私プロゲーマーに成ります!~FPS女子の軌跡~

紫隈嘉威(Σ・Χ)

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二章

関係性

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 美優希と美春の誕生日が過ぎ、二月の下旬、輝の彼氏、信也が喜ばしい報告を持ってきた。

「受かったよ、ジャストライフ」
「ほんとに!」

 自分の事のように喜ぶ輝はその日の内に、美優希たちにも連絡を入れ、お祝いと称して、リモート飲み会を催す。

「コネなしで受かったんだから本物だね」

 信也は今回に限ってコネを使わずに試験を受けた。
 一義も人事部から採用者報告が上がるまで知らず、人事部も彼氏のことまでは把握していないので、まさに実力の勝利だろう。

「ああ、ポートフォリオの威力ってすごいんだな」

 ポートフォリオとは、仕事の実績を表などにまとめた書類やデータを指す。

「そりゃそうよ。正社員経験がない輝のお母さんが、ポートフォリオで受かってるんだもん」
「そうなのか」

 輝の母親、涼子は最終学歴が高卒で、高校卒業後にすぐ隼人を生んでいる。その為、正規雇用の経験がなく、パートしつつも伝手から絵の仕事をもらい稼いでいた。
 輝が小学三年生になった頃、仕事を探し始め、たまたま株式会社ジャストライフの求人をみて応募した。この頃は、新卒よりも即戦力を欲していた事もあり、今までの実績を提示して即採用されている。
 そんなことを知らない信也だが、自分のSNSアカウントに絵を投稿し、何度か仕事を受けており、許可をもらった上でポートフォリオを作成して書類に入れていた。
 そして、面接でポートフォリオを褒められまくり、学校辞めて来ないかと言われたほどだった。

「パパに聞いたんだけど、ポートフォリオを付けて受ける大卒生って、意外と少ないんだって。高校生ならなおことね。だから、最近は技術試験として絵をかかせたり、動画を編集させたりするんだってさ」
「お母さんも技術試験はあった、って言ってたかな。あと、トレパクを見抜く試験」

 トレパクとは、トレースとパクリを合わせた略語だ。パクリとは、他人の成果物を自分のものとすること言い、トレースとは、他人の成果物に手を加えるか、上からなぞって色味を変えて自分の成果物とすることを言う。

「そう言えばあったな」
「ジャストライフの出資でイラストレーター連盟があってね、仕事の斡旋と著作権関連のフォロー、イラストレーター同士の交流が目的。活動しなくてもいいけど、素材制作部に配属されたら加入必須なの。会費はないから安心して。輝も入ってるよ」

 今は顔出しをしているのである程度関係なくなってきているが、リスナーに求められて、以前のバーチャル配信に戻ることはある。バーチャル配信者は著作権の塊であり、これを守ることが第一目的として、一般社団法人としてイラストレーター連盟を作っている。
 お金が発生したとしても、その流れに連盟が関わる場合のみ、システム利用料として一割がシステム維持費として連盟に入る。利用規約には、個人契約しようとシステム利用しようと、それは自由となっている。
 連盟に持ち込まれる著作権の問題はSNSが圧倒的に多く、開始当初こそ、威力はなかったのだが、判例と実績が積まれるにつれて、イラストや漫画界ではかなり有名になった。
 FPS課に置いて、プロゲーミング部において、輝は暇なら動画や配信の素材制作をしている。その関係でイラストレーター連盟に入っている。

「それで、知識があるかどうかを見られたわけか・・・イラストレーター連盟ってジャストライフ出資なの?!」
「今は三十パーセントで、色んな会社が出資してるね。管理部にいる元警察官とか弁護士も出資してて、お金はあげてないね。あげられないし。まともにお金払って仕事してもらってるのはシステム維持更新をするSEと、実働があった弁護士だけ」
「結構自転車操業なんだな」
「利益を求めるんなら一般社団法人にせずに、うちで事業化するよ」
「そりゃそうか」

 あくまでもイラストレーターを守ることが目的でしかない。

「有名な所属者っているのか?」
「私は輝以外知らないかな。興味ないし、知ってても公開情報になってないなら言えないよ?」
「そりゃそうか・・・」

 輝は所属している事を公にしているので、こうして話せるが、プライバシーの観点からはあまりいい話ではない。

「ふと思ったんだが」
「どうしたの?」
「野々華は選手以外の仕事って何してるんだ?」

 洋二郎はふとそんなことを言い出した。司法試験予備試験に合格し、一義に報告した洋二郎は、結局来月からジャストライフに所属することが決まっている。
 と言うのも、美優希の祖母、顧問弁護士の幸子が六十七で、七十までは働くつもりでいる。せっかくだから幸子に洋二郎を育てて貰おうと言うわけである。

「私はクリスと一緒に、海外スポンサーと、海外リスナーとの対話が仕事、国内向け動画美優希が主だけど、海外向けは私が主だね」
「そうだったのか。不思議だったんだよな。選手以外の活動って意外と野々華の名前って出てこないし」
「クリスと一緒なら、なんでお前が知らないんだよ」

 拓哉が突っ込んできたが、これにもちゃんと理由がある。

「スポンサーの仕事ってまずは私に来るの」
「美優希に?まぁ、リーダーだからそうか」
「そこから私が割り振るし、二人が連携取るほど規模が大きくて、私と輝が関係しない規模なら、そもそも話は受けないからね」
「理由は?」
「個人チャンネルを作らない理由と同じだね。クリスはコーチって言う立場だけど、私と輝、野々華は対等だから、差が生まれないようにしてるわけ。それで仲違いしててもしょうがないでしょ?」

 これは親友同士だからできる関係性でしかない。

「それって、お前らだからできて、成功してる方法なんだろ?」
「リージョン大会の予選で終わるチームって、所詮個人技なんだよね。人と人だから嚙み合わなくて当然なんだけど、それをどうするかは、初期の段階で諭されたよ」
「なんとなくわかるわ。個人技は完成してて当たり前なんだよ。プロなんだから。トッププロチームって連携にミスが少ないんだよな」
「個人がミスした時のフォロー、その速さも別格だよな。同じゲームをやってる身として、近くで見てて、一緒にやって分かるわ。欲しい物が欲しい時に得られてる」

 無論それだけではない。

「ちょっとは関連するんだが、リーダーはずっと美優希?」
「美優希がリーダーなのは将来会社を継ぐ為で、配信開始当時から変わってない。私たちに不満がなかったかと言えば、私にはなかった。今だから言えるけど、漠然と絵の仕事はしたいな、ってお母さん見て思ってたの。そしたら、社長が環境を作ってくれた」
「私はお父さんに通訳の道をありえないぐらい否定されてて、諦めようとしてたぐらいに、社長が火を付け直してくれて。だからと言って逆らえない関係じゃなくて、私たちが逆らってないだけだね。それに、美優希が引っ張ってくれないと寧ろ困るくらいだし」

 実を言えば、その前から関係性はほぼ確定していたようなものである。
 野々華に至っては保育園からの付き合いで、輝は小学校入ってすぐから、美優希が社長令嬢だなんて意識したのは、小学校も高学年に入ってからの話である。
 どんなに仲良しで、一義が大衆に合わせた教育をしていたとして、見た目でも社長令嬢に見えなくても、ふたを開ければ、投資家が目をランランと光らせる、ユニコーン企業の社長の娘である。顔色を窺っていた時期はある。

「私は加入が遅くて、美優希たちに、特に美優希にこの足の事で恩があるから、コーチ以上の事はできないよ」
「秘書ってそう言う事だったのか」
「うん」

 クリステルは、コーチングでも恩が返せるからやれているだけであって、コーチングの為に浴びせる厳しい言葉に辛さを持っている。
 それでも勝つ為に、勝たせる為に飲み込んだものなので我慢している。

「なんつうか、絆だよな。それが別格な気がする」
「分かるわ。チームとしての絆だけじゃないんだな。プライベートの絆は、確かに他の選手には感じないかもしれん」
「ここまでくると家族なんだろうな。気軽に、臆面なく言い合えて、受け止められるんだもんな」
「そう考えると、今年の大会は安心して見れるな」
「「「違いない」」」

 強さの秘密、絆、それを知った彼氏たちは、何処かホッとした様子だ。

「そう言えば、洋二郎さんは来年度から会社?」
「そうだけど、一ヶ月だけ向こうで研修受けたら、クリスのとこに戻って、FPS課の法務マネージャーをしながら、五月の司法試験本番かな。合格したら、一旦休職して埼玉と東京で司法修習を受けながら、なるべくタイミングを合わせて、向こうに戻って修習」
「でも、なるべく、って感じなんだね」
「ああ、なんだけど、今分かってるのは来年の一ヶ月だけ一緒に居れないこと。最後の十一月に埼玉に行って集合修習受けないといけなくて。最高裁次第で最悪は八ヶ月間も戻れないかも。その後、司法修習生考試もあるから、十二月に食い込むかな」

 一口に弁護士と言っても、そこまでの道のりは非常に面倒だ。

「その間はアレクシアさんに・・・あー、そっか、アレクシアさん出張多いんだった」

 世界で活躍している所為で、アレクシアの出張は馬鹿みたいに多い。開催地の現地確認や他チームとの会議で梨々華を連れまわし、梨々華に秘書のようなことをさせながら、英語を教えている。
 アレクシアの仕事を梨々華にやらせ、美優希と交代した時にフォローできるようにする為である。
 因みに、今の梨々華はFPS課のマネジメントはほぼやっていないが、プロデューサーとしての連絡は取っている。

「パパがいるから大丈夫だよ。あれかずっとフリーランスで在宅ワーク、取引してるのジャストライフだけだから、ずっと家に居る」
「そっか、なら安心だ。それでも一人になりそうで、怖かったら遠慮なくうちを頼ってね」
「向こうだったら、私たちでもいいよ。ね、輝」
「うん。これ以上、失わないでほしいから」
「そうする。皆ありがとね」

 さて、残り大学生活も残り一年、美優希たちには重大な仕事が待っている。
 クリステルは選手ではないので別として、e-sportsプロに対する大学のフォロー制度構築の為、大学では全員素性を露わにして過ごし、ゼミが免除されて午前中は各学長の研究室に入る。

「ほとんどプライベートがないじゃないか」

 経済学部の学部長に言われて、美優希はきょとんとした。

「事の重大性が分かってないね・・・まぁ、いい。来週の一回目の会議に向けて、このまま資料を作り続けてくれ」
「分かりました」

 与えられた席に戻った美優希は黙々と資料を作り続けた。


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