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5章 混沌の交差点
33話 届かない 3
しばらくすると、浩ちゃんと陽子が戻り私は少しホッとする。研修がどうかとか、プロジェクトがどうだったかとか、そんなたわいもない話をしている間に心が落ち着いていく。
彼女がトイレに立ったタイミングで広斗が私の隣に移動してきた。私は曖昧にしか笑えなかったけど、広斗は何も気付いていないみたい。
「まずいわ、ちょっと酔ってきた」
「大丈夫?」
「矢野が酔うなんて、珍しいじゃん」
「さっきまで散々飲まされたからな。ちょっと休憩。お前大丈夫?」
「私は、大丈夫だよ」
広斗が心配そうに私を見てくるから、どうすればいいかわからなくて、また少し微笑む。そのまま少し話していると、陽子が私の後ろに向かって声をかけた。
「南ちゃん、そんなところに立ってないでこっち座りなよ」
陽子は私と陽子の間をポンポンと叩く。陽子の目線を追いかけて後ろを振り向くと、私と広斗の後ろに、南ちゃんが柱にもたれるようにして立っていた。
「南ちゃん、大丈夫? 酔っちゃった? 座らない?」
「うん……」
「大丈夫? 具合わるく……」
「大丈夫。座るから」
そう言って彼女は、私と広斗の間に座ってしまった。言葉が何も出てこなくて。普通に話さなきゃって思うのに。普通にしなくちゃってわかっているのに。みんなが息を呑むようにして、こちらを見ているのがわかる。
(何か、言わなきゃ。何か……普通に)
そうしないと、みんなが困っている。でも、こんなときの「普通」が何かなんて頭が答えを出してくれなくて、自分の喉が鳴る音だけが頭の中に響いた気がした。
「……あ、と、私トイレ行ってくる」
なるべく明るい声で言って、立ち上がる。その場を去る下手な言い訳だけど、もうそれしか思い浮かばなくて。だって、あまりにも苦しかったから。広斗の隣にいられないことも、南ちゃんの強い想いをぶつけられたことも。
その後も、広斗と私が隣り合う度に南ちゃんは、私たちの間に座る。もう、こんなのどうしていいかわからない。こんな争うみたいなこと、したくない。胸に渦巻く不安も知らないふりをして、私はいつもどおり笑い、広斗と距離を取り始めた。
でも、気になって二人を見てみれば、南ちゃんが広斗の手を掴んだり、腕を組んだりするようにして甘えていた。
胸が痛い。そう、胸が痛いという言葉がぴったり当てはまるように、心臓が潰されそうだ。どうして、こんな光景を見なきゃいけないんだろう。ここに居たくない。
それでも、みんなの前で途中で帰るとは言えずに、なんでもない顔をしてお酒を飲んだ。
彼女がトイレに立ったタイミングで広斗が私の隣に移動してきた。私は曖昧にしか笑えなかったけど、広斗は何も気付いていないみたい。
「まずいわ、ちょっと酔ってきた」
「大丈夫?」
「矢野が酔うなんて、珍しいじゃん」
「さっきまで散々飲まされたからな。ちょっと休憩。お前大丈夫?」
「私は、大丈夫だよ」
広斗が心配そうに私を見てくるから、どうすればいいかわからなくて、また少し微笑む。そのまま少し話していると、陽子が私の後ろに向かって声をかけた。
「南ちゃん、そんなところに立ってないでこっち座りなよ」
陽子は私と陽子の間をポンポンと叩く。陽子の目線を追いかけて後ろを振り向くと、私と広斗の後ろに、南ちゃんが柱にもたれるようにして立っていた。
「南ちゃん、大丈夫? 酔っちゃった? 座らない?」
「うん……」
「大丈夫? 具合わるく……」
「大丈夫。座るから」
そう言って彼女は、私と広斗の間に座ってしまった。言葉が何も出てこなくて。普通に話さなきゃって思うのに。普通にしなくちゃってわかっているのに。みんなが息を呑むようにして、こちらを見ているのがわかる。
(何か、言わなきゃ。何か……普通に)
そうしないと、みんなが困っている。でも、こんなときの「普通」が何かなんて頭が答えを出してくれなくて、自分の喉が鳴る音だけが頭の中に響いた気がした。
「……あ、と、私トイレ行ってくる」
なるべく明るい声で言って、立ち上がる。その場を去る下手な言い訳だけど、もうそれしか思い浮かばなくて。だって、あまりにも苦しかったから。広斗の隣にいられないことも、南ちゃんの強い想いをぶつけられたことも。
その後も、広斗と私が隣り合う度に南ちゃんは、私たちの間に座る。もう、こんなのどうしていいかわからない。こんな争うみたいなこと、したくない。胸に渦巻く不安も知らないふりをして、私はいつもどおり笑い、広斗と距離を取り始めた。
でも、気になって二人を見てみれば、南ちゃんが広斗の手を掴んだり、腕を組んだりするようにして甘えていた。
胸が痛い。そう、胸が痛いという言葉がぴったり当てはまるように、心臓が潰されそうだ。どうして、こんな光景を見なきゃいけないんだろう。ここに居たくない。
それでも、みんなの前で途中で帰るとは言えずに、なんでもない顔をしてお酒を飲んだ。
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