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3章 蜜月
23話 二人の約束 3
「すみません! 勝手にお邪魔してしまって。私、広斗くんの同期で、草下ゆりと申します」
「あ……会社の?」
「はい、会社の同期です。いつもお世話になっております。すみません、こんなお時間に」
「いえ、ごめんなさいね、私こそ。広斗の洗濯物をと思って」
「……いいから、出てけ」
「広斗!」
広斗の言い方に驚いて、思わず大きな声を出してしまう。
「わかった、明日出しておいてね」
「あぁ」
「ごめんなさいね、草下さんだったかしら? 今日は泊まるの?」
「あ、いえ、あ、や……はい。勝手にすみません」
「いいから」
気まずさから謝るけれど、間髪入れずに広斗の言葉が被せられた。広斗のお母様は一瞬寂し気な表情をした気がしたけれど、すぐに整った笑顔を向ける。
「明日の朝食ご一緒にいかがかしら?」
「あ、えっと」
広斗にどうするか問うように視線を投げたのに、広斗は私と視線を合わせるでもなく、お母様を見るでもなく、一点を見つめている。
「いらない。いつもないだろ。もういいから」
「……わかったわ。草下さん、またいらしてね」
「本当に勝手に突然すみませんでした……」
「いいのよ、本当に私こそごめんなさいね。じゃあ広斗……」
お母様は広斗を見るけど、広斗はテーブルをじっと見たまま何も言わない。
「おやすみなさい」
「はい……おやすみなさい」
そのまま、ドアが静かに閉まった。寂しげな背中がドアの向こうに消えていく。
あれで良かったのだろうか。母親にあんな顔をさせてしまって良かったのだろうか。
私の家なんて、家族みんながワーカホリックで放任主義。でも、仲が悪いわけじゃない。ただ、家族にあまり関心がないだけ。それもどうかと思うけれど、でも、こんな関係ではない。
「広斗、あれでよかったの?」
「今日はまだ話した方」
「え、あれで?」
「あぁ。あんなに話してるとこ久しぶりに見た」
自分の母親なのに、「見た」と表現する広斗に一瞬言葉が詰まる。
「それにしても何でお母様はこっちの部屋にいらしたの? 何も今日じゃなくても……同期でいるときだったら良かったのに。なんで私一人のときに……」
「静かだったから、俺が一人か、誰もいないかと思ったんだろ。それにしても鍵かけとけばよかった。忘れてた」
「鍵……」
「でも、普通に話してるところでよかったな」
「そ、そういう問題じゃないよ。こんな真夜中にお会いするなんて。ありえない。もうヤダ」
何度思い返してみても、最悪の初対面。きちんと挨拶をするわけでもなく、真夜中に息子の部屋に勝手にいた女。
(どんだけよ、私!)
「あ……会社の?」
「はい、会社の同期です。いつもお世話になっております。すみません、こんなお時間に」
「いえ、ごめんなさいね、私こそ。広斗の洗濯物をと思って」
「……いいから、出てけ」
「広斗!」
広斗の言い方に驚いて、思わず大きな声を出してしまう。
「わかった、明日出しておいてね」
「あぁ」
「ごめんなさいね、草下さんだったかしら? 今日は泊まるの?」
「あ、いえ、あ、や……はい。勝手にすみません」
「いいから」
気まずさから謝るけれど、間髪入れずに広斗の言葉が被せられた。広斗のお母様は一瞬寂し気な表情をした気がしたけれど、すぐに整った笑顔を向ける。
「明日の朝食ご一緒にいかがかしら?」
「あ、えっと」
広斗にどうするか問うように視線を投げたのに、広斗は私と視線を合わせるでもなく、お母様を見るでもなく、一点を見つめている。
「いらない。いつもないだろ。もういいから」
「……わかったわ。草下さん、またいらしてね」
「本当に勝手に突然すみませんでした……」
「いいのよ、本当に私こそごめんなさいね。じゃあ広斗……」
お母様は広斗を見るけど、広斗はテーブルをじっと見たまま何も言わない。
「おやすみなさい」
「はい……おやすみなさい」
そのまま、ドアが静かに閉まった。寂しげな背中がドアの向こうに消えていく。
あれで良かったのだろうか。母親にあんな顔をさせてしまって良かったのだろうか。
私の家なんて、家族みんながワーカホリックで放任主義。でも、仲が悪いわけじゃない。ただ、家族にあまり関心がないだけ。それもどうかと思うけれど、でも、こんな関係ではない。
「広斗、あれでよかったの?」
「今日はまだ話した方」
「え、あれで?」
「あぁ。あんなに話してるとこ久しぶりに見た」
自分の母親なのに、「見た」と表現する広斗に一瞬言葉が詰まる。
「それにしても何でお母様はこっちの部屋にいらしたの? 何も今日じゃなくても……同期でいるときだったら良かったのに。なんで私一人のときに……」
「静かだったから、俺が一人か、誰もいないかと思ったんだろ。それにしても鍵かけとけばよかった。忘れてた」
「鍵……」
「でも、普通に話してるところでよかったな」
「そ、そういう問題じゃないよ。こんな真夜中にお会いするなんて。ありえない。もうヤダ」
何度思い返してみても、最悪の初対面。きちんと挨拶をするわけでもなく、真夜中に息子の部屋に勝手にいた女。
(どんだけよ、私!)
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