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第一章 アストラニア王国編
026 迷宮の薔薇と地下三十階(2)
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――地下三十階、ボス部屋前。
〈迷宮の薔薇〉の三人は急に口数が減り、表情も硬くなった。緊張を隠しきれていない。
「ボス戦を始めるタイミングは、ジーナさんたちに任せるよ。少し落ち着いてから挑もう」
「う、うん……わかった」
完全にガチガチだ。このままではまともに動けそうもない。少しでも緊張を解いてやったほうがいい。
俺は亜空間収納からテーブルセットを出し、人数分の紅茶を注いで配る。いきなり寛ぎ始めたせいで、ボス前に常駐していたギルド職員は目を丸くしていたが、気にしない。クッキーをつまみながら雑談をしていると、ようやく〈迷宮の薔薇〉の三人も落ち着きを取り戻し、何やら話し合いを始めた。
「アレス、待たせたね。覚悟は決まった。行こう」
ジーナさんの言葉を受け、俺はギルド職員にボス戦参加を報告する。
「男性一名、女性五名で間違いありませんね?」
「はい、間違いないです」
職員が通信魔道具で本部に報告し、これで準備は整った。
すると、ボス部屋に入る前にイレーヌが話しかけてきた。
「アレス、一つだけ約束して。もしアタシたちに何かあっても、先にボスを倒すことを優先してほしいの。お願い」
「ん? ああ、わかった。そうする」
イレーヌにしては珍しく真剣な表情だったので了承したが……俺たち三人はSランク上位。問題など起きるはずがないと思っていた。
今回の作戦は〈迷宮の薔薇〉の提案で、ボス――オークキングは彼女たちが速攻で仕留める。俺たちは取り巻きを掃討すればいいだけなので、とても楽だ。
扉を開けると、広いボス部屋の奥、黒い石を積み上げて作られた玉座に、ひときわ大きなオークが腰を下ろしていた。
全身は分厚い筋肉に覆われ、白い肌にはいくつもの傷が残っている。
胸には重そうな金属の鎧、肩からは毛皮のマントが垂れ、荒々しさの中にも王としての風格がある。頭には、獣の牙をつないで作られた王冠が光を受けて鈍く輝いていた。
玉座の前では、オークナイト四体、スナイパー四体、ウィザード四体、ハイプリースト四体、ジェネラル四体――計二十体がひざまずいている。誰も声を発さず、ただ重苦しい沈黙が広がっていた。
オークキングは静かに玉座にもたれ、ゆっくりと息を吐いた。その低い吐息が、広い石の間に響いていた。
俺は抑えていた魔力を一気に解放する。案の定、それまでひざまずいていた取り巻きたちは一斉に立ち上がり、俺めがけて突進してきた。キングまでついてきたら面倒だと思っていたが、キングは玉座に腰掛けたまま、しばらく動かなかった。
「俺たちが取り巻きを引きつける! キングは頼む!」
「任せて! やってやるんだから!」
「私たちがすぐに倒してみせるわ!」
『お任せください、アレス君!』
気合十分の〈迷宮の薔薇〉は右側へ回り込み、一直線にキングへ向かっていった。
「じゃあ、こっちも始めるか」
「アタシのクロスボウだけで終わるかもね」
「すべて受けきってみせます」
突っ込んでくるオークナイトはすべてリディアが盾で殴りつけてバランスを崩し、それを俺がロングソードで首を刎ね、うち一体はリディアが顔をランスで貫く。
イレーヌはアーチャーの矢とウィザードの魔法を躱しながらクロスボウを連射し、相手の攻撃をはるかに上回る物量で圧倒していた。
ジェネラルもナイトと大差なく、リディアの盾で崩したところを仕留めていけば終わりだった。
「やっぱり楽勝だったな。……キングも手伝うか?」
取り巻きを片付け、死体を収納した俺はキングの方を見やる。互いにまだ決定打はないようだ。
