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第二章
五話 悪役令嬢生活、開始
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ーチュン、チュンチュン
小鳥のさえずりが聞こえる爽やかな朝。
部屋からリビングルームへ向かう途中にある階段で匂ってきた美味しそうなフレンチトーストの匂い。
「いい匂い」
それは私に最高の朝の始まりを教えてくれた。
匂いに誘われてドアを開けると、優しく微笑むルイと目が合った。
「おはようございます、ナナ様」
心地よい朝、美味しそうな朝ご飯、そしてイケメンすぎる執事。
なんて素敵な朝なんだろう。
そして、そんな今日から私は悪役令嬢になるのだ。
史上最強最悪の悪役令嬢に…。
まずそのための第一歩として、今日はカイルに近づくある女性をターゲットとして空き教室に呼び出すという計画を立てている。
私とカイルが通うシェーリング大学は一つの校舎に大学と大学院が入っているので、生徒であれば誰でも簡単に大学院生であるカイルと話すことが出来るのだ。
逆に言えば、大学院生の中にカイルを狙っている人がいたとしても簡単に会いに行けるということなんだ。
そして今回のターゲットとなる人は、ミシェル家のマーサさん二十一歳。
彼女は根っからのお嬢様で、いつも取り巻きを背後にはべらせている、俗に言う”ぶりっ子”という分類の人だ。
ルイの情報によると、彼女はとても積極的な女性で大学院に入学してからは、カイルと同じガーデニング愛好会に所属し、毎日お昼休みには一緒にお弁当を食べながらガーデニングについて熱く語り合っているらしい…。
この情報をルイがどうやって入手したのかは謎だがカイルは極度のガーデニング好きなので、そんな彼とガーデニングについて語り合える彼女はきっと彼の為に沢山勉強したのだろう。
私がカイルに見合う女性になろうと日夜努力したように。
「そう思うと、なんか親近感湧くんだよなぁ」
ーコト
「もしかして、マーサさんについてですか?」
出来たてのフレンチトーストを机に置きながら、ルイは聞いてきた。
「うん。私に少し似てるなって思ったんだ」
「でしたら、ターゲットを変えますか?まだ五名ほどターゲットに相応しい方々がいらっしゃいますが」
「ううん、大丈夫よ。自分と似てるからこそ、潰すべきだと思うのよね、ふふふ」
「ナナ様、だいぶ笑い方が悪役令嬢っぽくなってきましたね。それに『潰す』発言もザ・悪役令嬢って感じで良いですね!」
そう言って親指を立てながら「イイネ!」と笑っているルイ。
絶対面白がってるよな、アレは。
でもルイより大人な私は、ルイの挑発なんかには乗らずに、顔に微笑みを浮かべフレンチトーストを食べ始めた。
私は大人、私は大人なのよ、
「そう言えば、ナナ様って何か食べてる時…」
私は冷静でいつも微笑みを絶やさずに、どんなときも優しさを忘れないおとな…、
「ハムスターみたいにほっぺたをパンパンにしてますよね~」
「それがなんやねんっ!何も迷惑かけてないやろが!!」
イラつきすぎて、最近読んだ外国の(少し汚い)言葉を発してしまった。
「ナナ様っ、何ですか、その言葉使いは!?そんな所、カイル様に見られたら悪役令嬢になる前に婚約破棄されてしまいますよ!」
「別に婚約破棄されてもいいわよ。元々その予定だったんだから」
「ま~た、そんなこと言ってぇ。本当は完璧な悪役令嬢になるために笑い方や喋り方、歩き方までも練習してるってこと知ってるんですからね」
そうなのだ。
悪役令嬢になるなんて滅多に経験できないことだからと妙に張り切っていた私は、お風呂場で誰にも気づかれないように練習してたんだけど…、
「何でそのこと知ってるのよっ!」
「そりゃあ、ナナ様がなかなかお風呂から出てこないので溺れてるんじゃないかと心配して覗きに行ったときに、たまたま聞いてしまっただけですよ。可愛かったなぁ、『う~ん、なんか違うなぁ』とか『なんかダメなのよね。もっと声のトーンを低めにしたらいいのかな?』と呟きながら一生懸命に練習してたナナ様」
「うわぁぁぁ、やめなさい!」
「それに、この前は寝言で……」
「やめてぇぇぇぇぇ」
ーガチャッ
「おはよう、ってどうしたの?二人とも…」
その声の主は取っ組み合っている私とルイを交互に見ながら、目を見開いている父で。
その声を聞いた途端、まるで『やれやれだぜ』的な雰囲気を出しながら肩をすくめ、父の朝食を用意しにキッチンへ向かうルイ。
あいつ~、後で覚えてろよ!!
