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第七章 開始
三節 聖女の集い
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今回の件で一番得をしたのはイネスであろう。
確かに、外交補佐に聖女と言う職を失ったわけだが、天使の巫はそのままで新たに天使の伴侶となり、仲の良かった第四聖女とのつながりを絶つ必要がなかったからだ。
損をしたのが聖国、厳密には貴族院である。
呪い受けた上に、噂として流され、名義こそアージェ教ではあるが、イネスに対する婚姻祝い金と言う名目で退職慰労金、活動支援金、謝罪金も含まれており十割を負担させられている。それで国庫が揺らぐわけではないが、気に留めておかないとまずいことになりかねないすれすれの額になっている。
呪いをかけたこと以外は教皇が引き出したものだが、貴族院にとっては相手が悪かったとしか考えるほかない。
「あの時の保守派の顔は忘れられませんね」
いつもの聖女の服ではあるが、聖女の徽章が外れている所為か、その笑顔はずいぶん輝いて見える。
第四聖女がお祝いとお別れの茶会を自分の屋敷で開き、第一、第三聖女の到着を待つ傍ら、貴族院と決着をつけた話をしていた。
第四聖女は貴族の末っ子令嬢で、親が侯爵位なので教育はなされているものの、我儘加減とお転婆加減が強い傾向にある。名はオレリア・デュモルチェと言う。デュモルチェ侯爵家の特徴である銀髪と透き通るな白い肌、幼さが残っている物の、美人になることは確定と言った容姿をしている。
「ずいぶんうれしそうですね」
「以前から辛苦を嘗めさせられていましたからね。もうそんなことをしなくていいと考えると、涙すら出そうです」
「お姉様はそれだけじゃないでしょ?」
「もちろんですよ」
「いいなー、天使様かー」
憧れがない方がおかしいだろう。
「伝承では二人、イネスが三人目ですね」
第一聖女が突然声をかけてきた。庭で催しているので、こうなるのも仕方がない。
天使の距離がなまじ近いのは、婚姻を結んでいる過去があるもの効いている。伝承二人とイネスでは決定的に違う面がある。それは、天使に惚れられている点である。
どちらが先など栓のない話ではあるが、イネスがルシフェルに惚れている。伝承も暮らしのこと等の詳しい話は残っていないが、その点において、イネスがさほど不安を感じていない要因になっている。
「歴史的快挙ですよ」
「思いは通じました」
第一聖女はいい子いい子と言いたげに、イネスの頭を撫でた。
彼女は生まれてすぐ、神殿に預けられた孤児である。世話をした修道女が、それは、それは信心深かったので、その影響受けてこうなっている。名はリリアーヌ・ヴィオネと言う。ろうたけた雰囲気は彼女の母性の現れで、絶世独立と称される彼女は聖母筆頭候補である。
聖女にまで上り詰めた当初、自称実母実父がわんさか現れ、中には本物がいたのだが、聖騎士を使って全員牢獄に入れるなど、容赦しない冷酷さを持っている。
「私が離れてから貴族院もずいぶんなことになっていますね」
彼女は孤児であることを存分に利用して立ち回っており、貴族院との喧嘩は絶えなかった。養母である修道女も否定どころかよくやったと言うほどで、失うものがなかった彼女らしいところである。
彼女と言うブレーキが一つなくなったことで、イネスにそのしわ寄せが行ったわけである。
「リリアーヌ様がやりすぎなのですよ?」
「国内の者に遠慮する必要ありませんからね。利用しているのですから、利用されることは織り込まないとなりません。オレリア、あなたも気をつけなさいね?」
「はーい」
「それで、その天使様はどのような方ですか?」
年長である第一聖女たる彼女は、平等に他の聖女を気にかけている。自身が苦労した分、あまり苦労をさせたくない思いがあるのだ。時には厳しく教育を施す教師となり、時には聖母のように優しさあふれる母性を見せる。
「お会いになられませんでしたか?」
「その天使様にですか?いいえ、お会いしたことはないはずですよ」
「ユンカース様ですよ」
「あの方が?!」
「うそ・・・」
