精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

文字の大きさ
25 / 106

第025話 坊やだからさ

しおりを挟む
 ライズさんも含めてなのだが。

 やっぱり、現代日本の人間って若く見えるんだなと。

 何と女子高生のリサさんのお父さん。

 五つも年下だった。

 しかも、年子でリサさんの上と下に兄と弟がいるそうで……。

 同いか、年上だと思っててごめんなさい。

 過酷な暮らしは老けるんだなと。

 改めてしんみりしてしまった。

 と、一人しょんもりしていると、裾をくいくい。

 下を見ると、爛々と輝くつぶらな瞳の群れ。

 言わずとも伝わってくる無言の圧力。

 これだけの集団が一気に食卓に押し寄せると、大変かなと思ってお預けしてたのだけど。

 もう辛抱堪らんという、見えないしっぽがブンブンされている状態を見てしまうと。

「良いですよ。お楽しみ下さい」

『う☆た☆げ!!』

『ぱーりたぃむ!!』

『ぶれいこー!!』

 精霊さん達が、マッハの勢いで突進していく。

 でも、私を介さないと食べられないぞと思いながら付いていくのだが。

 どうも、食べるだけが楽しみじゃないみたいだ。

 祭りを楽しんでいる老若男女、それぞれに貼り付きにんまり笑顔。

 雰囲気だけでも、お腹が膨れるんだなと。

 そんな事を考えながら、目立たないように給仕。

『しんしょっかん!!』

『もりとだいちのほうせきばこやー』

『ごしょーばん!!』

 村のお姉様方渾身の料理の数々は、精霊さん達を魅了し、虜にする。

 そんな喧騒の極みの中、女性陣によってローストされていたお肉が解禁される。

 一瞬の静寂。

 そして巻き起こる、天元を突破した歓喜の叫び。

 殺到する大きな男の子に苦笑しながら、お姉様方が取り分けていく。

 と、その中で胡乱な動きをするものありける。

 お皿に乗せたお肉に野菜を綺麗にトッピング。

 そんな殊勝なタマじゃ無いだろと眺めていると、いそいそと年若き乙女の下に。

 茹で上がったトマトみたいにキラキラした頬をした男の子がそっと差し出した皿を乙女が受け取った瞬間。

 歓声が上がる。

 あぁ、これがプロポーズかと思うと、周囲でも同じような光景が。

 祭りは出会いの場かぁ……。

 青いな、青い春だな。

 しみじみしていると、そっと差し出されるお皿。

 見ると、リサさんがほいっという感じで無造作に目の前に。

 おもむろに受け取り、はくっと含んでみる。

 鳥の足の肉だろうか。

 皮つきでじっくりとローストされたのだろう。

 表面は油で揚げたようにパリパリとしながらも、歯が通った直後の肉はむちりと弾力。

 強い筋肉の歯応えを抜けた瞬間、ぶじゅっと肉汁が零れそうになるほど溢れる。

 適度に利かせた塩と、酸味と香りのハーブが鳥の臭いを打ち消し、ただただジューシーな食味だけが口の中に広がる。

 あぁ、うまい。

 しみじみとうまい。

 瞑目し、その野趣溢れるご馳走に舌鼓を打っていると。

 耳元で歓声が。

 お、また、カップル誕生かと祝福の拍手の準備をしようと目を開けると。

 周囲を取り囲まれている。

 あれっと思う間もなく、祝福の渦に巻き込まれた。

 ふむ。

 女性に男性が皿を渡すと、プロポーズ。

 ミシマ、理解した。

 男性に女性が皿を渡すと?

 周囲の状況を鑑みた上で、悪戯っぽ表情で舌を出しているリサさんの姿を加味すると。

 それもプロポーズとな?

 ミシマ、理解した……。

 謀ったなぁ!?

 リサ!!
しおりを挟む
感想 119

あなたにおすすめの小説

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...