「ナ、ナナ。そろそろ学校へ行く時間じゃないかな?」
人ひとり殺せそうな視線でルイを睨
む私に若干引きながら、父は時計を指さしてそう言った。
時計を見ると起きた時間からもう一時間経っていた。
「うわっ、もうこんな時間だ」
私は急いでご飯を食べ終え、お父さんに「行ってきます」と声をかけ、玄関に向かった。
靴を履いているとルイがお弁当を手にやってきた。
「ナナ様、大丈夫ですか?なんでしたら、代わりに私がやりましょうか」
なんだかんだいって、ルイはやっぱり優しい。
私が悪役令嬢をすることにより傷つくんじゃないかって心配してくれている。
正直、カイルに嫌われるなんて考えただけで泣いちゃいそうだけど、ここで辞める訳にはいかないし、ルイに甘えるのもダメだと思うの。
これはきっと私が解決するべき問題だから。
「ありがとう、ルイ。でも大丈夫よ。きっと出来るわ」
そう言ってルイを安心させるように笑ってみせたけど、ルイはまだ少し心配みたいだった。
だけどもう出ないと遅刻するのでルイを放置して私は家を出た。
今日から私は悪役令嬢になる。
いや、悪役令嬢になってやるんだ!!
小鳥のさえずりが聞こえる爽やかな朝。
部屋からリビングルームへ向かう途中にある階段で匂ってきた美味しそうなフレンチトーストの匂い。
「いい匂い」
それは私に最高の朝の始まりを教えてくれた。
匂いに誘われてドアを開けると、優しく微笑むルイと目が合った。
「おはようございます、ナナ様」
心地よい朝、美味しそうな朝ご飯、そしてイケメンすぎる執事。
なんて素敵な朝なんだろう。
そして、そんな今日から私は悪役令嬢になるのだ。
史上最強最悪の悪役令嬢に…。
まずそのための第一歩として、今日はカイルに近づくある女性をターゲットとして空き教室に呼び出すという計画を立てている。
私とカイルが通うシェーリング大学は一つの校舎に大学と大学院が入っているので、生徒であれば誰でも簡単に大学院生であるカイルと話すことが出来るのだ。
逆に言えば、大学院生の中にカイルを狙っている人がいたとしても簡単に会いに行けるということなんだ。
そして今回のターゲットとなる人は、ミシェル家のマーサさん二十一歳。
彼女は根っからのお嬢様で、いつも取り巻きを背後にはべらせている、俗に言う”ぶりっ子”という分類の人だ。
ルイの情報によると、彼女はとても積極的な女性で大学院に入学してからは、カイルと同じガーデニング愛好会に所属し、毎日お昼休みには一緒にお弁当を食べながらガーデニングについて熱く語り合っているらしい…。
この情報をルイがどうやって入手したのかは謎だがカイルは極度のガーデニング好きなので、そんな彼とガーデニングについて語り合える彼女はきっと彼の為に沢山勉強したのだろう。
私がカイルに見合う女性になろうと日夜努力したように。
「そう思うと、なんか親近感湧くんだよなぁ」
ーコト
「もしかして、マーサさんについてですか?」
出来たてのフレンチトーストを机に置きながら、ルイは聞いてきた。
「うん。私に少し似てるなって思ったんだ」
「でしたら、ターゲットを変えますか?まだ五名ほどターゲットに相応しい方々がいらっしゃいますが」
「ううん、大丈夫よ。自分と似てるからこそ、潰すべきだと思うのよね、ふふふ」
