狼神様の番は生贄兎

Neu(ノイ)

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一章:生贄兎は狼に囚われる

今期の供物が決定しました 01

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1.供物になるのは兎さん?
【今期の供物が決定しました】


 さわり、さわり、と風が体躯を撫ぜていく。
その些細な感触、匂い、さざめき、に敏感になった体は一々過剰に反応を示す。
もう何も考えたくなかった。
熱く滾る身体を、ただ満たしたい。
これから神の贄となり食べられて死を迎えると言うのに、恐怖よりも性感に打ち震えていた。


* * * * * *


 その村には昔から、ある慣習が存在していた。
草食系獣人が寄り集まり力を合わせて暮らしている大きくもない村だ。
古来より狼神様(オオカミカミサマ)を奉り、狼族を神として崇めている。
定期的に狼族の村に供物を捧げることで、肉食獣から守って貰う。
そんな取り決めが古より受け継がれていた。
要はギブアンドテイクなのである。
狼族は獲物が捕れなくなる冬季に備える為に供物を手に入れ、その代わりに自分達だけでは肉食獣から身を守れない草食系獣人の村を守護する。


 神の血肉となれることは名誉なことだと生を受けた時から教えられ育つウルバヌ村の住人は、生贄に選ばれることを恐れない。
寧ろ、英雄になった気分で供物となる日を迎えるのだ。
自分の命一つで繋いでいけるモノの大切さを理解していた。
生贄となり命を捧げた先人がいてくれたからこそ、今自分が存在している。
それがどれだけ尊いことなのかを、村人は決して忘れたりしない。
生贄となった者を供養する墓には、英雄達の名を刻み、大勢の者が墓参りに訪れる。


 山深い樹海の奥にウルバヌ村は存在した。
草食系獣人が寄り集まり力を合わせて暮らす長閑で小さな村だ。
この村にはαがおらず、村人の大数がβだった。
少数存在するΩは、手厚く保護されている。
誰一人として蔑ろにしてはならない、それが村の掟だ。
血の繋がりがなくとも村人は家族である。




 兎族アナウサギ種の青年、ウリ=スゥマドは目の前の老人に笑ってみせた。
泣き出してしまいそうに顔を歪ませている村長に力強く頷いてみせ、頭部から生える二本の耳を、ぴん、と立てる。

「俺、村長にはスゲェ世話んなったし、恩返し出来るの嬉しいよ。俺のこと忘れないでくれな」

朝一番に呼び出された村長の家で告げられたのは、今期の供物にウリが選ばれたと言うことだった。
数年前に両親を流行り病で亡くしてから、何かと気に掛けてくれる村長を実の祖父のように慕っている。

「我々は誰一人忘れたりしない。命を捧げてくれた者がいて初めてこの村は存続できる。……ウリのことを皆が愛している。お前の故郷は何があっても此処だ」

暗い赤茶色の髪を撫でる手が優しい。
目頭が熱くて堪らない。
潤んだ瞳を乱暴に拭った。
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