社内恋愛ファースト・シーズン

アリスの鏡

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7章 それぞれの選択

47話 大人の時間 2




「……ゆりちゃん、大丈夫?」

 最終的にベッドに連れていかれて、またそこで何度も声をあげさせられた。確かに最後まではしなかったけれど、その意味があったのかはわからない。それほどに、彼は私の体を確認するように何度も何度も触れて、その先の高みに連れて行った。

 こんなの、知らない。こんなの、あるなんて聞いていない。こんなことがあるなら、教えておいてほしかった。初めは怖かったのに、その次はもう求め始めて。途中からまた怖くなる。私が恐怖で泣きそうになったから途中でやめてくれたけれど、香取さんはたぶんまだまだ続けようとしていた。

 私はその気だるさに、ベッドに沈みこむ。その横に彼は寄り添って、私の頭を撫でる。

「一応……加減したつもりなんだけど」

「かげん……」

(加減ってなに? 加減ってどういうこと?)

「ゆりちゃん、やっぱり感じやすいね」

「そ、そういうことを言わないでくださいっ」

「ん?」

「恥ずかしいです」

「でも、本当のことだよ」

「本当のことでも言わなくていいんです!」

「最後までしたら、ゆりちゃんもたなそうだね。楽しみだな」

 そう言って、わざと音を立ててキスをする彼は、完全に私を弄んでいる。

「もう!」

 あまり動くことができない私は、背中を向けて小さな抵抗を試みる。でも、彼は全く悪びれない。背中を向けて少し距離を取った私を、後ろから片手で軽く抱き寄せる。

「ごめん、ごめん」

 そう言って笑って、私の頭にキスをする。

「可愛くて、ついイジメちゃった」

 抱き寄せた手でそのまま私の手を握り、その腕の中に私を抱え込む。

「ね、許してくれる?」

「もうしませんか?」

「……うん」

「今、間があった!」

 彼が、おかしそうに笑っている。どうして、こうも余裕なんだろう。本当にずるい。

 頬を膨らませて顔をシーツに押し付けていたら、「そんなに怒んないでよ」と言った彼が突然笑うのを止めて、後ろから覆い被さるようにして私の耳に唇を寄せる。

「俺にいじめられるの、嫌?」

 吐息とともに囁かれて、私は声にならない叫び声をあげた。

「耳真っ赤。ね、言ったでしょ? ゆりちゃんは俺に勝てないって」

 キレイな顔をした悪魔が笑う。大人って怖い。

「俺が教えてあげる」

 変な宣言をされて、夜が更ける。もうやめてと恥ずかしがる私を面白がって、甘い言葉ばかりを囁いてくる。

 彼といると笑顔でいられる。彼といると穏やかで、彼といると心地いい。守られて、想われて、慈しまれて。彼の腕の中で過ごす温かさを噛み締めて、私は眠りについた。
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