「全部アタシたちが倒したら、ついてきただけみたいになるでしょ? キングだけは自分たちで倒すって言ってたわ」
「ふーん。じゃあ、もう少し様子を見るか」
万が一のときには即座に助けに入れる距離を保ちつつ、俺は彼女たちの戦いを見守る。
キングはジェネラルよりも一回り以上大きく、そのくせジェネラルよりも素早い。力も強く、キングが片手で扱う大剣はその武器の大きさに似合わない速さで振られている。人間の王様と違って魔物の王様は一番強いやつがなるのかもな。
ジーナさんは大剣をまともに斧で受け、吹き飛ばされてしまった。なんとか大剣をかいくぐり、懐に入ろうとしているが、思いのほかキングの振る大剣が速いため、小さな傷が身体のあちこちにできている。
ティアさんはその傷を回復、セレナさんは隙を見て〈氷魔法〉を撃ち込んでいるが、すべてキングが左手に持つラージシールドで防がれている。
――このまま膠着状態かと思われたその時、
オークキングの全身からピンク色の煙のようなものが立ち上り、部屋中に広がった。
「なんだ!? 何の攻撃だ!?」
見ると〈迷宮の薔薇〉の三人に加え、イレーヌとリディアまで膝をつき、動けなくなっている。
「アレス! アタシたちに構わず、キングを倒して! 早く!」
これか……イレーヌがボス部屋に入る前に言っていたのは。
俺は言われるまま〈空間転移〉でキングの背後に回り込み、一撃で首を刎ねた。
「一体何が……?」
収納したキングを〈分解(空間)〉し、スキルを確認する。
〈誘引(性)〉
異性に効果のあるフェロモンを放出し、対象を強制的に発情状態にする。異性との性交で対象が満足すれば解消される。放置すれば三日間、身を焦がすような欲情に苛まれる。
「なんだこれ……!?」
「アレス、お願い……この先のセーフルームに“それ用”の部屋が……あるわ。そこに……アタシたちを運んで」
「イレーヌ! お前、このことを知っていて俺に黙ってたのか!」
「言い訳は……後でするわ……お願い。〈迷宮の薔薇〉の三人は初めて……だから、とても苦しいはずよ。……急いで」
くそっ……仕方ない。
俺は第十階梯生活魔法〈念動〉で五人全員を浮かせて運ぶことにした。
ボス部屋の奥にある扉を開け、通路を少し進むと大きく開けた場所についた。セーフルームだ。
「うわ……本当にあったのか」
そこは元の世界では“ラブホ”と呼ばれるような部屋が十部屋も用意されていた。別々の部屋にすべきなのか悩んだが、別々にすると一人ひとりの様子がわからなくなるので、同じ部屋に全員を入れた。
「あ、アタシと……リディアは〈強制終了〉でいいから……先にお願いできる……かしら……〈迷宮の薔薇〉の三人は……初めてだから……普通にしてあげて……ほしいの」
「いや、“普通に”って……一人三十分くらいかかると思うぞ。そんなに耐えられるのか?」
「その辺りは……ちゃんと話してあるわ……順番も……決めてある」
――昨日の〈迷宮の薔薇〉との“お話”って、これだったのか。
しかし、イレーヌでも苦しそうなのに大丈夫なのか? とにかく先にイレーヌとリディアは解消させよう。
ベッドは一つしかないが、ベッドの周りを魔力空間で囲って、防音し、周りから見えないようにする。
イレーヌとリディアを〈強制終了〉で解消させ、二人とも一分以内に終わらせた。ようやく落ち着いたイレーヌが理由を語り始めた。
「アレスを騙すような形になってしまったけど、このことは教えないでと〈迷宮の薔薇〉の三人に頼まれていたのよ」
「なぜ?」
「あの三人はこうなることを最初からわかっていて、それでもアレスに共闘をお願いしたの。でもアレスがこのボスのことを知らないって教えたら、できるだけ早くキングを倒して、アレスに迷惑をかけないように努力するから、ギリギリまで黙っていてほしいって。だって知らないのなら、わざわざ知られたくないじゃない。抱かれるかもってわかって依頼したなんて」
