社内恋愛ファースト・シーズン

アリスの鏡

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4章 二人の男、大人の男

26話 プロジェクト決戦 2



 時刻は四時半。今までで一番早い出勤時間。出発連絡のないスタッフに電話を掛けて起こし、アルバイトスタッフが来ないエリアに緊急でスタッフを手配する。戦場のような忙しさに、私は仕事に没頭していく。

「千葉、Dエリアの報告が出てないぞ!」

 香取さんが私の傍に駆け寄ってくると同時に、近くのホワイトボードに張り付けてあった地図のエリアを指さした。

「Dエリアは大丈夫です。把握してます。時間が押してるので、次のタイミングで二回分一緒に報告してもらいます。先程、関東エリアの統轄リーダーに報告済みです」

「関東エリアの? そっか、悪い。ごめん」

 どうやら香取さんまで報告がいっていなかったらしい。香取さんは心配そうに、東京チームのデスクの傍にいる関東のリーダーに視線を向けた。

「いえ。関東のリーダー大丈夫ですか?」

「いや、東京でトラブったらしくて、かかりきりになってるな」

 東京担当の広斗を見ると、関東のリーダーと深刻そうに話している。そこに香取さんが駆け寄り、二言、三言話したかと思うと、私の方に戻ってきた。

「ゆりちゃん、悪い。関東のリーダーのサポートに入ってくれる? 東京のトラブルが思ったより大きいから、リーダーには解決まで専念してもらう。できる? 俺もなるべく関東のサポートに入るから」

「え……はい! やります!」

「突然で悪いけど、頼むよ。全国でトラブルは起きてないし、関東がコケるのが一番まずい。何かあったらすぐに俺に言って」

「わかりました。ちょっと関東のリーダーのところに行って、他の県の状況だけ把握してきます」

「よろしく。基本的に判断はゆりちゃんに任せるから」

「はい!」

 トラブルに対応している関東のリーダーの代打。突然だけど、やるしかない。県の責任者がいなくても回るのは、私が担当する千葉県だけ。私は自分が担当する千葉のチームに顔を向けた。

「あの、お話、聞こえていたと思うんですけど」

「大丈夫。ゆり行ってこい。俺たちでなんとかするよ!」

「そうよ、ゆりちゃん。うちは順調だし、何かあったら、すぐにゆりちゃんに報告するわ」

 説明しようとした私の言葉を遮って、スタッフたちが話し出す。一人のスタッフが立ち上がり、私が持っていた管理者用の確認ファイルを取り上げた。

「お前は関東のリーダーのとこ行って来い」

 誰一人として不安そうな顔をする人がいないことに笑ってしまう。

「ありがとうございます! 行ってきます。わかるものはどんどん判断してください。責任は私が取りますので。あとは……」

「いいから! ほら、行ってこいって。迷ったら、必ず相談するから。関東をまとめてこいよ」

「まとめるって……あは! 頑張ります!」

 うちのチームは大丈夫。準備の時から責任者の仕事も伝えてある。普通のアルバイトスタッフなら、無理だと言うだろう仕事も彼らはなんなくやってしまうし、責任を持つことも恐れない。

 東京チームのところにいる関東のリーダーの元に行き、他のエリアの現状を把握する。

「草下さん、よろしく。思ったより、東京のトラブルがヤバいんだ。埼玉と茨城でも確か小さいトラブルがあったはずなんだけど。ごめん、そのあと報告受けてないな」

「わかりました、埼玉と茨城ですね。他は大丈夫ですか?」

「他はたぶん……神奈川がちょっと遅れぎみかな。でも今はわからないな」

「最後の報告はどれくらい前ですか?」

「一時間くらい前だと」

 一時間という言葉を聞いて、一気に気が引き締まる。トラブルが解決していなかったら、大きくなっている可能性がある。「関東がこけるのが一番まずい」と香取さんが言っていた。香取さんのためにも、クライアントのためにも、関東でこれ以上トラブルを発生させるわけにはいかない。
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