孤児のTS転生

シキ

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孤児と愚者の英雄譚

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アマガル家による馬車の移動により山を一つ二つと越え長い道を馬車が駆けると街が見えてきた。
流石当主が乗る馬と言った感じでその速さは尋常ではないスピードで風景が過ぎていった。

「アルキアン様…嬢様…今回はあの村の近くで一度泊まりますのでご準備を」

馬と車を操る異才を持つ御者のレイノルドさんがそう言う。
この馬車の旅で一番良かった所を言えばやはりレイノルドさんの暴走馬車を味わうことがなかった点にあるだろう。
やはり騎士や兵士の皆さんには脱帽だ…何せ魔物や盗賊が現れると即座に動いてくれる。

更にはこちらに手を出さないよう指示もしてくれるときたんだ。
コレほど嬉しいことはない…まぁレイノルドさんは倒してる時手元の指揮棒を撫でて今にも戦闘に参加したそうにしていたのが怖かったが。
今じゃ完全に盗賊や魔物なんかより馬車の方が怖い。

「全隊止まれッ!」

その一声が響き馬車やその周囲の兵士の動きが止まる。
どうやら今日はこの辺りで一夜を明かすらしい。
この人数では村に泊まることができないのでこうして村で正当に交渉をし食糧を少し高い値段で買い上げる代わりに近くの場所を借りるのだ。

こういう一団での移動は必ず先鋒がおり泊まる先々での宿泊する場所を予約している為こうやってスムーズに進めるというわけだ。
騎士や兵士たちは淡々と野営へと向けた準備をしており私が手伝おうとすると拒否してくる。

私が魔術で火をつけようとしても断られるぐらいだ…人の仕事を奪っては行けないってのはわかるんだがアレもコレもさせてくれないってのは行き詰まるというか。
そんな風に思いながら用意された椅子で座っていると外套を引っ張られた為その方向を向くと子供の集団がいた。
ここは獣人の領地その為人族とは違い頭には大きな耳や尻尾がお尻から生えていたりする。

「おい!お前子供なのに騎士団に紛れているのか?」

そう言いながら先頭に立つ子供が聞いてくるので適当にうなづいていると「スゲェ」といいながら顔を合わせようとしてくる。
子供達は自分より一回り身体がデカく近くで見ると圧倒的存在感だが…コレはまぁ種族の差だろう。
種族的に人族より寿命が短い変わりに身体は早熟で筋力が育ちやすい。
つまりはかなりの戦闘民族なのだ。

「お前剣!剣持ってないのか?」

「騎士ってスゲーんだろ?力比べしよーぜ?」

「魔法は?ねぇねぇ魔法見せて?」

駄々をこねるようにこちらに擦り寄っては話しかけてくる。
この中で一番背が低くおそらく年齢も近いという考えから話しかけてくれているんだろう。
私はただただこうしてぼんやりしていても暇なだけの為子供達の相手をすることとした。

剣を見せてくれという要望には虚空庫からどっかの商人から買ったミスリルソードやシーヒルズで取り寄せた東方の国の刀での素振りを見せた。
やり方は簡単で虚空庫から剣の柄を掴みソードを一閃した後虚空庫に戻しアルキアンが使っていた炎の大剣を模してある大きな剣を振り地に着く瞬間戻し最後に刀で宙を斬る。
実際には実戦では全く意味を持たない行動だが…まぁカッコよければ良いじゃないか。

剣を振り終わると子供達の拍手が聞こえ調子に乗った私は自分の使える最大限の魔法を唱える。
風弾を空に放つ瞬間花弁を虚空庫から飛ばすことで華やかさを演じたりする。
中々の演出コレには獣人の女子もニッコリだったようではしゃいでいる姿を見るとやって良かったと思えた。

代わりに男子はそれほど魔法には惹かれなかったようで剣が見たいと駄々を捏ねてくる。
だがそれに対して女子は魔法が見たいと言うので…日が暮れるまで私は子供達の前でピエロの如く楽しませることにした。
魔術で火や水や土の玉を操ったり途中でやることがなくなり帰ってきたレイノルドさんと一緒に即興の剣舞を見せたりした。

レイノルドさんがここまで剣を使えるってのは少し意外であったが…どうやら普通の兵士達と最近では訓練を毎日行うようアルキアンに命令されたらしく渋々やってるうちにここまで腕を上げたらしい。
正規の兵士や騎士達の腕前には敵わないがそこらにいる盗賊には剣のみで太刀打ちできるのだそう。

…アルキアンはあの暴走を止める為奮闘しているようだ。
これからも是非レイノルドさんには剣の腕を磨いていって欲しいものだ。
そしてどうか二度と『チャリオット』なんて馬車を使う技は使わず忘れて欲しい。

「それじゃあーねー」

「バイバイ~」

日が暮れてきたので子供より更に屈強な獣人の大人がやってきて子供の手を引き帰っていく。
中には愚図る子供もいたがやはり獣人は集団行動を重んじる種族。
まだ帰りたくないと言いつつその足はしっかりと帰る集団の方へと向いており行動と矛盾してあるところに笑いが込み上げてきた。

「はぁ…子供というのは体力が有り余ってますね…もう歳ですかねハハ」

見る度に若返っているように思えるレイノルドさんは呟くと汗を拭い用意していた焚き火の方へと行くと火をつけた。
辺りは暗くなっており火の灯りによって周りに黄色の光が包み込む。
獣人の領地へと入って一日目はそんな名も無い村の子供達の交流から始まったのであった。
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