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序章:俺、刑事辞めるわ
14:17、地震発生 07
しおりを挟む何とか鉄塊の下敷きから抜け出せた博信は、八潮に横抱きにされ、医務室まで運ばれた。
医務室とは言え、医者がいる訳ではない。
看護師が一人いる筈なのだが、他でも怪我人が出ていて駆り出されているのだろう、誰もいなかった。
ベッドに横たわらされ、八潮の大きな掌が頭を撫でていく。
痛みの度合いが大きくて今すぐにでも取り乱したい程の苦痛を感じていても、彼の優しい仕草に少しだけ緊張も解れた。
昔から知っている温もりは、博信の常に武装している強がりを壊していく。
着いてくると言って譲らない定義を無理にでも留まらせて良かったと安堵した。
「さっきのヒロ君、カッコ良かったよ。署長ちゃんに喝を入れられるのは、やっぱりヒロ君しかいないね。署長は誰だ、お前だろ、非常事態に長が指示出さないでどうする、仕事しろ! って、よくその状態で堪えたね」
止血の為に患部より上の太腿に巻かれた荻原のシャツだった断片が皮膚に喰い込んで痛い。
医務室にある備品を適当に見繕いテキパキと処置をする八潮の手際は淀みない。
あちこちに付着している血液を拭ってくれる彼に腕を伸ばした。
「自分でも良く我慢したと思ってるけど、っ、もっ、限界だ。テル、俺、おれ、っ、……こわ、かっ、た。痛えし泣けねえし、荻原は怖えし! テル、俺の足、どうなんのかな。もう、駄目かもしんねえ。仕事、辞めたくねぇよ」
いつでも弱音を吐くのは、屈強なこの男に向かってなのだ。
八潮の太い腕を掴んだ途端に、ボタボタ、と我慢していたモノが大粒の涙となって瞳から溢れ落ちていく。
二人きりだという甘えで呼び方もプライベートなものに変わる。
「うん、怖かったね。ヒロ君はよく頑張ったよ。エライエライ。それに大丈夫。どんな結果になっても俺は絶対にヒロ君の傍にいるから。ヒロ君の強いとこも弱いとこも、全部俺が受け止める。先のことはまたゆっくり考えよう? 今は少し休んだ方がいい。薬、効くか解らないけど、一応痛み止め飲んで寝ちゃおうか。俺は病院の受け入れ体制調べてくる」
ぐしゃぐしゃ、と髪を掻き回されるのが好きだった。
昔からどんなに弱音を吐いて泣き喚いても、八潮はこうやって博信を甘やかし優しく丁寧に包み込んでくれるのだ。
額がぶつかる距離で微笑む八潮の熊面に、ふと定義に言われた言葉を思い出し、恐怖で唇が震えた。
「あ、テル。あんまベタベタすんなって、言われたわ。幼馴染でもほっぺたスリスリするのは変だって。怒られるの、怖えよ」
グズグズと鼻を啜り訴える最中にも水滴が溢れては落下していく。
八潮が苦い顔付きで笑い、博信の涙を指先で掬った。
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