リリアーヌとオレリアが驚くことは無理もない。
委託の近衛護衛で顔を会わせることはあったが、双子のことは知らないし、ルシフェルとしての彼とは会ったことがないのだ。
同時に、イネスが惚れる理由もなんとなくわかる。リリアーヌとオレリアは近衛護衛としての傭兵と言う面しか知らないが、傭兵特有の媚び諂いはなく、まして尊大でもない。まるで貴族紳士のように礼を尽くされ、真摯に仕事をこなす様は聖騎士に引けを取らない。
妹のラジエラも教育が行き届いているところも知っているので、その上でプライベートまで見ているのなら、自身らも同じだった可能性は十分ありうる。
「パッとはしませんが、悪くはありませんね」
これは外見のことを言っている。ずいぶん失礼ではあるが、こうして聖女が集まる場所では男子禁制が絶対だ。また、オレリアが絶対的信頼を置くメイドしか世話を任されないので、これが外に漏れることはない。
イネスはこのリリアーヌの言葉に眉をひそめてしまった。しかし、事実であることはイネスも理解しているので、とやかく言うことはしない。
「分かる気がします。イネスお姉様はどこに惚れたのですか?」
「初めてお会いした時に良くしてくださいましたし、セレ様やイム様と接するお姿、妹のマリ様とも良い関係性、何よりも、気に掛けるものが多い中でも、私を気にかけてくださっていらっしゃいました。お料理もお上手で、家庭的な優しいものをお作りになられます。そういったところでしょうか」
「本当に優しいお方なのですね」
リリアーヌは紅茶を片手に感慨深げに言う。
「はい。始めこそ天使様に対する憧れでしたが、旅団活動参加への準備をしているうちに、ですね」
イネスにとってルシフェルと言うのは、歳の差がレイモンと同じ五歳で、接する機会の多い男性の中でも一番歳の差がない人である。レイモンは職場が同じでも、階級の面で接する機会はそんなに多くない。
レイモンが言う彼女に恩と言うは、父子家庭のレイモンの一人娘が病気で世話になったことで、故に恋愛対象として初めから見ていない上に、見られていないのだ。
ルシフェルとて初めは恋愛対象として見てはいないが、憧れは抱いており、発展しそうな土壌はあったわけだ。
「いいなー、いいなー」
「それは天使様だからですか?」
と、いかにも意地悪な言葉を投げかけたのは第三聖女である。
彼女も貴族の令嬢ではあるが、親の爵位は伯爵で、長子でありながら出家して聖女になった。家督争いの面倒を避ける為に、自身がそれを示すために出家したのである。名はアンナ・ドゥメルグだ。亜麻色でウエーブ調の癖毛と上から下まで整った容姿が特徴的だが、整いすぎて足元がよく見える劣等感を持っている。
聖女に認定されたのが遅かったので、第三聖女ではあるがイネスよりも年上だ。次期外交官としてイネスとライバル関係にあったが、切磋琢磨の良い関係であり、犬猿の仲と言うわけではない。
今回の件で次期外交官はアンナに決まったも同然であるが、実力で勝ち得たものではないので不満を持っている。
「ち、が、い、ま、す」
侯爵位の娘だからと言って、オレリアがそれを鼻にかけるようなことはせず、聖女になった時点で家の爵位は関係なく、しかも、見方を変えると家の身分よりも高い。それ故、全員対等であり、アンナはオレリアをよくいじる。
「相手の子育ての様子を知れて、相手の作った料理を食べられて、私たちでは絶対に考えられない事でしょう?」
「そうですね」
政略結婚で許婚が幼いころからいる貴族社会、子育てにおいても乳母が基本になり、父親の参加はあまりない。イネスとリリアーヌはそもそもの話だが、アンナにとってそれがメリットだとは到底思えず、皮肉った答え方をした。
「憧れが過ぎるのではありませんか?」
本来、オレリアもアンナと同じように思うはずなのだが、これにはオレリアの本好きが関係してくる。
恋愛小説が好きな彼女は、特に庶民の話が好きで憧れているわけだ。
「貴女、出家もしていないでしょう?ならば、私よりも貴族の家庭は知っているはずです」
家のことを考えて出家しているアンナだからからこその言葉である。
「空想に身を沈めるなとは言いませんが、現実を見なさいな。貴女、許婚がいるのでしょう?子育ては無理でしょうけど、料理はねだってみてもいいのではありませんか?」
