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7章 それぞれの選択
46話 道 3
「それで、香取さんが私を探してくれて、見つけてくれて……本当に嬉しかったんです。本当に、安心しました」
「うん」
「私、いつも香取さんに頼って、甘えてばっかりで。香取さんが優しくて、何も聞かないのをいいことに、それを……利用してたんです」
「そんなことないよ。俺が好きでしたんだから」
「違います。私が頼ったから……香取さんなら受け止めてくれるって頭のどこかで考えてたんです。香取さんのこと、いっぱい傷付けたと思います」
彼は黙って首を横に振る。
「私、広斗のことを好きで……今も……正直に言うと、今も広斗のことを想ってる自分がいます」
「うん」
「でも……広斗のことは……忘れるって決めて、広斗にも伝えました」
「矢野くんに?」
「はい。この前、広斗と話して、今までありがとうって。ちゃんと」
「そう、なんだ」
「それで……都合のいいことだってわかってます。広斗に振られて今更……でも、これからは」
言おうとしていることを考えると、あまりに都合が良すぎて、言葉を続けられなくなった。でも、言わないと。伝えないと。ずるくても、呆れられても、それでも香取さんにちゃんと伝えたい。
「これからは、香取さんと一緒にいたい。傍にいさせて欲しいんです。こんな私でも、いいですか」
「本当に……」
香取さんの言葉が溜息のように、はらりとその唇から零れ落ちた。一瞬の静寂がその場を包む。
「本当に、ゆりちゃんは俺の前で泣いてばっかりだね。諦めようと思う度に、きみが泣いてて、どうしても放っておけなくて……引き寄せられる」
香取さんの大きな瞳に見つめられる中、私はなにも言えなくて、ただそれを真っ直ぐ見つめ返した。
「どんなに欲しくても手に入らなくて……それでも傍にいたかった。こんな風に振り回されるのは正直、初めて」
大きな目が柔らかく細められていく。
「俺の傍にいてくれるんだよね? 今は矢野くんのことを想っててもいいよ」
「あっ、私香取さんのこと好きになれるように」
言いかけたその言葉は、香取さんに手で制される。
「ゆりちゃん、俺が努力する。好きになってもらえるように。大切にする。甘やかすし。だから、傍にいてくれる?」
香取さんの手が頬を撫でる。どうしてこんなに優しいんだろう。絶対にモテるはずなのに、どうして私をこんなに思ってくれるんだろう。不思議な人。
頬を撫でていた手が止まったら、今度は香取さんの顔が近づいてきた。目を閉じれば、やっぱり唇が触れて、心臓がトクンと音を立てた。そして、そのまま力強く抱き締められる。やっぱり、彼の腕の中は安心する。その胸に顔を埋めて、息を吐こうとしたら、彼も私と同じように大きく息を吐いた。
「俺、途中まで振られるんだと思ってた」
「え?」
「良かった……俺、今すごいホッとしてる。自分でも情けないけど」
「そんな、私こそ呆れられちゃうかと……」
「俺が? ゆりちゃんを?」
彼の言葉にゆっくり頷く。すると、彼は抱き締めていた腕の力を緩めて私を見つめながら、その手を再び私の頬に滑らせる。恥ずかしくてくすぐったいけれど、そのまま触れていてほしい不思議な気持ち。その恥ずかしさを誤魔化すように彼のワイシャツを掴み、口を開く。
「だって、すごい勝手なこと言ってて。自分でも最低だと思います」
「なんで? 俺と一緒にいたいって思ってくれたんでしょ?」
「それはそうなんですけど、自分でもズルイなって」
「狡くなんかない。俺は嬉しいよ。ゆりちゃんが、俺と一緒にいたいって思ってくれて、それを伝えてくれたんだから、嬉しくないはずがない」
「本当に傍にいてもいいですか?」
彼は一瞬目を見開いて、すぐにまた優しい顔で笑う。
「傍にいてほしいのは俺の方だよ」
「うん」
「私、いつも香取さんに頼って、甘えてばっかりで。香取さんが優しくて、何も聞かないのをいいことに、それを……利用してたんです」
「そんなことないよ。俺が好きでしたんだから」
「違います。私が頼ったから……香取さんなら受け止めてくれるって頭のどこかで考えてたんです。香取さんのこと、いっぱい傷付けたと思います」
彼は黙って首を横に振る。
「私、広斗のことを好きで……今も……正直に言うと、今も広斗のことを想ってる自分がいます」
「うん」
「でも……広斗のことは……忘れるって決めて、広斗にも伝えました」
「矢野くんに?」
「はい。この前、広斗と話して、今までありがとうって。ちゃんと」
「そう、なんだ」
「それで……都合のいいことだってわかってます。広斗に振られて今更……でも、これからは」
言おうとしていることを考えると、あまりに都合が良すぎて、言葉を続けられなくなった。でも、言わないと。伝えないと。ずるくても、呆れられても、それでも香取さんにちゃんと伝えたい。
「これからは、香取さんと一緒にいたい。傍にいさせて欲しいんです。こんな私でも、いいですか」
「本当に……」
香取さんの言葉が溜息のように、はらりとその唇から零れ落ちた。一瞬の静寂がその場を包む。
「本当に、ゆりちゃんは俺の前で泣いてばっかりだね。諦めようと思う度に、きみが泣いてて、どうしても放っておけなくて……引き寄せられる」
香取さんの大きな瞳に見つめられる中、私はなにも言えなくて、ただそれを真っ直ぐ見つめ返した。
「どんなに欲しくても手に入らなくて……それでも傍にいたかった。こんな風に振り回されるのは正直、初めて」
大きな目が柔らかく細められていく。
「俺の傍にいてくれるんだよね? 今は矢野くんのことを想っててもいいよ」
「あっ、私香取さんのこと好きになれるように」
言いかけたその言葉は、香取さんに手で制される。
「ゆりちゃん、俺が努力する。好きになってもらえるように。大切にする。甘やかすし。だから、傍にいてくれる?」
香取さんの手が頬を撫でる。どうしてこんなに優しいんだろう。絶対にモテるはずなのに、どうして私をこんなに思ってくれるんだろう。不思議な人。
頬を撫でていた手が止まったら、今度は香取さんの顔が近づいてきた。目を閉じれば、やっぱり唇が触れて、心臓がトクンと音を立てた。そして、そのまま力強く抱き締められる。やっぱり、彼の腕の中は安心する。その胸に顔を埋めて、息を吐こうとしたら、彼も私と同じように大きく息を吐いた。
「俺、途中まで振られるんだと思ってた」
「え?」
「良かった……俺、今すごいホッとしてる。自分でも情けないけど」
「そんな、私こそ呆れられちゃうかと……」
「俺が? ゆりちゃんを?」
彼の言葉にゆっくり頷く。すると、彼は抱き締めていた腕の力を緩めて私を見つめながら、その手を再び私の頬に滑らせる。恥ずかしくてくすぐったいけれど、そのまま触れていてほしい不思議な気持ち。その恥ずかしさを誤魔化すように彼のワイシャツを掴み、口を開く。
「だって、すごい勝手なこと言ってて。自分でも最低だと思います」
「なんで? 俺と一緒にいたいって思ってくれたんでしょ?」
「それはそうなんですけど、自分でもズルイなって」
「狡くなんかない。俺は嬉しいよ。ゆりちゃんが、俺と一緒にいたいって思ってくれて、それを伝えてくれたんだから、嬉しくないはずがない」
「本当に傍にいてもいいですか?」
彼は一瞬目を見開いて、すぐにまた優しい顔で笑う。
「傍にいてほしいのは俺の方だよ」
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