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第三章
十五話 ナナ・グレイスの下町探検記②
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無事、卵を買い終えた私は、噴水広場の一角にある《フラワーノのお花屋さん》に向かった。
ーリンリン
扉を開けると軽やかな鈴の音が店内に響き渡り、店主であるフラワーノさんが顔を出した。
「いらっしゃいませ~、あらぁ、ナナちゃんじゃない」
「こんにちは、フラワーノさん!」
フラワーノさんはふわふわした茶色の髪を頭の上でお団子にして、いかにもお花屋さんみたいな可愛らしいワンピースを着ていた。
「お店に飾るお花を買いに来たんですけど、何がいいと思いますか?」
「そうねぇ。大事な人にプレゼントするつもりで選んでみたら?その方が愛がこもってるっていうか、見ている方も何かを感じとって癒されるかもしれないわ。勿論、匂いがきついものとか、花粉が飛びやすいもの、花がすぐ散るものとかは食品を扱うお店では好まれないけどね」
「そうなんですね…」
うーん、じゃあ、誰に向けて選べばいいかな?
いつも料理を頑張ってくれてるトムさん?
元気で周りを明るくしてくれるサーシャ?
そんなサーシャをシバい…優しく指導してくれてるレイラ?
特に何もしてないお父様?
うーん…。
「ありがとうございましたぁ、また来てね~」
悩んだ結果、私はルイを想像してお花を選ぶことにした。
ルイの好きな落ち着いた大人っぽい色の花、その真ん中に一際目立つ1輪の白いバラ。
白いバラの花言葉は、尊敬。
それを知ったのは、私がまだ幼い頃、下町に母の日という文化が存在することを知った頃だ。
幼くして母を亡くした私は、他の貴族の友達が母の日に何を贈るかについて話しているのが悔しくて、悲しくて、寂しくてたまらなかった。
そんなある日、ルイが私を庭園へと連れていってくれた。
私はまだ幼いからと、入るのを禁止されている庭園に。
「ここに入ったことは内緒ですよ?」
ルイはそう言いながら、私の手を引き、ぐんぐんと進んでいった。
植木の迷路をぬけ、ラベンダーの花畑をぬけ…。
そして、辿り着いたのは真っ白なバラが一面に咲く、美しい場所で。
「ナナ様」
ルイは私の手をぎゅっと握りながら、私の名前を呼んだ。
「母の日は、いつも沢山の愛をプレゼントしてくれる母親に感謝を伝えるイベントなのですよ」
「でも、私にはもうお母様は…」
「では、ナナ様にお母様の代わりに、2人分の愛をくださっている方は誰ですか?」
「それは……お父様」
そう、父なのだ。
母が亡くなってから、自分も悲しいはずなのにいつも笑顔でいてくれる父。
私がやりたいと言ったことは、なんでもやらせてくれる父。
どんなに辛いときも、どんなに大変なときも、私を一番に考え、優しく指導してくれてる父。
「そうですよね。なら、ジョン様にプレゼントを送るのもありなんじゃないですか?いつもお世話になっているのは、別に母親だけではないでしょう?」
ルイはそう言って 、私に優しく微笑みかけた。
「そうだね。私、お父様に送ることにする。あっ、でも、何を送ればいいのかな?母の日、今日なのに何も用意してない…」
誰に送るのかは決まったが、何を送るのか決まっていなかった私は、どうすればいいのかとルイを見上げた。
「白いバラの花言葉は、尊敬なんですよ」
ルイは待ってましたと言わんばかりに、目の前の白い花を指さしながら、自慢げに言ってみせた。
「なので、その白いバラを送られてみては?」
「だからここに連れてきてくれたの?」
「はい。でも、この庭園に入ったことは二人の秘密ですよ」
シーっといたずらっ子のように口の前で人差し指を立てるルイは、背景の白いバラとマッチしてかっこよかった。
ルイには言ってないが、カイルが私の前に現れる前、私はルイに恋していた。
多分、初恋だろう。
まぁ、顔だけは良かったもんな。
というわけで、いつも私を支えてくれるルイに、感謝と尊敬の意味を込めて花束を作ったのだ。
「むふふふふ…」
喜んでくれるかな?
花束を手渡した時のルイの顔を想像しては気味の悪い声を漏らす私は《モモリーノの牛乳工場》へと向かったのだった。
牛乳を買えばおつかい成功のナナちゃん。
落とさず、しっかり持てるかな?