「ナナ様、だいぶ笑い方が悪役令嬢っぽくなってきましたね。それに『潰す』発言もザ・悪役令嬢って感じで良いですね!」
そう言って親指を立てながら「イイネ!」と笑っているルイ。
絶対面白がってるよな、アレは。
でもルイより大人な私は、ルイの挑発なんかには乗らずに、顔に微笑みを浮かべフレンチトーストを食べ始めた。
私は大人、私は大人なのよ、
「そう言えば、ナナ様って何か食べてる時…」
私は冷静でいつも微笑みを絶やさずに、どんなときも優しさを忘れないおとな…、
「ハムスターみたいにほっぺたをパンパンにしてますよね~」
「それがなんやねんっ!何も迷惑かけてないやろが!!」
イラつきすぎて、最近読んだ外国の(少し汚い)言葉を発してしまった。
「ナナ様っ、何ですか、その言葉使いは!?そんな所、カイル様に見られたら悪役令嬢になる前に婚約破棄されてしまいますよ!」
「別に婚約破棄されてもいいわよ。元々その予定だったんだから」
「ま~た、そんなこと言ってぇ。本当は完璧な悪役令嬢になるために笑い方や喋り方、歩き方までも練習してるってこと知ってるんですからね」
そうなのだ。
悪役令嬢になるなんて滅多に経験できないことだからと妙に張り切っていた私は、お風呂場で誰にも気づかれないように練習してたんだけど…、
「何でそのこと知ってるのよっ!」
「そりゃあ、ナナ様がなかなかお風呂から出てこないので溺れてるんじゃないかと心配して覗きに行ったときに、たまたま聞いてしまっただけですよ。可愛かったなぁ、『う~ん、なんか違うなぁ』とか『なんかダメなのよね。もっと声のトーンを低めにしたらいいのかな?』と呟きながら一生懸命に練習してたナナ様」
「うわぁぁぁ、やめなさい!」
「それに、この前は寝言で……」
「やめてぇぇぇぇぇ」
ーガチャッ
「おはよう、ってどうしたの?二人とも…」
その声の主は取っ組み合っている私とルイを交互に見ながら、目を見開いている父で。
その声を聞いた途端、まるで『やれやれだぜ』的な雰囲気を出しながら肩をすくめ、父の朝食を用意しにキッチンへ向かうルイ。
あいつ~、後で覚えてろよ!!
「ナ、ナナ。そろそろ学校へ行く時間じゃないかな?」
人ひとり殺せそうな視線でルイを睨
む私に若干引きながら、父は時計を指さしてそう言った。
時計を見ると起きた時間からもう一時間経っていた。
「うわっ、もうこんな時間だ」
私は急いでご飯を食べ終え、お父さんに「行ってきます」と声をかけ、玄関に向かった。
靴を履いているとルイがお弁当を手にやってきた。
「ナナ様、大丈夫ですか?なんでしたら、代わりに私がやりましょうか」
なんだかんだいって、ルイはやっぱり優しい。
私が悪役令嬢をすることにより傷つくんじゃないかって心配してくれている。
正直、カイルに嫌われるなんて考えただけで泣いちゃいそうだけど、ここで辞める訳にはいかないし、ルイに甘えるのもダメだと思うの。
これはきっと私が解決するべき問題だから。
「ありがとう、ルイ。でも大丈夫よ。きっと出来るわ」
そう言ってルイを安心させるように笑ってみせたけど、ルイはまだ少し心配みたいだった。
だけどもう出ないと遅刻するのでルイを放置して私は家を出た。
今日から私は悪役令嬢になる。
いや、悪役令嬢になってやるんだ!!
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