「あ」
思いつかなかったようである。
「あら?考えつかなかったのですか?」
「アンナ」
リリアーヌが止めるべくして止めた。ここはあくまでもイネスを祝福する為に開かれたもの、いつもの情報交換と言う名の女子会ではない。
オレリアはいじられる方なのでアンナを止めることはできない。イネスはアンナの年下なのでそこまで強くは出られない。だからこそいつものようにリリアーヌがアンナに待ったをかけたのだ。それも早いタイミングで、いつもならヒートアップする直前まで聞き流している。
「アンナ、今日の主催はオレリアです。そして、イネスを祝福することが目的です。そのイネスを差し置いて、誰が貴方方の喜劇を見ていたいと思うのですか?」
彼女らの中であるから許されていたことなのだが、流石に今日は許さないと言ったところだ。
イネスは徽章を付けてここには来ていない上に、プライベートでもなく、正装が聖女の服しかないので許可をもらった上で着ている。聖女と言う身分は隠さない上に、聖女としてしか呼ばれないので他の正装を持っていない。
つまり、イネスはもう聖女ではないのだ。
聖女でない者がここにいるのはメイドか客人かの二択であり、メイドの恰好ではないので客人だ。
「イネスは既に聖女ではないのですよ?弁えるべきはどちらか、少し考えなさい」
「はい」
リリアーヌの厳しい物言いにしゅんとしてしまった彼女はどこか犬にも見える。
「イネス、ごめんなさいね」
「い、いえ。大丈夫です」
形だけ、謝罪は受け取っておくおことにした。
と言うのも、数日後には聖国の首都、神殿都市を出る為、これが最後になるかもしれないから見ていたかったのである。なので、終始感慨深い表情をしていたのだが、気分を害したように取られてしまったのである。
リリアーヌは言葉の通り、イネスをすでに聖女仲間ではなく、客人として捉えているということでもある。彼女はこういった線引きが非常に厳しい人でもある。
イネスは寂しさを感じずにはいられなかった。
確かに、外交補佐に聖女と言う職を失ったわけだが、天使の巫はそのままで新たに天使の伴侶となり、仲の良かった第四聖女とのつながりを絶つ必要がなかったからだ。
損をしたのが聖国、厳密には貴族院である。
呪い受けた上に、噂として流され、名義こそアージェ教ではあるが、イネスに対する婚姻祝い金と言う名目で退職慰労金、活動支援金、謝罪金も含まれており十割を負担させられている。それで国庫が揺らぐわけではないが、気に留めておかないとまずいことになりかねないすれすれの額になっている。
呪いをかけたこと以外は教皇が引き出したものだが、貴族院にとっては相手が悪かったとしか考えるほかない。
「あの時の保守派の顔は忘れられませんね」
いつもの聖女の服ではあるが、聖女の徽章が外れている所為か、その笑顔はずいぶん輝いて見える。
第四聖女がお祝いとお別れの茶会を自分の屋敷で開き、第一、第三聖女の到着を待つ傍ら、貴族院と決着をつけた話をしていた。
第四聖女は貴族の末っ子令嬢で、親が侯爵位なので教育はなされているものの、我儘加減とお転婆加減が強い傾向にある。名はオレリア・デュモルチェと言う。デュモルチェ侯爵家の特徴である銀髪と透き通るな白い肌、幼さが残っている物の、美人になることは確定と言った容姿をしている。
「ずいぶんうれしそうですね」
「以前から辛苦を嘗めさせられていましたからね。もうそんなことをしなくていいと考えると、涙すら出そうです」
「お姉様はそれだけじゃないでしょ?」
「もちろんですよ」
「いいなー、天使様かー」
憧れがない方がおかしいだろう。
「伝承では二人、イネスが三人目ですね」
第一聖女が突然声をかけてきた。庭で催しているので、こうなるのも仕方がない。
天使の距離がなまじ近いのは、婚姻を結んでいる過去があるもの効いている。伝承二人とイネスでは決定的に違う面がある。それは、天使に惚れられている点である。
どちらが先など栓のない話ではあるが、イネスがルシフェルに惚れている。伝承も暮らしのこと等の詳しい話は残っていないが、その点において、イネスがさほど不安を感じていない要因になっている。
