私プロゲーマーに成ります!~FPS女子の軌跡~

紫隈嘉威(Σ・Χ)

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二章

興味

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 東京拠点の話が拓哉と一義の間で進む中、十一月に入って世界大会が訪れた。
 今年の開催は韓国、ルールはいつも通りだが、ジャストライフゲーミングはいつも通りではない。
 ホテルは別室になるが彼氏たちが応援に来ている。無論、美春もいる。ただ、一度訪れているのか、美春は観光に興味がない。
 パズル課と格闘課の選手が黙々と練習し、FPS課の選手は戦術の最終確認をしているのはいつもの事だが、パズル課の選手の横に座って、画面を眺める美春がいるのはいつもの事ではない。

「飽きないの?」
「全然。美春もこのゲームやるけど、すぐ隙間ができちゃうんだよね」
「そっか、じゃあ、大会が終わったら教えてあげようか?」
「いいの?!」
「いいよ、大会が終わったら教えてあげるね」
「うん!」

 自分もやっている、そんな共通点があれば、こうして簡単につながりができて行く。

「良かったね」
「うん」

 戦術確認が終わった美優希に声を掛けられて頷く美春は、パズル課の選手の隣から美春の膝の上に移動して練習が終わるまで眺めていた。
 そんな美優希と美春の隣には恵美もいる。

「すごい神業だった」

 いつもなら恵美はいないが、今回は新しい父親、清水昭雄あきおと一緒に応援に来ている。

「高がゲームだと思ってたけど、普通じゃぁ、あんな得点出せないし、隙間ができても数手でなかったことにするのが凄すぎて。格闘ゲームも、最強レベルのAIを簡単に制しちゃうし、FPSも小難しい戦術がいっぱいあって、勝ち続けるってすごいんだな、って」
「興味ある?」
「あるけど・・・」

 いまいち反応が悪い恵美、優里の影響だろうかと美優希は思った。

「恵美、試しにやってみたらいいよ」
「え、でも」
「美優希ちゃん、いいんだろ?」
「うん、やる気があるんなら、いくらでも教えるよ。空いた時間だけになるけどね」

 それでも恵美は不安げだ。

「大丈夫、お母さんのことなら任せろ。それに、美優希ちゃんがそう言ってくれるんだ、お母さんも何も言わないよ」
「じゃあ、やってみる」
「私の空き時間は少ないけど、頑張ろうね」
「うん」

 そんな恵美と美春が寝てしまってから、美優希は昭雄から優里の事を聞いた。

「私に負い目があるんだ」
「みたいだな。美優希ちゃんの活躍にインタビューを迫られたりしてるんだが、優里は全部断っている。私には資格がないと言ってな」
「そっか・・・」

 美優希は遠い目をした。

「私も、いい加減に大人になる時期だね」
「無理する必要はないよ」
「優里さんがステップアップするには、私が重要だと思うの。公私が分かれている事は重要だけど、相互に関係性があるのは、身に染みて分かってる。私自身もそう。縁は切れても血は切れないし、それに、大学卒業するまでに清算したいかな。偶に顔がちらつくんだよね」
「そうか、協力できることは協力しよう。互いにいい影響があるはずだ。芸能界で輝く優里とプロの世界で輝く美優希ちゃんが、血が繋がった親子なのに歪な関係は良くないし、辰郎たつろうさんのおかげで雑誌社を抑え込んでいるしな」

 徳光とくみつ辰郎、現在は出版業界の最大手グループの筆頭株主に退いている、八十半ばのお爺さんだが、未だ彼の影響力はマスコミ方々に轟く。
 そして、美優希の血縁上は祖父でもある。辰郎は孫である美優希の為に雑誌社を抑え込んでいる。因みに、美優希の血縁上の父親は勘当され、左遷された先で、病気で亡くなっている。

