狼神様の番は生贄兎

Neu(ノイ)

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一章:生贄兎は狼に囚われる

今期の供物が決定しました 02

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「ウリ。これは選ばれたのがΩの時だけなんだが。恐怖を紛らわせるのに発情誘発剤を飲んで貰う。人間の世界の薬は恐ろしいかもしれんが、飲んでくれるな?」

有無を言わせない強い口調と眼差しだった。
答えられずに目を見張り、老人を凝視してしまう。


 樹海を抜けたところに人間族が住んでおり、彼等はΩの発情すらもコントロールしてしまうと言う。
自然の摂理に背いている人間と、自然の中で生きる獣人は相容れることがなく、住み分けるかのように別々の世界で暮らしている。
人間の薬を飲むのは嫌であったし、発情を故意に引き起こすことにも抵抗しかない。

「村長。……俺、怖くねぇよ。いつ選ばれてもいいように心の準備はしてある。覚悟はとうの昔に決めてんだ。薬はいらない」

ふるり、と首を一振りし拒否を示した。
村長の眉が片側だけ上がる。
彼は何か思案している様子だった。

「それがな、ウリ。先方のたっての願いなのだ。嫌かもしれんが、ここは一つ折れてはくれないか?」

黙考の末に村長の掌が額を押さえ、懇願する眼差しを向けられてしまう。
狼族を実際に知るのは村長しかいない。
彼等と交渉するのが村長の役目だった。
彼の立場上、断われないのだろうと察しはしても、素直には頷きたくない。
眉間に皺を寄せ言葉もなく黙るウリに村長が長い息を吐き出した。

「……これから先、フミの保護を約束しよう。ウリがいなくなれば、またあの子は辛い目に遭うだろうよ。私の養子にしようかと思う。村長の子供に辛く当たる奴もおらんじゃろう」

鼠族から派生した亜種にハムスター族がいる。
とても希少なハムスター族の中でも体が小さく弱いジャンガリアン種の親友、フミ=ハンビスのことは確かに気掛かりだった。
基本的に、村人同士は仲間意識が強く、いがみ合うこともなければ諍いも殆どない。
だが、仲間意識が強い分、よそ者には厳しい面があった。
フミは数年前に流行り病で消滅した村からやって来たよそ者なのだ。
村人として受け入れることにも、異を唱える者が多かったと聞いている。
どうにか受け入れて貰えたものの、フミは村の中で浮いていた。
イジメや偏見を受けていたフミを庇い、彼が村の中で上手く立ち回れるようにと苦心したのがウリである。

「……わかった。フミを幸せにすると約束してくれるなら、薬でも何でも飲むよ」

間に入っていたウリがいなくなれば、村長の言う通り、またフミは厳しい立場に立たされることだろう。
ウリにとって、家族を流行り病で亡くしたフミは、自分と同じであり、仲間で家族も同然だった。
供物になって死ぬことは本望だ。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

花
2019.11.27

随分遅いコメントで申し訳ない。(ノ_<)
設定が面白く私の好みとドンピシャです!あらすじを見てみてこれからどうなっていくのかと、とても楽しみです?!早く、二人がイチャコラしてるところが見たいです笑!そして…やっぱり攻めのヤンデレシーンがとても見たいo(^▽^)o!!!!しかしながら?!作者さんの更新が進んでないようで心配です?(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾?!けれど、作者さんの無理なさらないように自分の体調と相談して、少しずつでも更新していただけるとうれしいです。ずっと待ってます。

2019.11.30 Neu(ノイ)

感想頂き有り難う御座います!
私も早く書きたい作品なのですが、他の連載作品を優先させていることもあり、進みが遅いです(・∀・;)
体調の心配有り難う御座います。現在、リアルで創作以外のことに心を奪われていて、最近はなかなか更新出来ずです。厄年もそろそろ抜けるので、また創作に力を入れたいと思っております。年末に向けて仕事も忙しくなるため、年明けから頑張ろうかと٩( >ω< )و
オメガバースを書くのは初めてでモタモタするとは思いますが、お付き合い頂けたら嬉しいです!

解除

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