社内恋愛ファースト・シーズン

アリスの鏡

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3章 蜜月

17話 蜜夜 2

 南ちゃんと広斗の会話を思い出して、また俯きそうになるけれど、抱きしめてくれているその腕とその胸の温もりが、私の背中を優しく押してくれる。

 聞かなきゃって。ちゃんと聞かないと、ずっと苦しいままだから。

「広斗、今日ね、あの、私と一緒じゃなかったら、南ちゃんと家で飲むつもりだった?」

「なんだよそれ、飲まないだろ。どうしたら俺が南野と飲むことになんだよ」

「だって、さっき南ちゃんが広斗のこと誘ってたでしょ?」

「え?」

「飲み足りないから、この後、広斗の家で飲み直そうって……広斗も、そうだなって答えてた」

「そんな話、俺してた? いや、記憶にない。今日はお前が……」

「私?」

「……お前が変な飲みかたするから、き、気になって……話ほとんど聞いてなかった」

 広斗がバツが悪そうに視線をそらす。

「え……」

「ああ! もう! 恥ずかしいからこういうこと言わせんな」

 広斗の耳が赤い。私の肩に顔を埋めて、彼はうめいた。

「広斗、赤い……」

「お前だって赤い」

 広斗は私の首筋に唇を当てた。

「っ……やっ。広斗、くすぐったいよ」

 離れようとしたけど、私を抱きしめる腕に力が込められて身動きが取れなくなる。

「広斗」

「逃げんな」

「え……」

 広斗の顔がまた近づく。唇が触れ合うけれど、さっきと違う。深くて、苦しくて、広斗がやっぱり広斗じゃないみたいで。

「な、に……」

 ベッドに連れていかれて、そのままゆっくりと押し倒される。私を見下ろす広斗の目は、今まで見たこともないほどに強く、熱を帯びている。

「ひろ、と……あの」

「俺のこと好きって言ったよな?」

「……そうだけど」

「お前が俺のことを好きならもう抑えたくない」

「……んっ」

 キスが熱い。広斗の手と唇が体中に触れていく。体が熱くて、もどかしくて、苦しい。

「ひろと……っあ……」

「……ゆり」

 耳元で、熱い吐息と共に名前を呼ばれた。さっき「恥ずかしい」と拒んだくせに。余裕をなくしたように、すがるように私の名前を呼ぶ。その事実に、身体の奥が甘くしびれた。

「ゆり」

 また名前を呼んだ。そんなことを考えていると、広斗の熱が一気に体を突き抜ける。

「ぁっ……あぁ……っ」

 体の中が満たされていく。彼が私の一部になる。広斗の動きに合わせて、世界が揺れる。

 どんどん激しくなるそれに、私はついていくことができずに、声も出せないまま。部屋には、二人の息遣いだけが響く。

「ひろとっ、もう無理……」

「まだ。……今まで、待たせすぎだ」

「……ほんとにもう、ぁっ」

 もう一回。もう一回。それはキスと同じように何度も続く。キスよりももっと深く。広斗に何度も求められて、私は意識を手放してしまった。
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