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1章 春の予感
1話 はじまりの予感 6
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一つ息を吐いて、両手でグラスを抱きしめたら、カランと氷が高い音をたてた。
「私も、矢野くんと一緒。やっぱり仕事が好き」
「価値観が違うってのもあるだろうけど、女だからって仕事を頑張っちゃいけないっておかしいだろ。なんでそれに合わせるんだよ」
「そう、なのかな……」
勢いなく返事をした私の目を彼はしっかりと見つめ返した。
「俺は、仕事を一生懸命に頑張るのは当たり前だと思うし、いいことだと思う。それに、それを言われたところで、仕事を不真面目にできるタイプじゃないだろ、どうせ」
「あはは、そうだね。言われてもやめられなかった。それでさらに嫌がられたけど」
矢野くんはその顔に少しだけ笑みを浮かべると、少し俯いてから私の視線を捉えた。
「元カレとまだ連絡取ってるの?」
元カレの話を突っ込んで聞かれて、思わず矢野くんから視線を逸らしてしまう。まさか矢野くんが恋愛トークをするなんて思わなかったから。とても、意外。
(恋愛トークなんて女子っぽいこと、苦手でしょ)
そう思いを込めながら、矢野くんを見つめるけれど、その視線は外されない。逆に、その真っ直ぐな目に見つめられて、なぜだか後ろめたくて言葉が出てこなくなったのは私。矢野くんに知られたくない、瞬間的にそう思ったのは、きっと間違いじゃないと思う。
「うん、まぁ、そうだね」
「好きなの?」
「え? いや、好きかって聞かれると……いや、どうかな。えっと……」
間髪容れずに問いかける矢野くんの言葉とその鋭い口調に戸惑いながらも、どう答えていいものか再び言葉を探す。
「なんだよ、はっきりしねーな」
不機嫌そうに言い捨てる矢野くんに苦笑いを浮かべるしかない。確かにはっきりとしない感情が私の中にある。
「結局さ、寂しいんだよね」
「これから環境が変われば、いろんな出会いがあるだろ」
「うん。なんかごめんね。恋愛相談になっちゃって」
「同期なんだから、相談ぐらいいくらでも聞く」
「……うん、ありがとう」
「別に礼を言われることじゃない。俺は思ったことを言っただけ。最後はお前が決めることだし」
「そうだね」
「プロジェクトも始まるし、前、向こうぜ」
矢野くんの言葉に背中を押されるみたいだ。新しい環境、新しい挑戦。
飲み会を終えて、電車に乗った私は、何度も矢野くんの言葉を思い出していた。そして、スマホの画面には別れを告げなければいけない相手の名前を表示させる。
「私も、矢野くんと一緒。やっぱり仕事が好き」
「価値観が違うってのもあるだろうけど、女だからって仕事を頑張っちゃいけないっておかしいだろ。なんでそれに合わせるんだよ」
「そう、なのかな……」
勢いなく返事をした私の目を彼はしっかりと見つめ返した。
「俺は、仕事を一生懸命に頑張るのは当たり前だと思うし、いいことだと思う。それに、それを言われたところで、仕事を不真面目にできるタイプじゃないだろ、どうせ」
「あはは、そうだね。言われてもやめられなかった。それでさらに嫌がられたけど」
矢野くんはその顔に少しだけ笑みを浮かべると、少し俯いてから私の視線を捉えた。
「元カレとまだ連絡取ってるの?」
元カレの話を突っ込んで聞かれて、思わず矢野くんから視線を逸らしてしまう。まさか矢野くんが恋愛トークをするなんて思わなかったから。とても、意外。
(恋愛トークなんて女子っぽいこと、苦手でしょ)
そう思いを込めながら、矢野くんを見つめるけれど、その視線は外されない。逆に、その真っ直ぐな目に見つめられて、なぜだか後ろめたくて言葉が出てこなくなったのは私。矢野くんに知られたくない、瞬間的にそう思ったのは、きっと間違いじゃないと思う。
「うん、まぁ、そうだね」
「好きなの?」
「え? いや、好きかって聞かれると……いや、どうかな。えっと……」
間髪容れずに問いかける矢野くんの言葉とその鋭い口調に戸惑いながらも、どう答えていいものか再び言葉を探す。
「なんだよ、はっきりしねーな」
不機嫌そうに言い捨てる矢野くんに苦笑いを浮かべるしかない。確かにはっきりとしない感情が私の中にある。
「結局さ、寂しいんだよね」
「これから環境が変われば、いろんな出会いがあるだろ」
「うん。なんかごめんね。恋愛相談になっちゃって」
「同期なんだから、相談ぐらいいくらでも聞く」
「……うん、ありがとう」
「別に礼を言われることじゃない。俺は思ったことを言っただけ。最後はお前が決めることだし」
「そうだね」
「プロジェクトも始まるし、前、向こうぜ」
矢野くんの言葉に背中を押されるみたいだ。新しい環境、新しい挑戦。
飲み会を終えて、電車に乗った私は、何度も矢野くんの言葉を思い出していた。そして、スマホの画面には別れを告げなければいけない相手の名前を表示させる。
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