「歴史的快挙ですよ」
「思いは通じました」
第一聖女はいい子いい子と言いたげに、イネスの頭を撫でた。
彼女は生まれてすぐ、神殿に預けられた孤児である。世話をした修道女が、それは、それは信心深かったので、その影響受けてこうなっている。名はリリアーヌ・ヴィオネと言う。ろうたけた雰囲気は彼女の母性の現れで、絶世独立と称される彼女は聖母筆頭候補である。
聖女にまで上り詰めた当初、自称実母実父がわんさか現れ、中には本物がいたのだが、聖騎士を使って全員牢獄に入れるなど、容赦しない冷酷さを持っている。
「私が離れてから貴族院もずいぶんなことになっていますね」
彼女は孤児であることを存分に利用して立ち回っており、貴族院との喧嘩は絶えなかった。養母である修道女も否定どころかよくやったと言うほどで、失うものがなかった彼女らしいところである。
彼女と言うブレーキが一つなくなったことで、イネスにそのしわ寄せが行ったわけである。
「リリアーヌ様がやりすぎなのですよ?」
「国内の者に遠慮する必要ありませんからね。利用しているのですから、利用されることは織り込まないとなりません。オレリア、あなたも気をつけなさいね?」
「はーい」
「それで、その天使様はどのような方ですか?」
年長である第一聖女たる彼女は、平等に他の聖女を気にかけている。自身が苦労した分、あまり苦労をさせたくない思いがあるのだ。時には厳しく教育を施す教師となり、時には聖母のように優しさあふれる母性を見せる。
「お会いになられませんでしたか?」
「その天使様にですか?いいえ、お会いしたことはないはずですよ」
「ユンカース様ですよ」
「あの方が?!」
「うそ・・・」
リリアーヌとオレリアが驚くことは無理もない。
委託の近衛護衛で顔を会わせることはあったが、双子のことは知らないし、ルシフェルとしての彼とは会ったことがないのだ。
同時に、イネスが惚れる理由もなんとなくわかる。リリアーヌとオレリアは近衛護衛としての傭兵と言う面しか知らないが、傭兵特有の媚び諂いはなく、まして尊大でもない。まるで貴族紳士のように礼を尽くされ、真摯に仕事をこなす様は聖騎士に引けを取らない。
妹のラジエラも教育が行き届いているところも知っているので、その上でプライベートまで見ているのなら、自身らも同じだった可能性は十分ありうる。
「パッとはしませんが、悪くはありませんね」
これは外見のことを言っている。ずいぶん失礼ではあるが、こうして聖女が集まる場所では男子禁制が絶対だ。また、オレリアが絶対的信頼を置くメイドしか世話を任されないので、これが外に漏れることはない。
イネスはこのリリアーヌの言葉に眉をひそめてしまった。しかし、事実であることはイネスも理解しているので、とやかく言うことはしない。
「分かる気がします。イネスお姉様はどこに惚れたのですか?」
「初めてお会いした時に良くしてくださいましたし、セレ様やイム様と接するお姿、妹のマリ様とも良い関係性、何よりも、気に掛けるものが多い中でも、私を気にかけてくださっていらっしゃいました。お料理もお上手で、家庭的な優しいものをお作りになられます。そういったところでしょうか」
「本当に優しいお方なのですね」
リリアーヌは紅茶を片手に感慨深げに言う。
「はい。始めこそ天使様に対する憧れでしたが、旅団活動参加への準備をしているうちに、ですね」
イネスにとってルシフェルと言うのは、歳の差がレイモンと同じ五歳で、接する機会の多い男性の中でも一番歳の差がない人である。レイモンは職場が同じでも、階級の面で接する機会はそんなに多くない。
レイモンが言う彼女に恩と言うは、父子家庭のレイモンの一人娘が病気で世話になったことで、故に恋愛対象として初めから見ていない上に、見られていないのだ。
ルシフェルとて初めは恋愛対象として見てはいないが、憧れは抱いており、発展しそうな土壌はあったわけだ。
「いいなー、いいなー」
「それは天使様だからですか?」
と、いかにも意地悪な言葉を投げかけたのは第三聖女である。
