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6章 慈しみ
37話 相違 2
同期の間では俺とあいつが一緒にいるのは当たり前で、自然と二人になることが多いけれど、南野はあまり飲み会や集まりに参加できていなかったから、他の同期に言うのとはまた違った感じがする。自分の顔が熱を持った気がして、慌ててビールを喉に流し込んで誤魔化した。
「広斗、私もそれ一緒に行ってもいい? ゆりと仲良くしたいし」
「え、あ、いや」
南野からの提案はあまりにも唐突で、言葉が続かなかった。明日は、あいつとバイクでと話していたし、三人となると電車になる。そもそも謝るために行くはず。バイクのヘルメットもそのために買ったのだ。さすがに南野と一緒にということはできないだろ。
「明日はさ」
「ダメ? 嫌?」
「え、嫌ではないけ——」
「よかった!」
「あ、っと……」
嫌ではないけど明日は無理だと言おうとしたのに、楽しそうに「水族館は久しぶり」と話しだすその笑顔になにも言えなくなってしまう。
「私ね、ゆりと仲良くなりたいの。広斗と仲が良いゆりと仲良くなれれば、みんなの輪に入れると思うから」
あいつと仲良くしたいと言われたら、それを潰すわけにもいかない。同期と仲良くなれるようにと相談に乗っていたのは俺だ。
「俺、ちょっとトイレ」
さすがに三人ってなったらあいつ怒るかな。でも南野が仲良くなりたいって……あーもう。なんでこうなるんだ。まぁ、あいつとはいつでも二人で行けるか。
毎日のように会っているし、たった一日ならいいのかもしれない。また次の休みにでも二人で別のところに出かける、とか。
考えがまとまらないまま戻ると、南野がすごいペースで酒を飲んでいた。さっきからペースが早いとは思ったけれど、さすがにこの速さは危ない。
「南野、完全に飲みすぎだろ」
「いいの、今日は飲みたくて来たんだから」
「帰れなくなるだろ。もうやめとけって」
「いいの! ほら、広斗も飲んで。私が強いって知ってるでしょ?」
南野の強引さに押されて、渋々俺はまた飲み始めた。確かに南野は酒が強いけれど、明らかに飲みすぎじゃないだろうか。何本も缶が空けられていく。しばらく会社の話をしながら、ふと時計を見ると二十三時を指していた。
「終電何時? そろそろじゃねえの?」
南野はベッドに寄りかかったまま、こちらを見ようともしない。もそもそと動いたかと思うと、呟くように言葉を発した。
「広斗、今日泊めて。帰れない……」
「は? だから言っただろ」
「だって……もう無理。眠い」
南野はおもむろにベッドに入り、そのまま目を閉じる。
「南野! 寝るなって!」
何度か揺さぶって声を掛けてみても、起きる気配はない。しばらくしたら起きるかと思ったけど、その後も南野は眠ったままで、深夜一時を回り電車も無くなった。
これをあいつに説明したら怒るだろうか。いや、何もしてないんだから、堂々としてればいいか。変に隠すほうが怪しまれる。正直に「飲みすぎて潰れたから泊めた」と言えば、あいつなら「しょうがないなぁ」と笑ってくれるはずだ。俺たちは、そんなことで揺らぐ関係じゃない。
そう信じていた俺は、クローゼットから毛布を引っ張り出し、ベッドから一番遠い床に横になった。南野が寝言のように小さく笑った気がしたけど、俺は気にせず目を閉じた。
「広斗、私もそれ一緒に行ってもいい? ゆりと仲良くしたいし」
「え、あ、いや」
南野からの提案はあまりにも唐突で、言葉が続かなかった。明日は、あいつとバイクでと話していたし、三人となると電車になる。そもそも謝るために行くはず。バイクのヘルメットもそのために買ったのだ。さすがに南野と一緒にということはできないだろ。
「明日はさ」
「ダメ? 嫌?」
「え、嫌ではないけ——」
「よかった!」
「あ、っと……」
嫌ではないけど明日は無理だと言おうとしたのに、楽しそうに「水族館は久しぶり」と話しだすその笑顔になにも言えなくなってしまう。
「私ね、ゆりと仲良くなりたいの。広斗と仲が良いゆりと仲良くなれれば、みんなの輪に入れると思うから」
あいつと仲良くしたいと言われたら、それを潰すわけにもいかない。同期と仲良くなれるようにと相談に乗っていたのは俺だ。
「俺、ちょっとトイレ」
さすがに三人ってなったらあいつ怒るかな。でも南野が仲良くなりたいって……あーもう。なんでこうなるんだ。まぁ、あいつとはいつでも二人で行けるか。
毎日のように会っているし、たった一日ならいいのかもしれない。また次の休みにでも二人で別のところに出かける、とか。
考えがまとまらないまま戻ると、南野がすごいペースで酒を飲んでいた。さっきからペースが早いとは思ったけれど、さすがにこの速さは危ない。
「南野、完全に飲みすぎだろ」
「いいの、今日は飲みたくて来たんだから」
「帰れなくなるだろ。もうやめとけって」
「いいの! ほら、広斗も飲んで。私が強いって知ってるでしょ?」
南野の強引さに押されて、渋々俺はまた飲み始めた。確かに南野は酒が強いけれど、明らかに飲みすぎじゃないだろうか。何本も缶が空けられていく。しばらく会社の話をしながら、ふと時計を見ると二十三時を指していた。
「終電何時? そろそろじゃねえの?」
南野はベッドに寄りかかったまま、こちらを見ようともしない。もそもそと動いたかと思うと、呟くように言葉を発した。
「広斗、今日泊めて。帰れない……」
「は? だから言っただろ」
「だって……もう無理。眠い」
南野はおもむろにベッドに入り、そのまま目を閉じる。
「南野! 寝るなって!」
何度か揺さぶって声を掛けてみても、起きる気配はない。しばらくしたら起きるかと思ったけど、その後も南野は眠ったままで、深夜一時を回り電車も無くなった。
これをあいつに説明したら怒るだろうか。いや、何もしてないんだから、堂々としてればいいか。変に隠すほうが怪しまれる。正直に「飲みすぎて潰れたから泊めた」と言えば、あいつなら「しょうがないなぁ」と笑ってくれるはずだ。俺たちは、そんなことで揺らぐ関係じゃない。
そう信じていた俺は、クローゼットから毛布を引っ張り出し、ベッドから一番遠い床に横になった。南野が寝言のように小さく笑った気がしたけど、俺は気にせず目を閉じた。
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