百花征く剣 ~ 殺して奪うか、“えっち”して複製するか ~

凪山キコ

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第一章 アストラニア王国編

028 百花と指名依頼

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 すでにパーティ名は考えてあった。
 俺のパーティは、俺がスキルを与えていく以上、いずれ必ずSランク上位のスキル持ちで埋まるだろう。その場合、俺以外全員女性になることが確定してしまうのだが。

 ――ちなみに“アリス”で男相手は絶対にやらない。たとえそれで男にスキルを渡せるとわかっていてもだ。ここで改めて断言しておく。

 閑話休題。俺が考えたパーティ名は〈百花繚乱〉。

 【百花繚乱(ひゃっかりょうらん)】――数多あまたの優れた人物や業績が一度に現れること。

「ほう、〈百花繚乱〉か。なかなかいい名だ。それで登録しておいてやろう」

 ギルド長ガルドの許可も下り、俺たちのパーティは今日から正式に〈百花繚乱〉となった。
 ……と言っても、今のところイレーヌとリディア以外を増やすつもりはないのだが。

「では、アレスの二つ名だが……」

 ああ、そうだった。ガルドに勝手に付けられる二つ名があるんだった。頼むからまともなのにしてくれ。

「パーティ名にもちなんで、《百花く剣》とする」

「は、はぁ……」

 え? どういう意味なんだ? かっこよさそうではあるけれど。

「『百の花のごとき数多あまたの戦場で、その場を支配する圧倒的な剣』と言う意味だ。どうだ、アレス。かっこいいだろ?」

 ……お? おお! かっこいい! マジか! やればできるじゃんか! ガルド!

「あ、ありがとうございます。この名前に恥じないよう頑張ります」

 ガルドがにやりと笑う。なんだ?

「実はな、アレスに頼みたいことがある。これは王都四ギルドすべてからの指名依頼と考えてもらっていい」

 現在、王都の四つの冒険者ギルドを共通して悩ませている問題がある。

 ――Cランクの女性冒険者が一日中ギルドの席に居座り、それを目当てに男どもが群がる、というものだ。
 この現象は、ここ商業区の冒険者ギルドに限らず、どのギルドでも起きているらしい。

「ギルド長。俺、思うんですけど、これってオークキングのせいですよね? 『王城の地下迷宮』って何度も攻略されていて、ダンジョンコアまで行けばダンジョンの構成も変えられるんですよね? オークキングじゃないボスにすればいいだけじゃないんですか?」

「まあ、知らなければそう思うだろうな。だがオークをダンジョンに出すと、そのエリアのボスは必ずオークキングになる。この王都は“オーク肉”を特産としている以上、それは外せんのだ」

 なるほど……すでにオーク肉産業に依存している人が大勢いる以上、簡単には変えられないか。

「ではなぜ、女性冒険者たちは、そんなに急いでBランクになりたがるのですか? オークキングでなくともBランクになる方法はいくらでもありますよね?」

「個々の事情は違うだろうが、一つ大きいのは貴族との繋がりだ。Bランクからは貴族からの指名依頼が入る。女性パーティなら、貴族令嬢の護衛として優先的に呼ばれることも多い。そうなるとだ、中には貴族と縁ができて、結婚に繋がる例もある」

「……つまり玉の輿狙いですか。でも、急ぐ理由にはならないのでは?」

「いいや、貴族は若いうちに結婚相手を決める。妾であっても若い女しか選ばれない。だから、一番簡単にBランクになれるこのダンジョンが狙われるわけだ。それに王都であれば、貴族に結びつきやすいからな」

「他の男に抱かれてでも、狙いたいものなんですね……」

 そういえばと、ちらっと〈迷宮の薔薇〉の三人に視線を向ける。彼女たちが急いだ理由は――

「ちょ、ちょっと! アレス! 今こっち見た!? 違うからね! 私たちは違うからね!」
「そうよ! 一緒にしないでくれる!」
「アレス君……私はそんな女じゃないです……」