彼女も貴族の令嬢ではあるが、親の爵位は伯爵で、長子でありながら出家して聖女になった。家督争いの面倒を避ける為に、自身がそれを示すために出家したのである。名はアンナ・ドゥメルグだ。亜麻色でウエーブ調の癖毛と上から下まで整った容姿が特徴的だが、整いすぎて足元がよく見える劣等感を持っている。
聖女に認定されたのが遅かったので、第三聖女ではあるがイネスよりも年上だ。次期外交官としてイネスとライバル関係にあったが、切磋琢磨の良い関係であり、犬猿の仲と言うわけではない。
今回の件で次期外交官はアンナに決まったも同然であるが、実力で勝ち得たものではないので不満を持っている。
「ち、が、い、ま、す」
侯爵位の娘だからと言って、オレリアがそれを鼻にかけるようなことはせず、聖女になった時点で家の爵位は関係なく、しかも、見方を変えると家の身分よりも高い。それ故、全員対等であり、アンナはオレリアをよくいじる。
「相手の子育ての様子を知れて、相手の作った料理を食べられて、私たちでは絶対に考えられない事でしょう?」
「そうですね」
政略結婚で許婚が幼いころからいる貴族社会、子育てにおいても乳母が基本になり、父親の参加はあまりない。イネスとリリアーヌはそもそもの話だが、アンナにとってそれがメリットだとは到底思えず、皮肉った答え方をした。
「憧れが過ぎるのではありませんか?」
本来、オレリアもアンナと同じように思うはずなのだが、これにはオレリアの本好きが関係してくる。
恋愛小説が好きな彼女は、特に庶民の話が好きで憧れているわけだ。
「貴女、出家もしていないでしょう?ならば、私よりも貴族の家庭は知っているはずです」
家のことを考えて出家しているアンナだからからこその言葉である。
「空想に身を沈めるなとは言いませんが、現実を見なさいな。貴女、許婚がいるのでしょう?子育ては無理でしょうけど、料理はねだってみてもいいのではありませんか?」
「あ」
思いつかなかったようである。
「あら?考えつかなかったのですか?」
「アンナ」
リリアーヌが止めるべくして止めた。ここはあくまでもイネスを祝福する為に開かれたもの、いつもの情報交換と言う名の女子会ではない。
オレリアはいじられる方なのでアンナを止めることはできない。イネスはアンナの年下なのでそこまで強くは出られない。だからこそいつものようにリリアーヌがアンナに待ったをかけたのだ。それも早いタイミングで、いつもならヒートアップする直前まで聞き流している。
「アンナ、今日の主催はオレリアです。そして、イネスを祝福することが目的です。そのイネスを差し置いて、誰が貴方方の喜劇を見ていたいと思うのですか?」
彼女らの中であるから許されていたことなのだが、流石に今日は許さないと言ったところだ。
イネスは徽章を付けてここには来ていない上に、プライベートでもなく、正装が聖女の服しかないので許可をもらった上で着ている。聖女と言う身分は隠さない上に、聖女としてしか呼ばれないので他の正装を持っていない。
つまり、イネスはもう聖女ではないのだ。
聖女でない者がここにいるのはメイドか客人かの二択であり、メイドの恰好ではないので客人だ。
「イネスは既に聖女ではないのですよ?弁えるべきはどちらか、少し考えなさい」
「はい」
リリアーヌの厳しい物言いにしゅんとしてしまった彼女はどこか犬にも見える。
「イネス、ごめんなさいね」
「い、いえ。大丈夫です」
形だけ、謝罪は受け取っておくおことにした。
と言うのも、数日後には聖国の首都、神殿都市を出る為、これが最後になるかもしれないから見ていたかったのである。なので、終始感慨深い表情をしていたのだが、気分を害したように取られてしまったのである。
リリアーヌは言葉の通り、イネスをすでに聖女仲間ではなく、客人として捉えているということでもある。彼女はこういった線引きが非常に厳しい人でもある。
イネスは寂しさを感じずにはいられなかった。
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表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
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