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第三章
十六話 ナナ・グレイスの下町探検記③
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卵と花束を買い終え、私はやっと最後のお店《モモリーノの牛乳工場》へとやってきた。
ーコンコンコン
「モッモリーノさーん、ナナでーす」
入口の鉄で出来たドアを叩いてそう叫ぶと、中からスラッとした気の強そうな女性が出てきた。
「あら、ナナじゃないか。今日はひとりかい?」
そう、彼女こそ《モモリーノの牛乳工場》の主人であるモモリーノさんだ。
お気づきの方もいるだろうが、ココリーノさんとフラワーノさんとモモリーノさんは三姉妹である。
この三姉妹は”悪魔のリーノ姉妹”と呼ばれ、この噴水広場を代表している。
その中でもモモリーノさんは他のフワフワとした女性らしいお二人とは違い、キリッとした目つきから影では牛乳の姉御とも呼ばれているらしい。
「そうなの。今日は一人でお使いなんだ」
「偉いね。ココリーノとフラワーノの所にも行ってきたんだね」
「すごいでしょ」
「すごいすごい」
ふふんと胸を張った私の頭をポンポンと叩き、モモリーノさんは奥の工場へと入っていった。
数分後、モモリーノさんが持ってきたのはいつも買ってる牛乳二瓶で。
「ちょっと重いけど、持てる?」
不安そうに私を見つめるモモリーノさん。
確かに持てないかもしれないが、ここで迷惑をかける訳にもいかない。
それに持ってもらったらお使いの意味がなくなっちゃうじゃない!
「持てるよ。もう私だって立派な大人なんだから」
「そうか。それなら任せても大丈夫だね」
そう言ってモモリーノさんは、牛乳二瓶と私の大好きなミルククッキーを一袋、用意してくれた頑丈な袋に入れてくれた。
「お使い頑張ったご褒美だよ」
ニカッと笑う彼女は、まさに姉御だった。
「ありがと!また来るね」
「まってるよ」
私はモモリーノさんにお礼を言い、そっとお店をあとにした。
あとは帰るだけ、とワクワクしていた私。
そんな時、肩をトントンと叩かれた。
「はい?」
なにか落としたのかな?
そんなことを考えながら振り向くと、そこにはそこら辺に沢山いる町民A君とB君がいて。
「えっと、今暇かな?」
照れくさそうに頬を掻きながら尋ねてきたB君。
こんな重そうに荷物運んでる私に向かって『暇かな?』なんてもはや挑発か?
ムッとしてみせると後ろでふんぞり返っていたA君が慌てて駆け寄ってきた。
「もし良かったら、その荷物運ぶの手伝うよ」
「いいの?ありがとう」
結構重かったし、このままじゃお花潰れちゃいそうだったからラッキー。
そんなことを思いながら、笑いかけるとA君は少し頬を赤く染め、
「その代わり、運び終わったら僕達の用事にも付き合ってくれる?」
と言って。
交換条件だしてくるのか。
まぁ、お使い終わったら休憩貰えるだろうし、運んでもらうんだからしょうがないか。
「うん、もちろ…モゴッ」
『ん』そう言おうとした私の口を塞いだのは少し不機嫌そうなルイだった。
「ナナさ…ナナ、いつまで買い物に行ってるんだ。トムさんが待ってるよ」
そう言って、私の手から牛乳が入った袋と卵を取ったルイは、あたかも今気づいたようにA君達に目を向け、
「ナナの知り合いの方?」
と聞いてきた。
分かってるくせに意地悪いな。
「ううん、いまさっき声をかけてくれたの。せっかく言ってくれたんだけど、ルイが運んでくれるみたいだから大丈夫。ありがと」
精一杯の笑顔を見せると、彼らは真っ赤に頬を染め「いや、大丈夫ならいいんだ」「またね」などと言いながら去っていった。
「はぁ…ナナ様。知らない人にはついて行っちゃダメですよ」
やれやれというふうに私の方を見てそう言ったルイ。
いや、ついて行こうとしてないし。
運んでくれるみたいだったから、手伝って貰おうとしただけだし。
「ルイ、呼び捨てしたよね」
イライラしたので確信を着いてやった。
どうだ!と顔をのぞくと、
「なんでそんなに真っ赤なの?」
「はっ?真っ赤じゃないですし。て、てか、そんなこと今関係なくないですか?」
「だっていつもナナ様なのに、さっきだけナナ、ナナって」
そう言ってツンツンとつついてみると
「もう先行きますからね」
と言って、歩き出してしまった。
でも、私は知っている。
ルイが耳まで真っ赤にしていたことを。
まぁ、充分楽しめたのでこのくらいにしておこう。
