9 / 20
9話※
しおりを挟むフィンと深く愛し合い、彼がぐっすりと眠りに就いた後──私は、本棚に設置されていた光の正体を確認し、それを持って直ぐにモニター室へ足を運んだ。
「こ、れは……」
本棚に隠すように置かれていたもの、それは小型の監視カメラだった。私が前々から設置していたものではなく、恐らく他の誰かが取り付けたもの。
──犯人は一人しか考えられない。
「……あのストーカー女」
舌打ちをして、小型監視カメラに内蔵されていたカードを取り出す。
いつから取り付けられていたのかは、分からない。でも、ソフィアが私達の寝室に侵入したということは、紛れもない事実だ。つまり、フィンが着替えているところも、私の可愛いフィンの寝顔も、私達が毎晩ベッドで愛し合っているところも、この映像を通して全て見られていた可能性が高いという訳だ。
鍛えられた夫の美しい身体を、私だけのフィンの身体を盗み見た罪は重い。ソフィアの目玉をくり抜いてやらないと気が済まない。
「……い、一応、状況確認の為にデータを見てみないと駄目ね」
べ、別に、客観的に見て私達がどういうセックスをしているか、気になった訳じゃない。映像の中身によっては複製して保存しちゃおうとか、全然考えてないわよ。何をストーカー女に見られていたか、確認することは重要だもの。
「……よし」
ゴクリと音を立てて唾を呑み込み、再生機にカードを差し込む。機械音を立てて再生機がデータを読み込み、一番大きなモニターの画面がノイズを暫く起こした後──
『あ、ああん! フィン! 激しい……っ!』
『シャーリー! 愛しているよ、シャーリー……!』
耳を突き抜けるような喘ぎ声を上げながら、ベッドの上で獣のように腰を振っているフィンと私の姿が映し出された。
いきなり、とんでもなく生々しい映像が。
私、セックスする時、あんなに声出してたんだ。口もだらんと開いて涎垂らしているし、あんなに乱れた姿、フィン以外には到底見せられな──
「……あの。奥様」
「ひぁっ!?」
背後から聞こえた低い声に、身体が大きく震え上がる。咄嗟に後ろを振り返ると、気まずそうにモニターから目を逸らして立ち尽くすセバスチャンの姿があった。
「申し訳ございません。ノックをしたのですが、奥様が映像に夢中で……」
「ち、違うわよ! これはソフィアが私達の寝室に取り付けた監視カメラの映像を確認しているだけで、そういう趣味がある訳じゃないの! 勘違いしないで!」
動画を止めようと、慌てて停止ボタンを押そうとした──のに、焦りすぎて手元が狂ってしまい、スキップボタンを押してしまった。
『やっ、あぁん。フィンのおっきくて、おいしいの……』
『シャーリーのも美味しいよ……シャーリーの味がする。ずっと舐めてたい……』
今度は互いの性器をびちゃびちゃと卑猥な水音を立てて舐め合う自分達の映像が。
セバスチャンは見てはいけないものを見てしまったと言わんばかりに、俊敏に顔を横に背ける。私はもう顔から烈火の如く火が出そうでになるのを感じながら、汗ばむ手でやっと停止ボタンを押した。
もう恥ずかしいを通り越して、泣きたい。子供の頃から私の側にいた御年七十のセバスチャンに、こんな映像を見せてしまうなんて。
全部ソフィアのせいだ。絶対に許さない。
「……奥様がフィン様と仲良くされているようで、安心しました」
「やめて、セバスチャン。お願いだからもう忘れて」
「……確かお二人の出会いは、奥様が十七歳、フィン様が十六歳の時でしたか。お互いが初めての恋人同士で、何年経っても変わらず愛し合えるのは本当に凄いことで、お二人を見守ってきた私としては感極まって涙が」
「もう、本当にやめて! 恥ずかしいから!」
火照っていく頬を両手で覆い隠しながら、消え入りそうな声で呟く。セバスチャンは控えめに咳払いをすると、机の上にそっと資料らしき物を置いた。
「奥様。話が変わってしまい申し訳ないのですが、準備が整いました。やっと例の件が解決に向きそうです」
「えっ、それって……!」
「恐らく、此れで奥様の望み通りに解決するかと」
セバスチャンの言葉に、身体の力が一気に抜ける。
ソフィアの本当の正体、そして彼女の企みに疑念を抱いてから数ヶ月。本当に時間が掛かった。やっとここまで来れた。
あとは此れを本人に突き付ければ……!
安堵から大きなため息をこぼし、セバスチャンが集めてくれた資料に手を伸ばそうとした──その時だった。
「お、奥様! 大変です! 此方のモニターを見てください!」
私とフィンのセックス映像を見てもそれほど取り乱さなかったセバスチャンが、突然大声を上げた。驚いて、彼が指差した先のモニターを見てみると──
「なっ……!」
現時刻の私達の寝室前の映像。そこには、不気味な笑みを浮かべて寝室の扉を開けようとするソフィアの姿が映し出されていた。
「ど、どうしてこんな時に……!」
突然の敵の来訪に、心臓が大きく飛び跳ね、指先が酷く震え始める。セバスチャンはぐっとモニターに顔を近付け、映像を睨むように見据えた。
「もしや、奥様がカメラを外したタイミングで部屋を出たことにお気づきになったのでは……! 若しくは他に監視カメラを予め設置していた可能性も」
「っ! 早くフィンの所へ戻らなきゃ……!」
セバスチャンが用意してくれた資料と携帯用のモニターを両手に抱え、急いで寝室へと向かった。
どうか間に合うようにと、心の中で必死に祈りながら。
23
あなたにおすすめの小説
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる