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3章 蜜月
19話 甘い朝 2
「……なんですか?」
「何、今の会話。ドキドキするからやめてよ! 仕事が手につかないじゃん!」
「別に、勝手に仕事してもらって大丈夫です」
「またお泊まり!? ねぇ! 朝飯の会話とか! ちょっと! しかも雰囲気違うし……何かあった?」
何かあったかという先輩の言葉に、動きが止まる。答えられず、しばらく動けずにいると、隣で広斗がパソコンのキーボードを突然打ち鳴らした。驚いて画面を覗き込むと、『ファ雨いwぱふぁう』という謎の文字列が並んでいる。
「矢野、動揺しすぎ。耳赤いし!」
広斗の頬が一気に赤く染まるから、なんだか私も恥ずかしくなって頬に熱が集中する。先輩に気付かれないように、パソコンの影に隠れてカタカタと音を立てて、キーボードを打つ振り。
「なに、その反応! 広斗くん可愛いんですけど!」
「俺は別に!」
「うらやましい! 俺も恋した~い!」
先輩の歓声のような声に、周りからは笑いが零れた。広斗は必死で否定しようとしているけれど、そんな広斗を全く気にしていない先輩が更に話を続ける。
「何かあったのかぁ。あったんだろうなぁ」
「だから」
「聞きたい! 聞きたいけど! 俺、大人だしな。まぁ、幸せになってくれるなら安心だよ、お兄さんは。君たち中学生カップルを見守ってきてよかったなぁ。やっと進展したのか……感慨深いなぁ」
「……お兄さんじゃなくて、おじさんでしょ」
あ、広斗反撃。
「はぁ!? 十歳しか変わらないだろ!」
「じゅーぶんです」
「お前! 矢野オ!」
寝不足のテンションの高さか、広斗も朝からよく喋る。朝はいつも不機嫌で、必要最低限の会話しかしないのに珍しいこともあるものだ。今日は仕事中にわからないところを聞いても、しょうがねえなと悪態をつきつつも意地悪せずに教えてくれる。でも、教えてもらっている間に今度は私の居心地が悪くなる。
私を見る広斗の目が優しい気がして、恥ずかしくて目を合わせることができない。広斗の眼差しに耐えられなくて、慌てて目線を逸らして俯いた私の頬に、広斗の指の背が触れる。撫でるようにして優しく動かされて、更に心臓の音が大きくなっていく。
「どうした? 体調悪い?」
「わっ悪くない」
不覚にも上擦った声が出た。
「……変なやつ。でも目の下のクマすごいな」
「そう、かな?」
「……昨日、結局ほとんど寝かせてねぇもんな。悪かった」
瞬間、私の思考が停止した。先輩が飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる音が聞こえる。
「ちょっ……ひろ、と!?」
「ん?」
広斗の親指が目元を辿る。その言葉も、その指も一体なにを考えているの。やめてよと声にならない心の叫びをあげながら、一人で視線を彷徨わせて慌ててしまう。
「だ、大丈夫です!」
広斗の手から逃げるようにして顔を逸らしたけれど、思わず敬語になってしまった自分が更に恥ずかしい。
「何、今の会話。ドキドキするからやめてよ! 仕事が手につかないじゃん!」
「別に、勝手に仕事してもらって大丈夫です」
「またお泊まり!? ねぇ! 朝飯の会話とか! ちょっと! しかも雰囲気違うし……何かあった?」
何かあったかという先輩の言葉に、動きが止まる。答えられず、しばらく動けずにいると、隣で広斗がパソコンのキーボードを突然打ち鳴らした。驚いて画面を覗き込むと、『ファ雨いwぱふぁう』という謎の文字列が並んでいる。
「矢野、動揺しすぎ。耳赤いし!」
広斗の頬が一気に赤く染まるから、なんだか私も恥ずかしくなって頬に熱が集中する。先輩に気付かれないように、パソコンの影に隠れてカタカタと音を立てて、キーボードを打つ振り。
「なに、その反応! 広斗くん可愛いんですけど!」
「俺は別に!」
「うらやましい! 俺も恋した~い!」
先輩の歓声のような声に、周りからは笑いが零れた。広斗は必死で否定しようとしているけれど、そんな広斗を全く気にしていない先輩が更に話を続ける。
「何かあったのかぁ。あったんだろうなぁ」
「だから」
「聞きたい! 聞きたいけど! 俺、大人だしな。まぁ、幸せになってくれるなら安心だよ、お兄さんは。君たち中学生カップルを見守ってきてよかったなぁ。やっと進展したのか……感慨深いなぁ」
「……お兄さんじゃなくて、おじさんでしょ」
あ、広斗反撃。
「はぁ!? 十歳しか変わらないだろ!」
「じゅーぶんです」
「お前! 矢野オ!」
寝不足のテンションの高さか、広斗も朝からよく喋る。朝はいつも不機嫌で、必要最低限の会話しかしないのに珍しいこともあるものだ。今日は仕事中にわからないところを聞いても、しょうがねえなと悪態をつきつつも意地悪せずに教えてくれる。でも、教えてもらっている間に今度は私の居心地が悪くなる。
私を見る広斗の目が優しい気がして、恥ずかしくて目を合わせることができない。広斗の眼差しに耐えられなくて、慌てて目線を逸らして俯いた私の頬に、広斗の指の背が触れる。撫でるようにして優しく動かされて、更に心臓の音が大きくなっていく。
「どうした? 体調悪い?」
「わっ悪くない」
不覚にも上擦った声が出た。
「……変なやつ。でも目の下のクマすごいな」
「そう、かな?」
「……昨日、結局ほとんど寝かせてねぇもんな。悪かった」
瞬間、私の思考が停止した。先輩が飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになる音が聞こえる。
「ちょっ……ひろ、と!?」
「ん?」
広斗の親指が目元を辿る。その言葉も、その指も一体なにを考えているの。やめてよと声にならない心の叫びをあげながら、一人で視線を彷徨わせて慌ててしまう。
「だ、大丈夫です!」
広斗の手から逃げるようにして顔を逸らしたけれど、思わず敬語になってしまった自分が更に恥ずかしい。
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