「大学卒業するまでにはお祖父ちゃんにも会いたいし」
「実は恵美も会えてないんだ。同伴できないかな?」
「やっぱり・・・」

 十三年前、離婚調停と慰謝料の関係で、美優希と辰郎は顔を合わせたことがあり、それ以来、美優希は面会拒否されている。

「うん、勿論、恵美ちゃんも一緒に。その時は連絡する」
「頼む」

 昭雄は一義のようなセンスは持っていないが、優しさや包容力はよく似ている。
 優里を落とせたのは、そのマネジメント能力だった。芸能界復帰後、事務所から優里に付けられたマネージャーが昭雄だ。恵美の面倒を見る事もあって、運転手から果ては家事までこなしていた。
 プロポーズしたのは昭雄から。
 ある時、美優希との関係について相談され、序でに一義の話まで飛び出し、その優しさや包容力に一義と付き合ったばかりの事を思い出し、辛いからマネージャーを変えてほしいと言い出した。
 しかし、実際はそうではない。
 優里の中にあったのは本物の罪悪感ではなく、感じる事への義務、実際は惚れてしまっていた。
 後任のマネージャーが選出されようとした頃、優里は両親伝手で一義の言葉を聞いた。義理であろうと子供に愛情を注げる両親は必要だぞ、と。
 それから、引継ぎが済んで昭雄の最後のマネジメントの日にプロポーズ、よく懐いていた恵美の事もあって受け入れたのである。

「恵美、美春、二人の目標であれるように頑張るからね」

 寝ている二人の頬にキスをしてあげ、美優希は自室に戻っていった。
 翌日、ジャストライフゲーミングの面々は予選の様子を眺め、そこには恵美と美春の姿もある。選手の表情に近寄りがたいのか、恵美は昭雄の隣に、美春は春香に膝抱っこされて大人しくしている。
 そして、大人しくもあるはず、大会の配信画面に食い付いて離さない程に、真剣に見ている。彼氏たちも同じように真剣に見ている。
 美優希からの要請で、カジュアル目線で見た気付きを教える為である。彼氏たちは全員がマスターランクをソロで取れるくらいには、一応の実力がある。

「なぁ、美優希、ADPの選手、弾がホーミングしてないか?」
「アダプトのこと?」
「ああ」

 一番に気付いたのは啓、即座にクリステルが録画を切って精査を始めた。
 精査をしていると、エクシオスのオーナーから連絡が入る。内容は啓が気付いたようにアダプトの選手にチート使用の疑いがあり、会議をしたいからホテルのロビーに集まってほしいと言うものだった。
 一義と美優希はロビーへと向かい、着いたのは最後だった。
 シード権を持ったチームオーナーとリーダーが一堂に会し、ロビーは騒然となったのは言うまでもない。

「美優希」

 立って会議をしているところにクリステルと、ノートパソコンを持った洋二郎が現れ、声をかけた。

「解析終わったよ。間違いない」
「お、そんな技術があるか、見せてくれないか」

 クリステルは超特急で録画を編集し、弾道の軌跡と銃口の向きを見やすくしてくれたのだ。
 動画データを見たチームオーナーとリーダーたちは頷き合い、通報を決めた。
 日本大会の時のように、ジャッジによって物理的にパソコンへの接触を禁止され、接触した場合は失格となることが選手たちに知らされた。
 スタッフによって全パソコンのログが解析され、アダプトのみならず、リリーコーラスまでもが失格と永久追放される結果となった。また、アダプトは他のゲームタイトルに出場する選手もおり、そちらまで失格処分が下された。
 使用した選手は拘束されて、警察に連れていかれ、後日、開発元があるアメリカに身柄が引き渡された。
 なお、予選はやり直されない。
 失格となったチームはいなかったものとして、順位は繰り上げされてポイント集計がなされることになった。
 チートを使用する選手がいる、と言う事件が起こってしまったが、大会はすぐに再開し、残りの試合が消化された。
 二日後
 ジャストライフゲーミングはそれぞれ決勝戦に挑む。恵美と美春に彼氏たちが観客席で見守る中、戦いの火蓋が切って落とされた。
 一日目は一戦目、最終局面まで安全地帯に恵まれたジャストライフゲーミングは、美優希のスナイパーライフルによる横槍で、キルを奪いつつ、チャンピオンに。
 二戦目、中盤にTSMとぶつかり合って勝ったものの、間髪入れずにエクシオスの漁夫が入って試合を落としてしまった。
 三戦目、ポジション取りに苦労したおかげ最終局面までにかなりのキルを稼いだが、輝が落ちている事にGbEsに気付かれて、はじき返せたのだが、エクシオスに漁夫を受けて三位だった。
 四戦目、また安全地帯に恵まれたが、最終局面まで周囲で何も起こらないので、横槍が入れられず、アイテム不足に陥って、わざと三位を狙いに行くと、チャンピオンを取ったクレイジーラグーンが襲い掛かるタイミングが遅く、二位まで上げられた。
 五戦目、ランドマークの影響で、轢き殺しを行わざるを得ない安全地帯を引いたのだが、誰も落ちることなくキルとアイテムが充実した状態で、一択しかない最強ポジションを取り、難なくチャンピオンに輝いた。
 今年はトラップ型のキャラクターが弱体化を受け、採用するチームが少なく、苦しめられることがないので楽だった。おかげで一日目は一位でフィニッシュした。
 二日目の一戦目、ジャストライフゲーミングは、待っていましたと言わんばかりに初動かぶせをしてきた三チームを迎撃、電光石火の勢いで三チームを落として会場を沸かせると、ある程度安全地帯に恵まれた事で、アイテムとキルが充実した状態でチャンピオンに。
 一戦目の影響でジャストライフゲーミングに初動かぶせをしてこなくなり、寧ろ避けられる結果に、それもそのはず、過去に初動かぶせをやり返して落とす、と言う事までやっているので、恐れられてしまったのだ。
 そんな二戦目と三戦目、安全地帯に恵まれず、ポジション取りに苦労、二戦目はポイントがもらえる四位まで上がれたが、三戦目はポジション取りを途中で諦めてキルを稼ぐ方向へシフト、わざと襲い掛かって落として漁夫を誘い、チャンピオンと同等のポイントを稼いだ。
 四戦目、試合中盤でエクシオスとぶつかり、落としたところへTSMが漁夫に訪れ、野々華が逃げ切ったのだが、逃げ切った先にGbEsがおり狩られて試合を落とした。
 五戦目、野々華の使うキーボードのシフトキーが効かなくなり、急遽設定変更をして対応し、持ち前の器用さで何とかしのいだが、それも中盤までの話、野々華がすぐに落とされて一枚落ちの状態で最終局面、美優希の機転で何とか四位でフィニッシュした。
 機材トラブルに見舞われたものの、優勝候補としてふさわしいポイントを獲得し、結果発表を待つ。