 はい、ごめんなさい。彼女たちがそうじゃないのはわかっている。だけど、なぜあんなに急いだのか……いずれ聞いてみよう。

 そして、咳払いで場を戻すガルド。

「あー、アレス、それでだな、本題に戻っていいか?」

「すみません。お願いします」

「お前には、他の女性だけのパーティと共にオークキングを倒し、その後の“治療”もしてもらいたい」

「はあ!?」

 ガルドによると、俺はほとんどの女性だけのパーティに狙われているらしい。他の冒険者ギルドから俺を見に来ている女性もいるそうだ。受付嬢の話では、ほとんどの女性冒険者が「アレスとなら一緒に行ってもいい」と言っているそうで、中には「どうにか同行させてくれ」と懇願するパーティまであるという。
 ガルドからは「全部とは言わん。テーブル席が少し空くくらいでいい。居座る女性冒険者を減らしてくれ」と依頼された。そもそもあのテーブルは、冒険者が軽く食事したり酒を飲む席なのだ。現在、そのサービスがほとんど出来ていない。

「じゃあ、アタシが窓口になるわ」

 イレーヌが窓口に立候補してきた。
 自分が面接や契約を取り仕切ると言う。え? 面接までするの? というか、これもう受けるの確定なの?

「誰でもいいわけじゃないわ。後々ストーカーになられても困るしね。最低限『この治療で恋人関係にはならない』という契約は結んでもらうわ」

 ……なるほど。任せておいたほうがよさそうだ。
 〈迷宮の薔薇〉も時間が合えば面接に同席すると言う。女性パーティの情報はだいたい把握しているらしい。

 そしてお金も取るそうだ。慈善事業じゃないからと。そ、そうですか。
 ガルドも「四ギルド合同依頼とはいえ予算は限られている。むしろ助かる」と言っていた。

 ただし、大々的に俺と一緒にオークキングを討伐する女性冒険者パーティを募集すると、男からの反感を買うのは必至なので、水面下で女性の中でだけ情報が周るようにするらしい。たぶんイレーヌの眼鏡にかなった女性にしか教えないんじゃないかと思っている。

 ◇

 冒険者ギルドで銀製のBランクカードを受け取り、〈迷宮の薔薇〉と別れて帰宅する。
 いろいろと疲れたので明日は休みにした。

「イレーヌ、リディア、二人に渡したいスキルを手に入れたんだ。今晩付き合ってもらっていいか?」

「はい。問題ありません、ご主人様」
「い、いいけど……それレベルいくつなのよ?」

「レベルのないスキルだ。ただ倍率は2倍じゃないのは確かだ」

 最近イレーヌはリディアを妙にライバル視している。リディアが受けると言えば、自分も断らない。……まあ、リディアは最初から断る気がないんだけど。

「ああ、それとできれば新しく取得したスキルのレベル上げも……」

「はい。問題ありません。ご主人様」
「やるわよ……やってやるわよ!」

 イレーヌ、投げやりになってない?

 今日だけで〈斧術〉、〈氷魔法〉、〈槌術〉はレベル9にできた。リディアが元々タフなのと、〈強靭〉持ちなのは本当に助かる。
 二人には〈念話〉を渡しておいた。これで離れていても意思疎通ができる。
 さらに後々試したいことがあったので、リディアに〈斧術[8]〉を渡しておいた。

 ◇

 翌朝。三人でのんびり朝食を取っていると、突然〈迷宮の薔薇〉の三人がやって来た。
 代表してセレナが口を開く。

「朝早くからごめんね、アレス。昨日の件なんだけど……推薦したいパーティがいるの。面接してもらえない?」

 もう候補が出てきたのか。〈迷宮の薔薇〉はイレーヌに許可を取り、昨日のうちに話を持って行ったらしい。相手パーティも乗り気だとか。……え? 〈誘引(性)〉食らうの前提なのに? この世界の女性はやっぱりよくわからん。ちなみに〈誘引(性)〉は俺のスキルに組み込んである。まだ使い道はないけど。

「じゃあアタシが面接してくるわ。リディアも来るでしょ?」

「はい。同席します」

 というわけで、俺は一人留守番になった。

 暇なので、魔法ギルドに巻物スクロールでも見に行くかと街を歩いていたら――

 『ローレリン魔道具店』の扉が開き、店主のエルフ、フィリシアさんにまたもや引きずり込まれる。

 ……夕方まで頑張った。
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