【R18】夫を奪おうとする愚かな女には最高の結末を

みちょこ

文字の大きさ
10 / 20

10話△ ※フィン視点

しおりを挟む

 何だか、寝苦しい。

 さっきまでシャーリーと愛し合って幸せだったはずなのに。手足を縛られているみたいで、全く動けない。それにお腹の上に重たい何かがのし掛かっているような──


「旦那様。おはようございます……」


 顔全体に吹き掛かる生温かな吐息と、荒々しい呼吸音、そして背筋がぞっとするような声。重たい瞼をゆっくりと開くと、ぼやけた視界に愛するシャーリーではない人影が見えた。


「旦那様……フィン様……」


 ぬっと近付いてきたその正体。

 目と鼻の直ぐ先にいたのは、鼻息を荒々しくさせて薄気味悪い表情を浮かべたソフィアだった。

「ひぃ!?」

 あまりに恐ろしい彼女の笑顔に、喉を切り裂かれたような悲鳴がこぼれる。ソフィアは唾液が絡んだ舌を至近距離で覗かせ、そのまま俺の下唇から上唇を這うようにベロリと舐め上げた。

「ひ……っ」

 ぬるりとした気持ち悪い感触に、全身の血がひゅっと全て抜かれてしまったような感覚に陥る。直ぐ様ソフィアを突き飛ばそうとしたものの、両手首が全く動かず。視線を持ち上げると、鉄の鎖で雁字搦めに縛られていた。

「旦那様の唇、美味しい……」

 ソフィアは自分の上唇を舐めると、唇同士が触れ合いそうになる距離までぐっと顔を近付けた。

「や、やめろ! 何でソフィアが此処にいるんだ! シャーリーは、シャーリーは何処だ!?」

「部屋の鍵を内側から閉めておいたので、奥様は入ってこれません。この部屋は、私と旦那様の二人きり。誰にも邪魔はさせませんよ」

「はっ、やっ、シャーリー……!」

 ソフィアからなるべく顔を離そうと、首をぐっと横に向ける。しかしそれも一瞬の抵抗にしかならず、胸を這うように指先で肌を撫でられ、身体が大きく震え上がった。

 ──そうだ。俺、今裸じゃないか。

「まぁ。旦那様の身体、とっても熱い。そして凄く肌が綺麗。はこんな風にフィン様に触れるなんて、思ってもいなかったのに、夢みたい」

「さ、触るなって言ってるだろ! シャーリーを返してくれ! シャーリー!」

 どこを見渡しても部屋の中にシャーリーはいないのに、無意味に何度もシャーリーの名を叫んでしまう。さっきまであんなに愛し合っていたのに、何処に行ったんだ。俺が寝ている間にソフィアにどこかへ連れ出されたのか!?

「フィン様、大丈夫です。優しくしてあげますから、たっぷり愛し合いましょう」

 ソフィアはふふふっ、と鼻から笑いをこぼしながら、胸元から何かをを取り出した。

 ──彼女の手に握られていたのは、黒みがかった深い紫色の色彩を放つ液体が含まれた硝子の小瓶。
 明らかに口にしてはいけない禍々しい色のそれを、ソフィアは躊躇うことなく一気に口に含んだ。

「な、何して……んっ!」

 頭を両側から固定するように掴まれ、ソフィアに唇を無理矢理奪われる。強く押し付けられる唇の感触に鳥肌が立ったのも束の間、僅かに開いた唇の隙間から粘り気のある液体が舌を伝って流れてきた。

「んっ、んんっ、んーっ!」

 口から出そうとしても、唇が余すことなく密着するように重ねられ、吐き出すことが出来ない。ソフィアは口づけたまま顎をぐっと上げさせ、唇の隙間からぬるりとした熱いものをこじ入れようとしてきた。

「はっ、やめっ、シャーリー……!」

「フィン様……」

 頑なに唇をぎゅっと結び、気持ち悪い感触の侵入を阻む。それでも無理矢理舌を入れ込もうとするソフィアに、拒絶の意を示そうと、ソフィアの両手の力に逆らって勢い良く首を横に振った刹那──口の中に含んでいた液体をゴクンと飲み込んでしまった。

「っ、あ……」

 ソフィアは俺の喉仏が上下に動いたことを指先で確認すると、口角を僅かに上げてゆっくりと唇を離していった。

「ソ、フィア……」

「……フィン様。きっと今の薬で最高のセックスが出来ますよ」

 俺が身体を震わせる傍ら、ソフィアは瞳を細めてにっこりと笑い──自らのシャツのボタンを一つずつ丁寧に外し始めた。

「ソ、ソフィア! 何をしているんだ! やめろ!」

 必死に抵抗しようと身体を捩らせても、縛られた鎖のせいで殆ど身動きが取れない。ソフィアはそんな暴れる俺を見下ろしながら、恍惚とした表情を浮かべる。

「……フィン様。わたし、フィン様の初めてになりたいんです。でもフィン様の初めては全て奥様が奪ってしまったから、だから」

 閉じられていたソフィアの瞳が時間をかけて開かれていく。
 光の宿さないその瞳は、まるで先ほど飲まされた薬のような忌わしい色で。何故か、遥か昔に感じた恐怖が走馬灯のように駆け巡った。

 恐ろしくて、震えが止まらない。

 ソフィアは笑っている。
 霊に取り憑かれた人形のように、クスクスと、不気味に。

 浅くなっていく呼吸を落ち着かせようと、息を呑み込んだ刹那──ソフィアは血の気が薄い唇をそっと開き、僅かに口角を上げた。
 
 

「……フィン様、お願いです。私、今日がなんです。だから、私がフィン様の初めての子供を孕むまで、たくさん私のこと、愛してくださいね?」

 

しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果

景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。 ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。 「俺……ステラと離れたくない」 そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。 「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」 そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。 それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。 勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。 戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──? 誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

処理中です...