そうだった。〈迷宮の薔薇〉の三人はとても初心だった。できれば俺に知られたくなかったのか。だから自分たちでオークキングを速攻で倒すと言っていたのか。
オークキングは高確率でスキル〈誘引(性)〉を使ってくるため、女性だけのパーティで攻略するのは難しい。〈誘引(性)〉にかかってしまったら、男性にしか治せないし、女性しかいないなら全滅必至だからだ。
そのため、女性は恋人か、この人になら抱かれてもいいと思う男性としかこのボス部屋には来られない。
男性の冒険者が、Cランクの女性冒険者を執拗にナンパしていたのは、このボスのせいだった。逆に、いつも冒険者ギルドで男性を物色しているような女性たちがいたのもこのためだった。
本来このような情報は先輩冒険者から教えてもらうため、王都の冒険者でこのことを知らないものはいない。
だからギルドも敢えて教えることはない。知っていて当然のことだからだ。ここまで先輩冒険者とほとんど付き合いが無いまま活動してきた“俺だけ”が知らなかった。
ギルドの図書室にある本にもこのことは書いてあるらしい。オークが相手だからと調べることを怠ったツケが、ここで回ってきた。
王都のダンジョン『王城の地下迷宮』。別名《馴れ初めのダンジョン》。
これが馴れ初め!? いやそうかもしれないけど、これがきっかけってどうなの? いいのか? ……いや、いいのか。そうだった。ここは、そういう世界だった。
しかし、あの三人は知らないんだろうな。
“異性との性交で対象が満足すれば解消される”
初めての子を満足させるなんて、普通は無理だぞ。俺のようなスキル持っていなかったら、そんなことができるのはプロしかいない――
「あ……地上のワープポータルに男娼がいるのって……まさか」
「そうよ。このためよ。オークキングに挑んだ女性の数だけ待機しているの。今日は五人待っているはずよ」
ダンジョンを出てすぐの場所に男娼館があるのは、そのためだったのか……。
「アレスお願い。彼女たちを助けてあげて」
「……ああ。なんとかする」
ボス戦前にジーナさんが言っていた「覚悟は決まった」という言葉――そういう意味だったのか。無下にはできないな。
〈迷宮の薔薇〉の三人は急に口数が減り、表情も硬くなった。緊張を隠しきれていない。
「ボス戦を始めるタイミングは、ジーナさんたちに任せるよ。少し落ち着いてから挑もう」
「う、うん……わかった」
完全にガチガチだ。このままではまともに動けそうもない。少しでも緊張を解いてやったほうがいい。
俺は亜空間収納からテーブルセットを出し、人数分の紅茶を注いで配る。いきなり寛ぎ始めたせいで、ボス前に常駐していたギルド職員は目を丸くしていたが、気にしない。クッキーをつまみながら雑談をしていると、ようやく〈迷宮の薔薇〉の三人も落ち着きを取り戻し、何やら話し合いを始めた。
「アレス、待たせたね。覚悟は決まった。行こう」
ジーナさんの言葉を受け、俺はギルド職員にボス戦参加を報告する。
「男性一名、女性五名で間違いありませんね?」
「はい、間違いないです」
職員が通信魔道具で本部に報告し、これで準備は整った。
すると、ボス部屋に入る前にイレーヌが話しかけてきた。
「アレス、一つだけ約束して。もしアタシたちに何かあっても、先にボスを倒すことを優先してほしいの。お願い」
「ん? ああ、わかった。そうする」
イレーヌにしては珍しく真剣な表情だったので了承したが……俺たち三人はSランク上位。問題など起きるはずがないと思っていた。
今回の作戦は〈迷宮の薔薇〉の提案で、ボス――オークキングは彼女たちが速攻で仕留める。俺たちは取り巻きを掃討すればいいだけなので、とても楽だ。
扉を開けると、広いボス部屋の奥、黒い石を積み上げて作られた玉座に、ひときわ大きなオークが腰を下ろしていた。
全身は分厚い筋肉に覆われ、白い肌にはいくつもの傷が残っている。
