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1章 春の予感
2話 近づく二人 5
ガコーンと軽快な音が響き、レーンの方から歓声が上がった。ストライクを出したらしい矢野くんが、ハイタッチをしながら戻ってくる。
「よお。遅かったな」
「家が遠いものでね」
矢野くんは私のすぐ隣に腰を下ろすと、「調子が悪い」と手をぷらぷらさせた。洗剤の柔らかい香り。元カレの湿っぽい空気とは違う、カラリとした陽の香りに、張り詰めていた心が緩んでいくのがわかる。
モニターを見上げれば、ずらりと並ぶストライクやスペアのマーク。これで調子が悪いというのは嫌味でしかない。
「草下! 来られて良かった! これで偶数だな。チーム分けできる!」
憲吾が屈託なく笑う。
「月曜日からはプロジェクトだなー」
「矢野くんは家が近くていいよね」
「確かに、池袋で良かった。通勤トータル二十分だからな」
そう言って、矢野くんはいつものポーカーフェイスに少しだけ微笑みを浮かべた。憲吾も「近くが一番」と無邪気に笑うから、つられて笑ってしまう。
「ボウリングなんて久しぶり! みんなうまいの?」
「俺はまぁまぁかな。草下は?」
「百いけば良いほう」
「あはは、ひでえな。あぁ、矢野はうまいぞ。男だけで行ったとき、凄かった!」
「俺は何でもできるからな」
「なにそれ!」
椅子にふんぞり返り自慢げな矢野くんに対して、陽子と私の声は同時に発せられた。陽子とは出会ったときからこう。初めて出会ったときから違和感なく馴染んで、一緒にいることが当たり前になった。
二人で笑っていると、後ろから軽やかな足音。振り向くと同時に、お茶を差し出された。
「ゆりちゃん! 暑かったでしょ? はい!」
「ええ! ゆきちゃんありがとう!」
佐藤由紀恵——ゆきちゃんの小さな手からペットボトルを受け取り、頬に当てる。
腕が痛くなるまでボウリングをして、居酒屋コース。本当に相変わらず。遊んで、飲んで、遊んで、飲んで。大学のサークル時代だって、こんなにくるくると場を変えて遊び続けたことなんてなかなかない。賑やかにふざけ合いながら進んでいく様は学生と変わらない。周りから見れば騒々しい限りだろう。
でも、この騒がしさが、今の私には救いだった。この心地よい熱の中に、もう少しだけ浸っていたい。そう思ったのは、きっとみんなと過ごす時間があまりにも温かいから。
「よお。遅かったな」
「家が遠いものでね」
矢野くんは私のすぐ隣に腰を下ろすと、「調子が悪い」と手をぷらぷらさせた。洗剤の柔らかい香り。元カレの湿っぽい空気とは違う、カラリとした陽の香りに、張り詰めていた心が緩んでいくのがわかる。
モニターを見上げれば、ずらりと並ぶストライクやスペアのマーク。これで調子が悪いというのは嫌味でしかない。
「草下! 来られて良かった! これで偶数だな。チーム分けできる!」
憲吾が屈託なく笑う。
「月曜日からはプロジェクトだなー」
「矢野くんは家が近くていいよね」
「確かに、池袋で良かった。通勤トータル二十分だからな」
そう言って、矢野くんはいつものポーカーフェイスに少しだけ微笑みを浮かべた。憲吾も「近くが一番」と無邪気に笑うから、つられて笑ってしまう。
「ボウリングなんて久しぶり! みんなうまいの?」
「俺はまぁまぁかな。草下は?」
「百いけば良いほう」
「あはは、ひでえな。あぁ、矢野はうまいぞ。男だけで行ったとき、凄かった!」
「俺は何でもできるからな」
「なにそれ!」
椅子にふんぞり返り自慢げな矢野くんに対して、陽子と私の声は同時に発せられた。陽子とは出会ったときからこう。初めて出会ったときから違和感なく馴染んで、一緒にいることが当たり前になった。
二人で笑っていると、後ろから軽やかな足音。振り向くと同時に、お茶を差し出された。
「ゆりちゃん! 暑かったでしょ? はい!」
「ええ! ゆきちゃんありがとう!」
佐藤由紀恵——ゆきちゃんの小さな手からペットボトルを受け取り、頬に当てる。
腕が痛くなるまでボウリングをして、居酒屋コース。本当に相変わらず。遊んで、飲んで、遊んで、飲んで。大学のサークル時代だって、こんなにくるくると場を変えて遊び続けたことなんてなかなかない。賑やかにふざけ合いながら進んでいく様は学生と変わらない。周りから見れば騒々しい限りだろう。
でも、この騒がしさが、今の私には救いだった。この心地よい熱の中に、もう少しだけ浸っていたい。そう思ったのは、きっとみんなと過ごす時間があまりにも温かいから。
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