「待ってよー」
この後、花束のイメージについて話して、ルイがまた顔を真っ赤にしたことは私たちだけの秘密。
ーコンコンコン
「モッモリーノさーん、ナナでーす」
入口の鉄で出来たドアを叩いてそう叫ぶと、中からスラッとした気の強そうな女性が出てきた。
「あら、ナナじゃないか。今日はひとりかい?」
そう、彼女こそ《モモリーノの牛乳工場》の主人であるモモリーノさんだ。
お気づきの方もいるだろうが、ココリーノさんとフラワーノさんとモモリーノさんは三姉妹である。
この三姉妹は”悪魔のリーノ姉妹”と呼ばれ、この噴水広場を代表している。
その中でもモモリーノさんは他のフワフワとした女性らしいお二人とは違い、キリッとした目つきから影では牛乳の姉御とも呼ばれているらしい。
「そうなの。今日は一人でお使いなんだ」
「偉いね。ココリーノとフラワーノの所にも行ってきたんだね」
「すごいでしょ」
「すごいすごい」
ふふんと胸を張った私の頭をポンポンと叩き、モモリーノさんは奥の工場へと入っていった。
数分後、モモリーノさんが持ってきたのはいつも買ってる牛乳二瓶で。
「ちょっと重いけど、持てる?」
不安そうに私を見つめるモモリーノさん。
確かに持てないかもしれないが、ここで迷惑をかける訳にもいかない。
それに持ってもらったらお使いの意味がなくなっちゃうじゃない!
「持てるよ。もう私だって立派な大人なんだから」
「そうか。それなら任せても大丈夫だね」
そう言ってモモリーノさんは、牛乳二瓶と私の大好きなミルククッキーを一袋、用意してくれた頑丈な袋に入れてくれた。
「お使い頑張ったご褒美だよ」
ニカッと笑う彼女は、まさに姉御だった。
「ありがと!また来るね」
「まってるよ」
私はモモリーノさんにお礼を言い、そっとお店をあとにした。
あとは帰るだけ、とワクワクしていた私。
そんな時、肩をトントンと叩かれた。
「はい?」
なにか落としたのかな?
そんなことを考えながら振り向くと、そこにはそこら辺に沢山いる町民A君とB君がいて。
「えっと、今暇かな?」
照れくさそうに頬を掻きながら尋ねてきたB君。
こんな重そうに荷物運んでる私に向かって『暇かな?』なんてもはや挑発か?
ムッとしてみせると後ろでふんぞり返っていたA君が慌てて駆け寄ってきた。
「もし良かったら、その荷物運ぶの手伝うよ」
「いいの?ありがとう」
結構重かったし、このままじゃお花潰れちゃいそうだったからラッキー。
そんなことを思いながら、笑いかけるとA君は少し頬を赤く染め、
「その代わり、運び終わったら僕達の用事にも付き合ってくれる?」
と言って。
交換条件だしてくるのか。
まぁ、お使い終わったら休憩貰えるだろうし、運んでもらうんだからしょうがないか。
「うん、もちろ…モゴッ」
『ん』そう言おうとした私の口を塞いだのは少し不機嫌そうなルイだった。
「ナナさ…ナナ、いつまで買い物に行ってるんだ。トムさんが待ってるよ」
そう言って、私の手から牛乳が入った袋と卵を取ったルイは、あたかも今気づいたようにA君達に目を向け、
「ナナの知り合いの方?」
と聞いてきた。
分かってるくせに意地悪いな。
「ううん、いまさっき声をかけてくれたの。せっかく言ってくれたんだけど、ルイが運んでくれるみたいだから大丈夫。ありがと」
精一杯の笑顔を見せると、彼らは真っ赤に頬を染め「いや、大丈夫ならいいんだ」「またね」などと言いながら去っていった。
「はぁ…ナナ様。知らない人にはついて行っちゃダメですよ」
やれやれというふうに私の方を見てそう言ったルイ。
いや、ついて行こうとしてないし。
運んでくれるみたいだったから、手伝って貰おうとしただけだし。
「ルイ、呼び捨てしたよね」
イライラしたので確信を着いてやった。
どうだ!と顔をのぞくと、
「なんでそんなに真っ赤なの?」
「はっ?真っ赤じゃないですし。て、てか、そんなこと今関係なくないですか?」
「だっていつもナナ様なのに、さっきだけナナ、ナナって」
そう言ってツンツンとつついてみると
「もう先行きますからね」
と言って、歩き出してしまった。
でも、私は知っている。
ルイが耳まで真っ赤にしていたことを。
まぁ、充分楽しめたのでこのくらいにしておこう。
「待ってよー」
この後、花束のイメージについて話して、ルイがまた顔を真っ赤にしたことは私たちだけの秘密。
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