胸には重そうな金属の鎧、肩からは毛皮のマントが垂れ、荒々しさの中にも王としての風格がある。頭には、獣の牙をつないで作られた王冠が光を受けて鈍く輝いていた。
玉座の前では、オークナイト四体、スナイパー四体、ウィザード四体、ハイプリースト四体、ジェネラル四体――計二十体がひざまずいている。誰も声を発さず、ただ重苦しい沈黙が広がっていた。
オークキングは静かに玉座にもたれ、ゆっくりと息を吐いた。その低い吐息が、広い石の間に響いていた。
俺は抑えていた魔力を一気に解放する。案の定、それまでひざまずいていた取り巻きたちは一斉に立ち上がり、俺めがけて突進してきた。キングまでついてきたら面倒だと思っていたが、キングは玉座に腰掛けたまま、しばらく動かなかった。
「俺たちが取り巻きを引きつける! キングは頼む!」
「任せて! やってやるんだから!」
「私たちがすぐに倒してみせるわ!」
『お任せください、アレス君!』
気合十分の〈迷宮の薔薇〉は右側へ回り込み、一直線にキングへ向かっていった。
「じゃあ、こっちも始めるか」
「アタシのクロスボウだけで終わるかもね」
「すべて受けきってみせます」
突っ込んでくるオークナイトはすべてリディアが盾で殴りつけてバランスを崩し、それを俺がロングソードで首を刎ね、うち一体はリディアが顔をランスで貫く。
イレーヌはアーチャーの矢とウィザードの魔法を躱しながらクロスボウを連射し、相手の攻撃をはるかに上回る物量で圧倒していた。
ジェネラルもナイトと大差なく、リディアの盾で崩したところを仕留めていけば終わりだった。
「やっぱり楽勝だったな。……キングも手伝うか?」
取り巻きを片付け、死体を収納した俺はキングの方を見やる。互いにまだ決定打はないようだ。
「全部アタシたちが倒したら、ついてきただけみたいになるでしょ? キングだけは自分たちで倒すって言ってたわ」
「ふーん。じゃあ、もう少し様子を見るか」
万が一のときには即座に助けに入れる距離を保ちつつ、俺は彼女たちの戦いを見守る。
キングはジェネラルよりも一回り以上大きく、そのくせジェネラルよりも素早い。力も強く、キングが片手で扱う大剣はその武器の大きさに似合わない速さで振られている。人間の王様と違って魔物の王様は一番強いやつがなるのかもな。
ジーナさんは大剣をまともに斧で受け、吹き飛ばされてしまった。なんとか大剣をかいくぐり、懐に入ろうとしているが、思いのほかキングの振る大剣が速いため、小さな傷が身体のあちこちにできている。
ティアさんはその傷を回復、セレナさんは隙を見て〈氷魔法〉を撃ち込んでいるが、すべてキングが左手に持つラージシールドで防がれている。
――このまま膠着状態かと思われたその時、
オークキングの全身からピンク色の煙のようなものが立ち上り、部屋中に広がった。
「なんだ!? 何の攻撃だ!?」
見ると〈迷宮の薔薇〉の三人に加え、イレーヌとリディアまで膝をつき、動けなくなっている。
「アレス! アタシたちに構わず、キングを倒して! 早く!」
これか……イレーヌがボス部屋に入る前に言っていたのは。
俺は言われるまま〈空間転移〉でキングの背後に回り込み、一撃で首を刎ねた。
「一体何が……?」
収納したキングを〈分解(空間)〉し、スキルを確認する。
〈誘引(性)〉
異性に効果のあるフェロモンを放出し、対象を強制的に発情状態にする。異性との性交で対象が満足すれば解消される。放置すれば三日間、身を焦がすような欲情に苛まれる。
「なんだこれ……!?」
「アレス、お願い……この先のセーフルームに“それ用”の部屋が……あるわ。そこに……アタシたちを運んで」
「イレーヌ! お前、このことを知っていて俺に黙ってたのか!」
「言い訳は……後でするわ……お願い。〈迷宮の薔薇〉の三人は初めて……だから、とても苦しいはずよ。……急いで」
くそっ……仕方ない。
俺は第十階梯生活魔法〈念動〉で五人全員を浮かせて運ぶことにした。
