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一章:鬼畜極道は似非王子を騙す
死にかけキノコに恋をした 05
しおりを挟む不安そうに聞いてくる明紫亜は部屋にいる全員に視線を配らせる。
冷子は口元を片手で覆い静かに泣いていた。
彼女は、温子が明紫亜にした虐待や育児放棄の事実を最後まで信じようとはしなかったのだ。
あーちゃんはそんなことしない、と温子を信じていた。
それだけに、明紫亜の台詞がショックだったのだろう。
肩を震わせて彼女はしゃがみ込み、顔を伏せた。
「迷惑じゃないよ。生きて欲しいよ。家族になりたいよ。……お願い、あーちゃんを、許して、っ」
縋るように声を発する冷子の華奢な体躯はガタガタと振動し、嗚咽が溢れ落ちていく。
そんな彼女の肩を抱き締めて背中を擦る真胡の表情は優しい。
「冷子ちゃんは、温子さんのことが大好きなのよね。優しいお姉ちゃんだもの。明紫亜君はお母さんのこと好き?」
真胡の静かな問い掛けに明紫亜の痩けた顔に、ほんわり、と笑みが浮かんだ。
こくん、と頷く彼の口からは、くふり、と独特な声が漏れる。
「おかあさん、が、ぼくのこと、嫌いでも、ぼくは、おかあさんのこと、だいすき。すきなの」
くふくふ、と不思議な笑い声を発して明紫亜は目を細めた。
幸せそうな、それでいて何もかもを諦めたような、6歳の幼児とは思えぬ表情で真胡を見ている。
「そうよね。それならいつか上手くいく時がくるわ。今は辛くても、きっと解り合える時はくる。それを知らずに人生を終わらせるのは、勿体無いと思わない? 一度だけの人生だもの。どうせなら色々なことを知ってから終わらせたいと、私は思うわ」
真胡の台詞に明紫亜は口を半開きにして何かを考え込んでいた。
「メシア。メシア。どうしよう。涼子、どうしよう。メシアが死んじゃったら。僕、僕、生きていけないよお。せっ、せっか、く、家族に、っ、なれ、るっ、て……、っ、おもっ、た、のに」
うううう、と唸る明紫亜を黙って見ていた蒼護が耐え切れないと顔面蒼白で泣き出した。
子供のような父は泣き方もまるで幼児である。
蒼真の隣にしゃがみ込み涙を流して明紫亜を見詰めている様は、不様である筈なのだが、美形の特権なのか、美しいものに思えるから不思議だ。
明紫亜も呆然と蒼護を眺めて何度も目を瞬かせている。
「おい、蒼護。明紫亜君が驚いているから泣き止みなさい。お前はいつまで経っても泣き虫だな」
蒼吉が渋い顔を更に渋くさせ蒼護の金髪を、くしゃり、と掻き混ぜた。
そうして一歩ベッドに近寄り明紫亜と視線の高さを合わせるためか腰を曲げていく。
「君の命は君のものだ。だけどね、君のものであるのと同時に、君を大事に想っている皆のものでもあるんだよ」
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