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3 気がついたら次の婚約者が決まっていた
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ひととおり転生とこの世の厳しさを嘆いてから、しぶしぶ父親のもとに向かう。さっきめちゃくちゃ詰られたけど、今回も死ぬほど罵倒されるんだろうなぁ……
純和風の長い廊下の途中で膝をつき、成金っぽい金ピカの襖に向かって口を開いた。
「芽衣です」
「――入れ」
すでに不機嫌そうな声に従って襖を開き、膝を動かして中に入り、襖を閉めてから深々と頭を下げる。
ここで顔を勝手に上げると、叱られる。
「――なんの役にも立たない無駄飯ぐらいだと思っていたが、本当にお前は無能だな、ブヒッ」
不機嫌きわまりない父親の声。
う……これは……シリアスなシーンなのに、ブヒッが私の腹筋を刺激する……
「所詮、畜生腹の子ですわ、アナタ。もっと早くに捨てておけばよかったのに」
次いで正妻の声。こちらも嫌悪に満ちている。
けれど、一方で正妻は私のこの状況を楽しんでいるようだ。
そうだよね、妾の子である私の婚約者が(この世界での)イケメンであることに、怒りを覚えていたもんね。
「なんだ、言い訳のひとつも言えないのか! ブヒッ。そんなだから、金成様にも捨てられるんだぞ! この妾の子が! ブヒッ」
こんなシーンでも、ブヒッは健在なのか。
やばい、笑いそう。必死でこらえているけれど、小刻みに震えてしまう。
「泣けばいいと思っているのか、この無能が!」
――ガンッ。
「――っ」
頭に何かがぶつけられて、身体が揺らぐ。
いったぁ……なにを投げつけられたんだろうと目をやると、螺鈿細工の脇息が転がっていた。こんなのぶつけられたら、そりゃ痛いわ。
笑いをこらえているのを泣いていると勘違いしたらしい。これ、実は笑っていたって知られたら、相当折檻されるな……
「これまでは曲がりなりにも佐々木家の娘として、それなりの男をあてがってやろうと思っていたが、お前には過ぎた親心だったな」
男をあてがおうとした時点で過ぎた親心だったことに気が付いてほしい。
「無能なお前のために、次の婚約者を決めてやった。――ほら」
再び頭めがけて投げつけられた釣書き。ぶつけられた拍子に開いたそこには――
ものすごいイケメンの写真があった。
彫りが深めな端整な顔立ちに、少し灰色がかった髪。鼻筋はすっととおり、その瞳は写真越しでも意思の強さを感じさせる。そのまなざしは、まるですべてを憎んでいるようで……
え、次の婚約者、こんなイケメンなの?
「うふふふ……アハハハッ、妾のアンタには似合いのブサイクよ」
正妻がこらえきれない、という感じで高笑いする。
一瞬「え、これがブサイク? 視力大丈夫?」って思ったけど……そうか、前の世界のイケメン=この世界の超絶ブサイクかぁ……
「最近、裏の世界で成り上がってきた若造だ。もともと話はあったが、さすがにこれほどのブサイクを我が佐々木家と縁づかせるのは、とためらっていた。が、お前のような無能には、ちょうどいいだろう。写真を見るのもおぞましいブサイクだが、いいか、決して嘔吐するなよ」
「アハハハッ、あんた、相手の顔を見て吐いたら承知しないわよ! その写真、持って帰って、その破滅的なご面相に慣れておくことね! うふふ、アハハハハッ!」
純和風の長い廊下の途中で膝をつき、成金っぽい金ピカの襖に向かって口を開いた。
「芽衣です」
「――入れ」
すでに不機嫌そうな声に従って襖を開き、膝を動かして中に入り、襖を閉めてから深々と頭を下げる。
ここで顔を勝手に上げると、叱られる。
「――なんの役にも立たない無駄飯ぐらいだと思っていたが、本当にお前は無能だな、ブヒッ」
不機嫌きわまりない父親の声。
う……これは……シリアスなシーンなのに、ブヒッが私の腹筋を刺激する……
「所詮、畜生腹の子ですわ、アナタ。もっと早くに捨てておけばよかったのに」
次いで正妻の声。こちらも嫌悪に満ちている。
けれど、一方で正妻は私のこの状況を楽しんでいるようだ。
そうだよね、妾の子である私の婚約者が(この世界での)イケメンであることに、怒りを覚えていたもんね。
「なんだ、言い訳のひとつも言えないのか! ブヒッ。そんなだから、金成様にも捨てられるんだぞ! この妾の子が! ブヒッ」
こんなシーンでも、ブヒッは健在なのか。
やばい、笑いそう。必死でこらえているけれど、小刻みに震えてしまう。
「泣けばいいと思っているのか、この無能が!」
――ガンッ。
「――っ」
頭に何かがぶつけられて、身体が揺らぐ。
いったぁ……なにを投げつけられたんだろうと目をやると、螺鈿細工の脇息が転がっていた。こんなのぶつけられたら、そりゃ痛いわ。
笑いをこらえているのを泣いていると勘違いしたらしい。これ、実は笑っていたって知られたら、相当折檻されるな……
「これまでは曲がりなりにも佐々木家の娘として、それなりの男をあてがってやろうと思っていたが、お前には過ぎた親心だったな」
男をあてがおうとした時点で過ぎた親心だったことに気が付いてほしい。
「無能なお前のために、次の婚約者を決めてやった。――ほら」
再び頭めがけて投げつけられた釣書き。ぶつけられた拍子に開いたそこには――
ものすごいイケメンの写真があった。
彫りが深めな端整な顔立ちに、少し灰色がかった髪。鼻筋はすっととおり、その瞳は写真越しでも意思の強さを感じさせる。そのまなざしは、まるですべてを憎んでいるようで……
え、次の婚約者、こんなイケメンなの?
「うふふふ……アハハハッ、妾のアンタには似合いのブサイクよ」
正妻がこらえきれない、という感じで高笑いする。
一瞬「え、これがブサイク? 視力大丈夫?」って思ったけど……そうか、前の世界のイケメン=この世界の超絶ブサイクかぁ……
「最近、裏の世界で成り上がってきた若造だ。もともと話はあったが、さすがにこれほどのブサイクを我が佐々木家と縁づかせるのは、とためらっていた。が、お前のような無能には、ちょうどいいだろう。写真を見るのもおぞましいブサイクだが、いいか、決して嘔吐するなよ」
「アハハハッ、あんた、相手の顔を見て吐いたら承知しないわよ! その写真、持って帰って、その破滅的なご面相に慣れておくことね! うふふ、アハハハハッ!」
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