私プロゲーマーに成ります!~FPS女子の軌跡~

紫隈嘉威(Σ・Χ)

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二章

プロ一年目

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 リトルクイーンズ、ジャストライフゲーミングIPEX部門の選手に、海外選手が付けた通り名は、これまでずーっと独り歩きしていた。
 それもそのはず、実力を絶賛される一方で実績がないからである。
 全日本プロゲーミング選手権前の、公開練習カスタムマッチにおいて、美優希たちはわざとキル数を稼ぐ動きをした。
 これが良くなかった。
 プレジデント十位代は、チーターもしくは世界のトップ層で、美優希たち以外のチーム以外は二桁台に入ってすらいない。その為、同じプレジデント帯にも関わらず、美優希たちは終始蹂躙を続ける結果となった。
 当然他チームから練習にならないと苦情が入り、美優希たちは以降練習会カスタムマッチに参加しなくなった。

「スクリム(練習カスタムマッチ)でカジュアルの動きをしたら、普通は早めに脱落することも分かってないのか」
「レベルが低くて話にならない。三人共、本番も蹂躙でいいよ。対抗馬なんていない」

 これ以上の参加を取りやめる判断をした一義と、見る価値が見いだせずにいたクリステルの、二人が吐いた言葉である。
 日本では炎上してしまうスクリムになってしまったのだが、この炎上は海外選手があっさりと止めてしまった。

「リトルクイーンズの戦闘レベルと、他のチームの戦闘レベルに乖離がある。公開スクリムで証明された。リトルクイーンズ以外の日本人IPEX選手は弱いし、見る目も育ってない」

 SNSに投稿された忌憚のない物言いに、黙らざるを得なかった、と言うのが本音だろう。
 これが七月の事だった。
 さて、八月上旬、全日本プロゲーミング選手権は、去年と会場を異にし、県営総合コミュニティセンターが会場となっていた。
 県営コミュニティセンターは、体育会と劇場が併設された施設だ。一度に数十人が戦うIPEXを筆頭とした多人数サバイバルゲームや予選を体育館で、タイマンやペア、一パーティ対一パーティが戦うゲームや決勝を劇場で行う。
 事前に通達があったとは言え、いくつものゲームから全日本プロゲーミング選手権は日本代表選考会の指定を受け、その盛り上がりは異常と言えた。

「この大会の後はアジア大会?」

 選手控室にいるのは五人、美優希、輝、野々華とコーチ兼マネージャーのクリステル、プロデューサー兼マネージャーの梨々華である。

「IPEXはアジア大会だね。今年の会場はこのまま日本で、東京だね」
「東京かぁ」

 行って見たいような見たくないような、美優希は微妙な顔をした。

「美優希ちゃんは東京に興味ないの?」
「全然ってわけじゃないけど、なんだか意味を見出せない感じ、行ってどうすんの?って」
「でも、東京だよ?」
「その、んー・・・そう、ネームバリューに踊らされてる気がするんだよね。東京に行かないと手に入らなくて、欲しい物がないかなぁ。私、そもそも人込み嫌いだし」

 何かなければ電車なんて乗らないのだが、休日に朝から五人で遊びに行った時、満員電車を経験してからは遠出が嫌いになっている。

「前もいったけどさ、香水の匂いがダメなんだよね」
「あー、いるよねー、つけ過ぎてる人。私もそれは嫌だったなぁ」
「そう言う人に当たりやすくなっちゃうもんね」
「そう言う事」

 人がいればいるだけ色々いる。それに当たるのが嫌だと言う思考である。

「まー、まー、まずはキッチリ、この大会を取ってね」
「「「はーい」」」

 梨々華は四人を宥めたのだが、そこまでこの大会の事は心配していない。
 IPEX部門が始まって、美優希たちは容赦しなかった。
 横から刺しても弾くどころか逆に殲滅されて、漁夫の利を得ようとしてもポイントに変えられ、初動をかぶせても殲滅されるだけ。
 計四回の試合すべてで、チャンピオンに輝き、大量のキルポイントをもち、圧倒的優勝と言って過言ではなかった。
 そして、うれしくない。
 試合後インタビューでは笑顔を見せたが、試合の言及を避けてアジア大会が楽しみだと言う話に終始しただけだった。
 更には不正プログラムの使用まで疑われる事態となったのだが、会場で使用されるパソコンはe-sports教会の管理下にあり、ログ等の解析結果が即日で公開されて、実力が裏付けされたに過ぎなかった。
 翌月、東京で開催されるIPEXアジア大会で、二日に渡って大激戦を呈することなった。
 プレジデント一位の選手を含む韓国人チーム、プレジデント十位の選手を含むオーストラリア人チームと、美優希たちは三つ巴戦を演じた。
 因みに、美優希たち以外の日本人チームは、何もさせて貰えないと言っていい程に蹂躙されている。

「プレジデント一位の魔王RAST率いるクレイジーラグーンか、オーストラリアのクラン、エクシオスか、はたまたリトルクイーンズの異名を持つジャストライフゲーミングか」

 会場はモニターがよく見えるように、会場は暗くなっているのだが、その分、ディスコか何かのように光ライティングされて、司会に合わせるように観客を煽っている。
 正面からぶつかり合えばワンミスの取り合いになる。適切なタイミングで回復に下がれないと、そのままジリ貧になって落とされるのだ。
 もしくは、互いに適切なタイミングで横から刺すか、漁夫の利を得ていくので、差がすぐに取り返されてしまう。
 最終日までもつれた三つ巴戦を制したのはクレイジーラグーンだった。二位にはジャストライフゲーミングが、三位にはエクシオが続く。
 美優希たちは相当楽しかったらしく、日本大会で見せなかった満面の笑みを浮かべて、試合後インタビューに答えていた。
 更に翌月、IPEX世界大会はアメリカでの開催となった。
 チーム紹介が行われていた時、司会進行役と解説役が驚きの言葉を発した。

「リトルクイーンズなんて、もう彼女たちには似合わない。リトルは取ってしまっていいだろう」

 SNSで一斉拡散され、ハッシュタグはゲームの区別の為、IPEXクイーンズが作られた上に、大会中はジャストライフゲーミングをIPEXクイーンズと呼ぶようになった。
 実力が実績と共に認められた瞬間である。

「女王、か」

 三人部屋のホテルのベッドで、息を付く美優希はつぶやいた。
 アジア大会同様二日の日程で行われる世界大会、ジャストライフゲーミングは一日目を終えて現在三位、一位はアジアで表彰台を逃したファンネルコリア、二位は北米王者TSMである。
 因みに、ジャストライフゲーミングの三人にリトルクイーンズと名付け、クイーンズと呼ぶことを提案したのはTSMのメンバーであった。

「女性チームって他にいないんだねー」
「混成はいるみたいだけど」

 日本選手権では美優希たち以外に、実は一チームだけ存在していた。アジア大会では全く見受けられず、世界大会では混成チームが二チーム存在している。

「名前負けって言われるのが嫌だなぁ」
「いるよねー、背景も考えずに口が閉められない人」
「付けるなとは言わないけどね」

 そんな三人の心配と言うのは杞憂にしかならない。順位を落とさなければ世界のベストスリーであり、IPEXにおいては美優希たち以外に強い女性がいないからだ。男女混成の二チームは、そもそも二日目に進むことができていない。

「なんて言うか、さ、案外、冷静でいられるよね。興奮してるんだけどさ」
「どこか他人事なんじゃないのかな?アジアはともかく、世界の舞台にいるんだ、っていう実感がないんだよね」
「分かるかも、なんか、夢の中って感じ」

 あがり症など持っていない三人だが、原因を言えば、日本選手権前のスクリムと日本選手権にある。
 三人は結局のところ、何も特別なことはしていないのだ。寧ろ、チーターやゴースティングがいなかっただけ楽過ぎた。
 アジア大会からは、チームとしての動きをしていたものの、チーターやゴースティングがいるランクマッチとしての負けない動きであり、世界大会も同様なのだ。
 それだけ、普段から完成された動きをしており、だから、世界最大のe-sportsチームであるTSMから通り名を付けられるのである。
 そして二日目、事件は起こった。
 ランドマーク制、チームが優先して降りる場所を決めておく方法を悪用し、ジャストライフゲーミングは執拗に狙われ続けたのである。
 事実が発覚したのは、おかしいと感じたクリステルの指示で、わざと降りるのを遅らせ続けたことに依る。初動をかぶせられたので辛くはあったが、分かれば対処するだけであり、キルポイントが増えたに過ぎなかった。
 邪魔をしたいだけなら、三人で固まって一人ずつ殴って落とせば確実でいい。
 しかし、結局武器を拾ったりするので、殴り返して弾いた上で、武器拾って落とせてしまった。それ以上を求めてくるような動きもできないので、キルポイントと言う養分になるだけだった。
 クリステルはポイントになったから、と言って見過ごす提案をしたのだが、一義が許すことはなく、後日、抗議文を公開した。
 初動で落ちる時は落ちてしまったので、最終試合でチャンピオンに輝いたのだが、一位には届かなかった。
 準優勝を引っ提げて、帰国した美優希たちは、学校と会社で祝福された。
 それでも夢心地が抜けない三人に一義は呆れ果て、特別報酬として三大会分の賞金である一億二千万を三分割した四千万を振り込んだ。
 ようやく自分たちが何を成し遂げたのか自覚し、やっと会社でパーティを開いてあげる事ができ、インタビュー依頼を受ける事ができるようになった。
 そうして、修学旅行が息抜きとなるくらいに忙しい日々を送る美優希たちは、社長室に呼び出されていた。

「初出場、初タイトルで世界大会準優勝は、だいぶやってくれたよ。自覚できたか?」
「「「はい」」」
「よろしい。それでだ、三人に聞きたいことがある。彼氏はどう考えているか、率直な考えを聞かせてほしい。実は、知り合いにお見合いを仄めかす馬鹿がいてな?うるさいから、黙らせてやりたいんだ」

 一瞬は嫌な顔をした三人だが、一義の真意に気付いて話し出した。

「私は自分で見つける」
「「私もです」」

 三人共お断りのようだ。

「女子高に通ったけど、恋に興味がないわけじゃない。私はもう少し大人になってからって考えてた。だから今は要らない」
「美優希は分かった。輝ちゃんは?」
「私は、女子高にはなんとなくで通い始めたんですけど、お金が結構入るようになって、寧ろ女子高でよかったなぁと思ってるくらいです。変なのが近寄ってくると、学校生活自体が面倒臭くなってしまうので。それに、私は告白されるよりしたい方なので」
「そうか。野々華ちゃんは」
「私は、出会えたら付き合ってもいいかなぁ、ぐらいです。なので、お見合い自体は否定しないですけど、今の時代にお見合いって言う時点で、もう察しなのかなぁ、って」
「分かった。三人共、ごめんね?セクハラになる質問で」
「「「大丈夫です」」」

 後日、春香の両親が春香によってとっちめられたとか。


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