私プロゲーマーに成ります!~FPS女子の軌跡~

紫隈嘉威(Σ・Χ)

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一章

出会い

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「ここが新居なんですね!」
「ああ」

 各家電がそろって、今は建築会社の展示状態になっており、すべて状態がいい。

「広いですねー、いいなぁ、これが社長宅ですかー」
「別に社長じゃなくても、しっかり稼げばこれくらいは立つよ。あと、これでも一部社員は納得してないんだよね」
「そうなんですか?」
「会社に近いと言う事は、この辺りは田畑の広がる田舎、土地代はそれなりに安いからね。七階建てのビルに三階建ての旧社屋、マンションのような五階建てのアパート持ってる会社の社長が、都市部の住宅街で家が一般と同じなんて考えられるか、と言うのが主張だよ」

 少し考えを巡らせて、梨々華はこういった。

「憧れとしての社長像も持ってほしいと言う事ですかね。確かに分かるかも」
「分かるのか。どうも俺が貧乏性でね、美優希か春香が絡まないと決断できなくて。見透かされているんだろうな」
「社長、高級ってつく外食店に行ったことないんじゃないんですか?」
「いや、まぁ」
「そう言うところだと思いますよ。会社が上手く行ってなかったら話は別ですよ?」

 その辺りは梨々華の言うとおりであろう。

「社長は身近な目標となる人なんです。願望もあるんだと思います」
「そうなのかね」
「そうなんです。難しいですよね。派手過ぎると嫌われて、地味だと嫌われて、ランクが低めの高校はもっとすごいですよ」
「そうなのか」

 部屋を見て回りいろいろと思案する梨々華、案がまとまったのか、資料に起こしますと言ってきたが、何をするつもりなのか聞いた一義は、そこまでする必要はないと諭した。
 予算のお金を渡し、直し込んだを確認してから家を出て会社に戻った。
 三日後、クリスマス配信を終え、社員食堂に移動してクリスマスパーティーだ。
 今までこのようなことはやらなかったのだが、ケーキを春香が監修して家族連れを許可すると、やるしかないと言う方向に行ってしまったのだ。
 様様に用意されたクリスマスプレゼントを、輪投げで奪い合う子供たち、大人たちはパティシエールのケーキに舌鼓を打って、三時間ほど経った二十時、はしゃぎすぎて寝てしまう子も出たので、徐々に解散していった。
 子供たちがいなくなり、残っているのは全員社員、ようやく美優希たちに本命のプレゼントを渡せる。
 知っていた梨々華は寧ろ美優希と一緒に笑っており、野々華と輝はまさかの物が出てきてあんぐりである。

「会社にとってとんでもない利益を上げてくれた。そのお礼と投資だと思ってくれ」
「これ、一式当たり三十万は・・・」
「それ以上に君たちは稼いでいる自覚はあるかな?」
「「はい?」」

 九月から今まで稼ぎ出した利益から、諸々の費用を引いて残った純利益は一千万、他の部門ではそうならない理由が、そのままこの部門には当てはまってしまう。
 ほとんどの社員についている成果報酬となる歩合が付いていないのだ。ベースは一般的だが、この歩合によってジャストライフの給料は高いのである。

「そう、仕事の成果として十分な評価になっていないんだが、その手元に例えば三百万いきなり振り込まれて、果たして管理できるのかい?このまま変わらず稼ぎ続けたとして、君たちは来年の今頃は五千万にまで膨らんでいるよ?将来を考えながら使えるの?」

 顔見合わせた野々華と輝は想像を膨らませたようだが、答えは一つしかなかったようだ。

「「無理です」」
「分かっているのならよろしい。それから、このまま稼ぎ続けるのであれば、高校と大学の費用は会社で持つ」
「「いいんですか?!」」
「勿論。そもそも、君たちが稼ぎ出したお金だからね。その代わりなんだけど、留学してみないかい?野々華ちゃんなんて、通訳にはちょうどいい学歴になる。英語ができたほうが、プロとしても楽になるからね。勿論、美優希も一緒だ」

 三人は頷き合うとこう言った。

「「「留学します」」」

 その気になってくれたようで何よりである。

「お姉ちゃんは?」
「私はもっと別の勉強をするの。言わば、貴方たちが稼ぎ続けられるようにね。今はこれが楽しくしょうがないから、邪魔はしないでね?」
「うん」

 野々華に圧を掛ける梨々華、下手の事は言わないようにしようと、輝も美優希も心に誓った。
 残っている社員に片岡一家と岡田一家、朝野一家は追い出されて家路についた。

「さ、今度は美優希の番だな」
「うん!」

 勿論、美優希にもクリスマスプレゼントは用意されている。それは恒例になった自分のパソコンのカスタマイズだ。
 それが終われば早速ゲーム、そうして年は暮れて行った。
 ジャストライフの仕事納めは十二月二十七日、仕事始めは一月六日だ。その間は配信がお休みとなる。
 仕事始めの日、プロゲーミング部にはようやく帰ってきた人と、珍しいお客さんがいた。

