11 / 20
11話△ ※フィン視点
しおりを挟む悪魔のような笑みを浮かべて俺を見下ろすソフィアに、身体が奥底から震え上がる。
何なんだ、この女は。
俺への執着心が異様過ぎる。
ソフィアを一年前に雇ってから、特別何かをこの女にしてやった訳でもない。あくまで他の使用人と同じように接しただけだ。
何故だ。こんな犯罪的行為をしてまで、何故、俺を。
「……フィン様。やっと結ばれる日を迎えられて、嬉しくて涙が出そうです。八年前からずっとずっと、この日を夢見ていました」
「は、八年前……?」
意味が分からない、どういうことだ。ソフィアがこの屋敷に来たのは、一年前だろう。八年前なんて俺はまだ十五歳で、小さな劇団に入ったばかりの頃だ。シャーリーと出会うよりも前の話じゃないか。
「どういう、ことだ」
声帯から絞り出した声が、自然と震える。
ソフィアは戸惑う俺を見つめながら、指先で自分の唇に触れた後──その指で俺の唇を擦るように撫でた。
「覚えていないのも無理はありませんわ。でも、私はあの頃からフィン様を見守ってきたのです。ずっとずっと、誰よりも貴方を」
ソフィアは口元に笑みを携えたまま、ボタンを外し終えた自らのシャツを床へと投げ捨てる。呆然としているのも束の間、下着姿になったソフィアは俺の身体に自分の身体を重ねるように覆い被さり、再び顔をぐっと近付けた。
「フィン様と熱い口づけをして、こんな風に触れられるなんて、夢みたい。でも、今はもうこれだけじゃ我慢できません。わたし、フィン様と最後まで結ばれたいの」
「は……っ」
心臓が大きく波打つ胸元を這うように撫でられ、身体が大きく跳ね上がる。
おかしい。身体がおかしい。今までソフィアに触れられたら、吐くほど気持ちが悪かった筈なのに。彼女に対して抱く嫌悪感に逆らうように、身体に熱が込み上げる。全身が火に炙られたように熱い。まさか──
「……フィン様、薬が効いてきましたか?」
熱に蝕まれる俺を見て楽しむように、ソフィアがにっこりと笑いかける。
──くすり。さっき、ソフィアが無理矢理飲ませたあれか……?
段々と呼吸が荒くなり、自分の雄が脈打つように勃ち上がっていくのが分かった。熱くて、苦しくて、この全身を蝕む熱から一刻も解放されたい。誰でもいいから、この熱を沈めてほしい。
「……フィン様、私が助けてあげます。一緒に気持ち良くなりましょう?」
恍惚とした表情を浮かべながら、再び唇を重ねようと顔を近付けるソフィア。刹那、シャーリーの顔が脳裏に浮かび──理性の中に残された力を振り絞って、ソフィアの額に頭突きを喰らわせた。
「っ……!」
相当強い力だったのか、ソフィアの顔が勢い良く離れ、背中が大きく仰け反る。
俺は身体を侵食していく熱を出しきるように息を吐き出し、ソフィアの顔を睨み上げた。
「俺が愛しているのは、シャーリーだけだ! 俺の人生に、シャーリー以外の女は要らない! 俺が生涯で抱く女はシャーリーだけだ……!」
はっはっ、と息を切らしながら、叫ぶように言い放つ。
ソフィアは赤く染まった額を手で押さえながら俺を見下ろし、醜く顔を歪めていく。まるで作り物の顔から化けの皮を剥がしたような、そんな表情だった。
「……それならば、無理矢理抱かせるまでです。奥様の元には二度と返しません」
ソフィアは氷のように冷たい視線を向けながら、自らの秘部を覆う下着を脱ぎ去り──そして、剥き出しになった俺の雄の先端と自分の蜜口が向かい合うように膝立ちをした。
「ぐ……っ!」
今すぐにソフィアを蹴り飛ばしたいのに、足枷を付けられているのか、両足も自由を奪われていて。ただただ鎖が足首に食い込み、痛みだけが駆け抜ける。
ガシャガシャと金属が擦れる音が虚しく鳴り響いた。
「フィン様、諦めて下さい。楽になりましょう」
「いや、だ、お前を抱くなら死んだ方がマシだ……! 俺は、シャーリーだけを──」
シャーリーだけを、愛している。
他の女に触れられるくらいなら、一層のこと。
息を震わせながら自分の舌を歯の間に挟み込み、そのまま噛み切ろうとした刹那、銃声音と何かに罅が入るような音が聞こえ──
寝室の扉が勢い良く吹っ飛んだ。
25
あなたにおすすめの小説
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる