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3章 蜜月
16話 深まる夜 3
「……なんで、泣いてんだよ」
「ないてない」
「どう見たって泣いてんだろ。何があった?」
「なにもない」
その言葉を口にした瞬間、さらに目頭が熱くなる。だって、本当に何もない。私が勝手に広斗の気持ちに期待して、ヤキモチを妬いただけ。
「ごめん。だいじょうぶだから。とりあえずかえる」
「だから待てって。なんで今日は言うこと聞かないんだよ。そんなんで帰れないだろ」
肩を掴む広斗の手に力がこもる。
「ちょっと待ってろ」
広斗は私の肩を掴んでいた手を離し、店の奥に戻っていく。
こんなところで泣くなんて全然成長していない証。社会人になったのに、また同じようなことを繰り返している。広斗を待たずに居酒屋を後にする。地下にある居酒屋を出て駅までの道を進もうとすると、足が思ったよりもおぼつかない。
そして、その駅までの道は男性二人にふさがれてしまった。
「お姉さん! 今からどうですかぁ?」
「っ——」
「あれ、泣いてるの?」
「けっこうです」
片方の男性が、酔っ払って私に声をかけてきた男性を止めてくれている。私がその人に少し頭を下げ、そこから離れようとした時——。
「——すみません、俺の連れなんで」
強い力で肩を抱かれた。広斗だ。彼は男たちを鋭く睨みつけると、私を抱えたまま歩き出した。酔っ払って足元がおぼつかない私は、引きずられるように歩いていく。
「ね、まって。ねぇ、ころんじゃう……あるけない」
思うように足が動かない。それでも、広斗は歩く速さを緩めてはくれなかった。そして、なにも言わずにそのまま道路脇でタクシーを止めて、私をその中に押し込んだ。
彼の家の駅名を告げられたタクシーは、ゆっくりと走り出す。走行音だけが響く車内。広斗は口を開かない。
「か、かえるから」
「黙ってろ」
その大きな声に体が強張る。涙が勝手に溢れてくるから、唇を力いっぱい噛みしめて窓の外を眺めた。
駅に近づくと、広斗が家までの道を誘導し、しばらくするとタクシーはゆっくりと門の前に停車した。降りた瞬間にまた広斗に手を引かれる。
「ひろとっ」
強引に部屋に連れて行かれ、広斗の部屋に入ると乱暴に手を離された。
「お前、なにしてんの?」
怒鳴っていないはずのその声に震える。いつもより低い広斗の声は明らかに怒りを孕んでいる。
「俺、待ってろって言ったよな? そんなフラフラで泣きながら外に出て、強引に連れて行かれたらどうすんだよ」
「ついて、いかないもん」
「ついて行く、行かないの問題じゃないだろ! 現に俺に抵抗できてなかっただろ!」
「っ——」
「もうちょっと考えろよ」
溜息と共に広斗が床に腰を下ろし、ここに座れと、自分の隣をトントンと指で叩く。さすがに戦意喪失している私は素直に腰を下ろした。
「ないてない」
「どう見たって泣いてんだろ。何があった?」
「なにもない」
その言葉を口にした瞬間、さらに目頭が熱くなる。だって、本当に何もない。私が勝手に広斗の気持ちに期待して、ヤキモチを妬いただけ。
「ごめん。だいじょうぶだから。とりあえずかえる」
「だから待てって。なんで今日は言うこと聞かないんだよ。そんなんで帰れないだろ」
肩を掴む広斗の手に力がこもる。
「ちょっと待ってろ」
広斗は私の肩を掴んでいた手を離し、店の奥に戻っていく。
こんなところで泣くなんて全然成長していない証。社会人になったのに、また同じようなことを繰り返している。広斗を待たずに居酒屋を後にする。地下にある居酒屋を出て駅までの道を進もうとすると、足が思ったよりもおぼつかない。
そして、その駅までの道は男性二人にふさがれてしまった。
「お姉さん! 今からどうですかぁ?」
「っ——」
「あれ、泣いてるの?」
「けっこうです」
片方の男性が、酔っ払って私に声をかけてきた男性を止めてくれている。私がその人に少し頭を下げ、そこから離れようとした時——。
「——すみません、俺の連れなんで」
強い力で肩を抱かれた。広斗だ。彼は男たちを鋭く睨みつけると、私を抱えたまま歩き出した。酔っ払って足元がおぼつかない私は、引きずられるように歩いていく。
「ね、まって。ねぇ、ころんじゃう……あるけない」
思うように足が動かない。それでも、広斗は歩く速さを緩めてはくれなかった。そして、なにも言わずにそのまま道路脇でタクシーを止めて、私をその中に押し込んだ。
彼の家の駅名を告げられたタクシーは、ゆっくりと走り出す。走行音だけが響く車内。広斗は口を開かない。
「か、かえるから」
「黙ってろ」
その大きな声に体が強張る。涙が勝手に溢れてくるから、唇を力いっぱい噛みしめて窓の外を眺めた。
駅に近づくと、広斗が家までの道を誘導し、しばらくするとタクシーはゆっくりと門の前に停車した。降りた瞬間にまた広斗に手を引かれる。
「ひろとっ」
強引に部屋に連れて行かれ、広斗の部屋に入ると乱暴に手を離された。
「お前、なにしてんの?」
怒鳴っていないはずのその声に震える。いつもより低い広斗の声は明らかに怒りを孕んでいる。
「俺、待ってろって言ったよな? そんなフラフラで泣きながら外に出て、強引に連れて行かれたらどうすんだよ」
「ついて、いかないもん」
「ついて行く、行かないの問題じゃないだろ! 現に俺に抵抗できてなかっただろ!」
「っ——」
「もうちょっと考えろよ」
溜息と共に広斗が床に腰を下ろし、ここに座れと、自分の隣をトントンと指で叩く。さすがに戦意喪失している私は素直に腰を下ろした。
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