~③へ続く~
ーリンリン
扉を開けると軽やかな鈴の音が店内に響き渡り、店主であるフラワーノさんが顔を出した。
「いらっしゃいませ~、あらぁ、ナナちゃんじゃない」
「こんにちは、フラワーノさん!」
フラワーノさんはふわふわした茶色の髪を頭の上でお団子にして、いかにもお花屋さんみたいな可愛らしいワンピースを着ていた。
「お店に飾るお花を買いに来たんですけど、何がいいと思いますか?」
「そうねぇ。大事な人にプレゼントするつもりで選んでみたら?その方が愛がこもってるっていうか、見ている方も何かを感じとって癒されるかもしれないわ。勿論、匂いがきついものとか、花粉が飛びやすいもの、花がすぐ散るものとかは食品を扱うお店では好まれないけどね」
「そうなんですね…」
うーん、じゃあ、誰に向けて選べばいいかな?
いつも料理を頑張ってくれてるトムさん?
元気で周りを明るくしてくれるサーシャ?
そんなサーシャをシバい…優しく指導してくれてるレイラ?
特に何もしてないお父様?
うーん…。
「ありがとうございましたぁ、また来てね~」
悩んだ結果、私はルイを想像してお花を選ぶことにした。
ルイの好きな落ち着いた大人っぽい色の花、その真ん中に一際目立つ1輪の白いバラ。
白いバラの花言葉は、尊敬。
それを知ったのは、私がまだ幼い頃、下町に母の日という文化が存在することを知った頃だ。
幼くして母を亡くした私は、他の貴族の友達が母の日に何を贈るかについて話しているのが悔しくて、悲しくて、寂しくてたまらなかった。
そんなある日、ルイが私を庭園へと連れていってくれた。
私はまだ幼いからと、入るのを禁止されている庭園に。
「ここに入ったことは内緒ですよ?」
ルイはそう言いながら、私の手を引き、ぐんぐんと進んでいった。
植木の迷路をぬけ、ラベンダーの花畑をぬけ…。
そして、辿り着いたのは真っ白なバラが一面に咲く、美しい場所で。
「ナナ様」
ルイは私の手をぎゅっと握りながら、私の名前を呼んだ。
「母の日は、いつも沢山の愛をプレゼントしてくれる母親に感謝を伝えるイベントなのですよ」
「でも、私にはもうお母様は…」
「では、ナナ様にお母様の代わりに、2人分の愛をくださっている方は誰ですか?」
「それは……お父様」
そう、父なのだ。
母が亡くなってから、自分も悲しいはずなのにいつも笑顔でいてくれる父。
私がやりたいと言ったことは、なんでもやらせてくれる父。
どんなに辛いときも、どんなに大変なときも、私を一番に考え、優しく指導してくれてる父。
「そうですよね。なら、ジョン様にプレゼントを送るのもありなんじゃないですか?いつもお世話になっているのは、別に母親だけではないでしょう?」
ルイはそう言って 、私に優しく微笑みかけた。
「そうだね。私、お父様に送ることにする。あっ、でも、何を送ればいいのかな?母の日、今日なのに何も用意してない…」
誰に送るのかは決まったが、何を送るのか決まっていなかった私は、どうすればいいのかとルイを見上げた。
「白いバラの花言葉は、尊敬なんですよ」
ルイは待ってましたと言わんばかりに、目の前の白い花を指さしながら、自慢げに言ってみせた。
「なので、その白いバラを送られてみては?」
「だからここに連れてきてくれたの?」
「はい。でも、この庭園に入ったことは二人の秘密ですよ」
シーっといたずらっ子のように口の前で人差し指を立てるルイは、背景の白いバラとマッチしてかっこよかった。
ルイには言ってないが、カイルが私の前に現れる前、私はルイに恋していた。
多分、初恋だろう。
まぁ、顔だけは良かったもんな。
というわけで、いつも私を支えてくれるルイに、感謝と尊敬の意味を込めて花束を作ったのだ。
「むふふふふ…」
喜んでくれるかな?
花束を手渡した時のルイの顔を想像しては気味の悪い声を漏らす私は《モモリーノの牛乳工場》へと向かったのだった。
牛乳を買えばおつかい成功のナナちゃん。
落とさず、しっかり持てるかな?
~③へ続く~
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