ボス部屋の奥にある扉を開け、通路を少し進むと大きく開けた場所についた。セーフルームだ。
「うわ……本当にあったのか」
そこは元の世界では“ラブホ”と呼ばれるような部屋が十部屋も用意されていた。別々の部屋にすべきなのか悩んだが、別々にすると一人ひとりの様子がわからなくなるので、同じ部屋に全員を入れた。
「あ、アタシと……リディアは〈強制終了〉でいいから……先にお願いできる……かしら……〈迷宮の薔薇〉の三人は……初めてだから……普通にしてあげて……ほしいの」
「いや、“普通に”って……一人三十分くらいかかると思うぞ。そんなに耐えられるのか?」
「その辺りは……ちゃんと話してあるわ……順番も……決めてある」
――昨日の〈迷宮の薔薇〉との“お話”って、これだったのか。
しかし、イレーヌでも苦しそうなのに大丈夫なのか? とにかく先にイレーヌとリディアは解消させよう。
ベッドは一つしかないが、ベッドの周りを魔力空間で囲って、防音し、周りから見えないようにする。
イレーヌとリディアを〈強制終了〉で解消させ、二人とも一分以内に終わらせた。ようやく落ち着いたイレーヌが理由を語り始めた。
「アレスを騙すような形になってしまったけど、このことは教えないでと〈迷宮の薔薇〉の三人に頼まれていたのよ」
「なぜ?」
「あの三人はこうなることを最初からわかっていて、それでもアレスに共闘をお願いしたの。でもアレスがこのボスのことを知らないって教えたら、できるだけ早くキングを倒して、アレスに迷惑をかけないように努力するから、ギリギリまで黙っていてほしいって。だって知らないのなら、わざわざ知られたくないじゃない。抱かれるかもってわかって依頼したなんて」
そうだった。〈迷宮の薔薇〉の三人はとても初心だった。できれば俺に知られたくなかったのか。だから自分たちでオークキングを速攻で倒すと言っていたのか。
オークキングは高確率でスキル〈誘引(性)〉を使ってくるため、女性だけのパーティで攻略するのは難しい。〈誘引(性)〉にかかってしまったら、男性にしか治せないし、女性しかいないなら全滅必至だからだ。
そのため、女性は恋人か、この人になら抱かれてもいいと思う男性としかこのボス部屋には来られない。
男性の冒険者が、Cランクの女性冒険者を執拗にナンパしていたのは、このボスのせいだった。逆に、いつも冒険者ギルドで男性を物色しているような女性たちがいたのもこのためだった。
本来このような情報は先輩冒険者から教えてもらうため、王都の冒険者でこのことを知らないものはいない。
だからギルドも敢えて教えることはない。知っていて当然のことだからだ。ここまで先輩冒険者とほとんど付き合いが無いまま活動してきた“俺だけ”が知らなかった。
ギルドの図書室にある本にもこのことは書いてあるらしい。オークが相手だからと調べることを怠ったツケが、ここで回ってきた。
王都のダンジョン『王城の地下迷宮』。別名《馴れ初めのダンジョン》。
これが馴れ初め!? いやそうかもしれないけど、これがきっかけってどうなの? いいのか? ……いや、いいのか。そうだった。ここは、そういう世界だった。
しかし、あの三人は知らないんだろうな。
“異性との性交で対象が満足すれば解消される”
初めての子を満足させるなんて、普通は無理だぞ。俺のようなスキル持っていなかったら、そんなことができるのはプロしかいない――
「あ……地上のワープポータルに男娼がいるのって……まさか」
「そうよ。このためよ。オークキングに挑んだ女性の数だけ待機しているの。今日は五人待っているはずよ」
ダンジョンを出てすぐの場所に男娼館があるのは、そのためだったのか……。
「アレスお願い。彼女たちを助けてあげて」
「……ああ。なんとかする」
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