「私の名前は安田アレクシア、今日からはプロゲーミング部の部長だけど、気軽にシアって呼んでね」
「「「「はい、シア部長」」」」

 一応会社なので、この四人でも役職を無視して呼ぶことはない。アレクシアは苦笑して話を続ける。

「この子は私の娘、クリステル、交通事故で車椅子生活です。明日から同じ学校に通うので、生活を手伝ってあげてほしいです」
「お願いします」
「「「勿論ですよ」」」

 留学先で交通事故に遭ったクリステル、当たり所が悪く、右足が全く動かなくなってしまった。左足は麻痺のような状態で、思ったように動かすには時間が必要で、本人も将来は松葉杖の生活を目指してリハビリ中だ。
 美優希はクリステルの目の前に膝を立てて手を取った。

「学校にいる間は何でも言ってね。いじめられたりしたらすぐにスマホを鳴らしていいからね」
「いいんですか?」
「勿論だよ」

 しばらく美優希たちと交流して、配信を見学するクリステル、アレクシアは誠と引継ぎ中だ。
 梨々華が操作する配信制御画面を食い入るように見つめるクリステル、それに気づいたアレクシアが声をかけ、振り向いたクリステルの顔に驚いた。
 うれし涙を流して知るのである。

「どうしたの?」
「美優希たちは、美優希たちは」

 クリステルは配信制御画面に映っている様子でようやく確信した。
 この三人は、入院中とリハビリ中の支えであったのだ。
 日本生まれの日本育ちのハーフであるクリステルは、母親の故郷を知りたくてフランスに留学をしていた。交通事故での入院中、周りの支えもあったのだが、今一つ元気がなかった。
 そんな仲、クリステルは美優希たちの配信に出会った。
 動画配信サイトは世界の統一プラットフォームで、自分が登録している言語と国が優先的に表示される。優先的なので、国や言語が違っても見つけられれば動画を見る事ができる。
 事故にあう前は、学校での話題の中心はアニメと漫画で、その延長でバーチャル配信者も度々話題に上がっていた。
 フランスの友達にプロに成りたい同い年のバーチャル配信者が現れた、と報告されてなんとなく見始めて嵌り込んだ。それがジャストライフゲーミングだ。
 本人たちは気付いていないが、割と一義の指導は厳しめだ。一義の飴と鞭のコントロールが上手く、ちゃんと実力と実績があるからでもあるが、知らなければ他人からはそう見えない。
 その指導についていく三人の姿を他人事のように眺め、ある日の配信で、美優希がコメントに答えた言葉に、クリステルは奮い立った。

『目標を笑わず、自分と真剣に向き合ってくれる人がいる。それが知っている人で、それが親なら、尚更付いて行かない理由はない。これ以上理解してくれる人はいないよ』

 この一言が、クリステルに突き刺さった。
 この頃のクリステルは精神が不安定で、アレクシアを含む、家族の言葉に耳を貸す事ができず荒れていた。フランス留学は祖父母の元であったが、やはり心を許して、心から信頼していた人はいなかったので仕方がない。
 そのクリステルは、その一言でようやく看病に来たアレクシアに心を開いて、何時かは補助なしで歩けるようになる為に、頑張れるようになったのである。

「そうだったのね」
「ごめんなさい、ママ、ごめんなさい」
「いいのよ、お礼を言わなきゃね」
「うん」

 美優希の使うブースの前で待つクリステルとアレクシア、配信の裏でそんなことになっているとは知らない美優希は、終了を確認して部屋を出てぎょっとするしかなかった。

「え、なに、どうしたの?」
「美優希、あのね」

 クリステルから語りかけられた美優希は膝をついて向き合った。

「私、美優希のおかげで事故の苦痛から抜けられたの」
「どうして?」
「フランスでもバーチャル配信者って結構人気があるの。友達が美優希たちの配信を教えてくれて、その配信の中で美優希が言った一言で変わったの」

 自分の言葉で伝えるクリステルを、美優希は最後まで聞いてから抱きしめてあげた。

「クリス、リハビリ頑張ってね。学校では私が絶対守ってあげる。負けないでね」
「頑張ります」

 その後、アレクシアにも感謝されて上機嫌の美優希だった。
 翌日、奇しくもクリステルと美優希は同じクラスとなり、美優希が友達を超えた親友アピールをした。
 モデルで俳優の優里の血を継いでいるだけはあって容姿端麗、一義の血を引いていないので運動も人並み以上であり成績トップの文武両道、社長令嬢が周知されているので、学校ではマドンナの扱いを受けており、下手に手が出せない。

「クリス、絶対に一人にならないで。私が傍にいる限り、手は出してこない」

 悪い方の手は出せない。寧ろ、美優希に取り入りたくて優しくしてもらえるだけだ。
 これは先生たちも分かっていて同じクラスに配置している。
 美優希は優里の事もあって善悪の判断に凄まじく厳しい。他人に強要はしないのだが、輝や野々華がいじめられそうなら、上級生だろうとお構いなしに突っかかる。しかも、録音を忘れないと言う周到さである。

「そうやな、片岡さんは正温悪冷の才女っていう、造語の通り名があるくらいだからね」

 隣の席の男子が話に割って入る。

「せいおんあくれい?」
「正しいことをしている限り温和で優しく、悪いことをする人には冷酷、ってこと。片岡さんに助けてもらった同級生は多いから、あんまり構えなくていいよ」
「そうだね。後、私の悪口とか陰口を聞いても反応しないで、言わせるだけ言わせておいてね。言われてるの分かってるし、その時点で手の施しようもないし、人柄も知れたものだからね。処世術として身に付けて。取っ組み合いになりでもしたら勝ち目はないんだから」
「わかった」

 結局、優しく介助してもらえるだけで何も起こらないのだが。


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