き虫だな」

蒼吉が渋い顔を更に渋くさせ蒼護の金髪を、くしゃり、と掻き混ぜた。
そうして一歩ベッドに近寄り明紫亜と視線の高さを合わせるためか腰を曲げていく。

「君の命は君のものだ。だけどね、君のものであるのと同時に、君を大事に想っている皆のものでもあるんだよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

処理中です...