「四位はGbEsだ。さぁ、三位以上は同時発表、結果は・・・これだ!強い、強いぞIPEXクイーンズ、優勝、ジャストライフゲーミング!」

 二位はTSM、三位はエクシオスだった。
 試合後インタビューをこなして表彰式、トロフィーを掲げる美優希たちに盛大な拍手が鳴り響いたのだった。

「えみー、みはるー、どうだった?」

 ホテルに戻って来て、美優希は一番に妹たちに会いに行った。

「「おねーちゃんすごかったー」」

 目を輝かせる二人は、おしゃべりが止まらない。
 座って話をする暇はないので、大会後パーティー参加の為、着替えをしながら話をする。美春は去年同様に可愛い服を着せられて、恵美は美優希のドレスに似た大人っぽい物、成長は早いのだが、顔が幼いので少し不釣り合いだ。
 美優希たちは彼氏にエスコートされてパーティーに参加、恵美は昭雄と、美春は一義と春香と一緒に参加だ。
 英語が分からないので、恵美と美春は少し浮いてしまっているが、美優希が一緒にいてくれるおかげで、去年同様に選手も笑顔で交流できていた。
 選手たちとその家族の交流会は遅くまで続いたのだった。
 帰国後、三度目の世界制覇を成し遂げた美優希たちを待っていたのは、忙しい取材の日々だった。今年は彼氏たちどころか、親も巻き込まれたおかげで会社の業務に支障が出た。
 一義は当然のように突撃取材をした会社と個人を威力業務妨害で訴え、公開抗議文を出したのだった。

「うー」

 連日の取材で疲れ切り、突撃取材でイライラが止まらない美優希は、ソファーに寝そべって、おおよそ女の子が出さないような声でうなっていた。

「そんな声出さないの。はい、和牛A5ランク極厚ステーキ、ミディアムレア、焼きあがったよ」
「ほんと!」

 ダイニングテーブルに着席して、出された肉の塊に、美優希はキラッキラに目を輝かせた。
 税金の支払いがきついので、少し前からふるさと納税を使って節税をしていた。普段はこんな食事をしない。大会で結果を残せた時だけだ。

「ね?いいよね?」

 美優希はかぶりついていいか聞いた。

「いいよ、俺もやりたいし」
「やったー」

 焼きあがった極厚ステーキにフォークを思いっ切り刺して持ち上げ、大口を開けてかぶりつき引きちぎる。
 家だからできるはしたない食べ方だが、美優希は相応に頑張ったのだ。
 彼氏として、美優希が恥ずかしがらなくていいように、啓も同じようにかぶりついて引きちぎったのだった。



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