復仇の衛士 〜魔王軍最強幹部は魔王に復讐したい〜

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第3章 セイモーと偽善者狩り

第13話 霊具

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 シダ達がカランコエの基地を出発してから3日と半日が過ぎた頃、ベルガー王率いるセイモー軍は、すでにヴァヴにある王城を落とし、ハダクト完全攻略まであと3つの州を落とせば……というところまで来ていた。

「ベルガー様。つい先ほど王城を落としたと言う報告が入りました」

「そうかですか、よくやりました。次の州へと移動してください」

 部下が、前線の少し後ろで竜馬に跨るベルガーのところまで、走って来ると、敬礼をして報告をした。するとベルガーは、落ち着いた表情で次の指示を出した。 


「承知しました。……しかし妙ですね。この国には手練れの王子が3人いると聞いていたのですが、こんなあっさりと。しかも国民達の避難がやけに迅速な気が」

 事がすんなりと行き過ぎていることに不安を抱いた部下がそう呟いたが、それでもベルガーは落ち着いていた。

「王子が居なかったのなら好都合じゃないですか? まぁいざという時は私が出ます。心配することはありません」

 自信満々に答えるベルガー。それもそのはず。ベルガーは世界に12個しかない『あの武器』の使い手なのだから。



「ベンガー様!!」

「どうかしましたか。そんなに慌てて」

 ヴァヴ攻略隊とは別部隊の兵士がすごいボロボロの状態で、ふらふらしながらベルガーのところまでやっと辿り着いた。


「敵が……奥から……2人……はぁはぁ……」


「落ち着いてください。どうしたんですか?」

 息を切らしながらも、必死に状況を説明しようとする兵士。ベルガーは優しく話しかけると、兵士も少し落ち着いたらしい。




「ハダクトはすでに占領されていました。その占領した国は…モノボルゥー王国です」

「なっ、すでに手が回っていましたか……」

 兵士の報告に、流石のベルガーも少し動揺した。それほどモノボルゥー王国とは強大な侵略国家なのだ。しかし、取り乱すことはなかった。
 兵士は報告を続けた。


「現在別動隊がほぼ全滅。敵はこちらに向かって進行中です」

「敵の数は?」



「……2人です」

「馬鹿な!」

 あまりに衝撃的な数に、ベルガーは目を見開き驚いた。そしてゆっくりと竜馬から降りると、こちらに向かって来る敵の気配を感じ取るように、別働隊のいた方を見た。




 少し時間が空き、そんなやつ全然来ないじゃないか。と思いかけたその時、砂ぼこりの奥から、2つの影がこちらに歩いて来るのが見えた。


「ったく人ん家に勝手に上がって来たと思えば、随分と散らかしてくれましたねぇ~」

「ここは我々モノボルゥー王国の占領地だ。直ちに出て行け!」

 それはシダとクリスだった。2人(+1)はあれから全速力でハダクトに向かい、前回の半分の時間でヴァヴに到着していた。国民の避難が迅速だったのはローズのおかげだ。


「お前達が我が軍の部隊を2人で潰したと言う者ですね。まさか『霊具使い』でしょうか?」

 ベルガーは、自分と同等のエクロムを放つ2人を見て、歩いて2人に近づきながらそう問うた。





『霊具』この世界に伝わる、12つの伝説の武器。

 あなたも聞いたことはないだろうか……。神の声、天使の声が聞こえる人間が存在する、と。
 現実世界でも数多くの言い伝えがあり、神の生まれ変わりなど、たくさんのものがある。
 そしてそれは、世界を変えて行く者に多く見られる。天使の言葉に従い、その通りに革命を起こせば、瞬く間に成功を収め、一躍ヒーローとなった者もいる。
 これは、この異世界でも同じだ。
 ベルガーは天使に選ばれた。辛い過去を乗り越え、世界を変えるために戦う革命家の1人だ。


 霊具とは、そんな世界すらも変えたいと願う強大なエクロムを宿す者に、同種のエクロムを宿す天使・悪魔が、『共に願いを叶えるために』貸し与えた、伝説の武器なのである。



 シダとクリスは、その問いに答える前に攻撃を開始した。


 ガキーーン!!


「どうやらお二方とも霊具使いではないようですね」

「そーゆうお前は霊具使いだろ?」

「その通りです。霊具『ファーヌイ』。よく気づきましたね?」

「そりゃそんなやばそうなもん見せられたら誰だって気づくさ」

 シダとクリスの同時攻撃を軽く受け止めたベルガーは、2人が霊具使いではないこと、自分が『翼』の霊具使いであることを示した。
 その翼は全身を覆い隠すほどに大きく、美しい白が太陽の光を浴び、光り輝いていた。
 クリスがベルガーと、会話での駆け引きをする中、シダは沈黙し、対策を練っていた。


「お二方は霊具との戦いは初めてですか?」

「初めてかな。でもまぁうちの国王も霊具使いでね。霊具使いってだけじゃ怯みはしない」

「それは残念。作戦失敗ですか」

 どうやらベルガーは、2人が霊具使いでないと分かり、霊具を見せつければ少しは心に隙ができると考えたようだが、クリスはそれを見抜いていた。



「では、初めての霊具戦と言うことで……楽しんでいってください!!」

 そう言うと、ベルガーは大きく翼を広げ、空高く飛び上がった。そして、空から鉄のような何かを降らせてきた。


 ドドドドドドォォォ……



「っぶねーな……なんだこれ?……おいおいまじかよ」

 間一髪それを避けたシダとクリス。シダは、自分たちに降り注いだ物を見、そのすごさに苦笑いをした。
 2人を降り注いだそれは、鋼鉄のように硬化した羽だったのだ。


「シダ! 次来るぞ!」

 攻撃が止むのもつかの間。また羽の雨を降らせるベルガー。シダはすでに1つの可能性を考えていた。



(一旦攻撃をやめた理由……おそらくこの攻撃をするには一度チャージをしなければならないんじゃないだろうか)



 固まっていても狙いやすくなるだけだと判断した2人は、左右別々の方向に攻撃を避け、体制を整えた。

「どーするシダ。このまま空から攻撃されたんじゃ手も足も出ないぞ」

「大丈夫だ。どんな物にも必ず弱点がある。きっとあの翼だって永遠に飛んでいられるわけじゃないだろう。飛びつかれて降りてきたところを狙えばいいのさ」

 シダは圧倒的な力の差を見せつけられながらも、冷静に勝つための糸口を探っていた。しかし、シダの表情には余裕など1つもなかった。

「そうか。わかった。それまで耐えろよ!」

「おう!」


 互いに声を掛け合うシダとクリス。その上から余裕な声が1つ聞こえた。


「どうやら私が降りて来るところを狙っているようですが……ならばお望み通り降りてみましょうか」

 ベルガーはそう言うと、翼で体を包み、力をチャージした。そしてそれを解放するようにバッ! と開くと、翼は透き通ったカナリアイエローの色を帯び、禍々しいエクロムを放っていた。
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