9 / 13
独り立ちへ|雨の夜に飛び出す
しおりを挟む
私は高卒での就職を考えていて、それは三年の秋頃に最終決定する。わかっていた独り立ちの重大事が、いよいよ怖さを見せてきていた。
成績がよかった私に友人は華やかな未来を思い描いていたようだが、大学にはもちろん行けない。私は仕事を探さなければならなかった。しかし漠然とした世界のイメージは掴むことができず、どんな仕事が存在していて、給料はどれくらいなのか、それは生活を営むには十分なのか、そんなことをどうも理解できなかった。人生のプランと言えるものが欲しかった。たとえ明日がどうなるかわからない人生でも、方向くらいは見つけたかった。
兄はいったい、どうやって将来の姿を見つけてきたのだろう? 何度も兄のことを考えてしまった。本当なら駆けつけて無理にでも聞きたいところだったけれど、どこにいるかはまったくわからないし、知る限りでは先生にも一度も顔を見せていなかった。
先生にしても、何も教えてはくれなかった。これまでも教えて欲しいことや知りたいことについては可能な限り、助けてくれた。けれど、「やり方」は教えてくれても「何を目標とし、何を選択し、何を正解とするか」は自分で考えさせられた。自分がすることはまず自分で決めなさい、というものだった。
助けを求める相手もいないので、私は自分に多くの問いを立てるしかなかった。自分は何をしたいのか、したいだけでそれを為すことが許されるのか、思惑どおりにならなければ私は何をするのか、単につらい人生を送るだけなのではないか、私は何のために生きるのか。
海に行ったときの波音が再び響いてきて、私に広大な世界を思い出させた。
どうしようもなかった。定められた就職活動の日程に従い、規定通りに一社にだけ履歴書を送り、面接までの日を過ごした。この一社しか選べないという決まりにはひどく苦しめられた。世界は一つで、そこに流れる時間はいつも一度きりで過ぎ去っていく。人生にはいくつもの選択肢があったとしても、一つしか選べない。もしかしたら、何も手に入れられないかもしれない。私にとって、想定されるすべてがひどく重かった。言い尽くせないほどの巨大な物体が頭に乗ったようで、私はひどい重圧に苦しんだ。
それで面接の前日だった。私はどうにかなりそうなほど締め付けられた心臓を抱えて、雨が降る夜遅くに家を飛び出してしまった。
成績がよかった私に友人は華やかな未来を思い描いていたようだが、大学にはもちろん行けない。私は仕事を探さなければならなかった。しかし漠然とした世界のイメージは掴むことができず、どんな仕事が存在していて、給料はどれくらいなのか、それは生活を営むには十分なのか、そんなことをどうも理解できなかった。人生のプランと言えるものが欲しかった。たとえ明日がどうなるかわからない人生でも、方向くらいは見つけたかった。
兄はいったい、どうやって将来の姿を見つけてきたのだろう? 何度も兄のことを考えてしまった。本当なら駆けつけて無理にでも聞きたいところだったけれど、どこにいるかはまったくわからないし、知る限りでは先生にも一度も顔を見せていなかった。
先生にしても、何も教えてはくれなかった。これまでも教えて欲しいことや知りたいことについては可能な限り、助けてくれた。けれど、「やり方」は教えてくれても「何を目標とし、何を選択し、何を正解とするか」は自分で考えさせられた。自分がすることはまず自分で決めなさい、というものだった。
助けを求める相手もいないので、私は自分に多くの問いを立てるしかなかった。自分は何をしたいのか、したいだけでそれを為すことが許されるのか、思惑どおりにならなければ私は何をするのか、単につらい人生を送るだけなのではないか、私は何のために生きるのか。
海に行ったときの波音が再び響いてきて、私に広大な世界を思い出させた。
どうしようもなかった。定められた就職活動の日程に従い、規定通りに一社にだけ履歴書を送り、面接までの日を過ごした。この一社しか選べないという決まりにはひどく苦しめられた。世界は一つで、そこに流れる時間はいつも一度きりで過ぎ去っていく。人生にはいくつもの選択肢があったとしても、一つしか選べない。もしかしたら、何も手に入れられないかもしれない。私にとって、想定されるすべてがひどく重かった。言い尽くせないほどの巨大な物体が頭に乗ったようで、私はひどい重圧に苦しんだ。
それで面接の前日だった。私はどうにかなりそうなほど締め付けられた心臓を抱えて、雨が降る夜遅くに家を飛び出してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる