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7話※
しおりを挟む「ひゃっ!」
扉が閉まるのと同時に肩を強く押され、勢いのまま壁に背中がぶつかる。
「師匠……っ!」
──バァン!
言葉を遮るように、師匠の手が顔のすぐ側の壁に押し当てられた。怯む間もなく眉間に皺を寄せた師匠の顔が迫り、そのまま唇を強引に奪われる。
「は、うっ……」
僅かに開いた唇から、捩じ込まれる師匠の舌。今朝のキスより乱暴に口内を蹂躙され、自然と目尻に涙が滲んでいく。
「や、やっ、ししょ、ふっ……んっ……」
震える手で師匠の胸を押し返そうとしたけど、ビクともせず。身体を離してくれるどころか、口付けに深さが増していくだけ。
何故かは分からないけど、師匠は確実に怒っている。理由はなに? 昨日の最中にこっそり師匠の匂いを嗅いでいたのがバレた? いや、師匠はそんなことでは怒らないはず! だとしたら他には……?
「ししょ……ひゃうっ!?」
太腿の内側を冷たい感触が這い、身体がビクンと跳ね上がる。唾液に濡れた唇を離し、視線を落とすと──下着の中に入り込んだ師匠の手が、淫らな動きを見せていた。
「ししょ、やめ、て……」
秘部を弄り始めた師匠の手首を弱々しい力で掴む。自然と息が乱れ始め、蕾の周りを中指で撫でられたところで艶やかな声がこぼれた。
「や、あっ、うう……!」
蕾に触れるか触れないか、ギリギリの部分を焦らすように擦られ、堪らず目の前の師匠の首元に顔を擦り寄せる。
「ナーシャ」
耳元で囁かれる低い声。顔を上げると、吐息が交わる近さまで師匠の顔が──
「は、う、ししょ……」
「ナーシャ。何故俺が怒っているか、分かるか」
……あ、やっぱり怒ってたんだ。
何で怒っているかなんて分かったら、今こうして苦労はしていない。心当たりは──
「……に、匂い嗅いだから……?」
「は?」
ヤバい。この反応は違ったみたいだ。だったら他は? 考えろ、ナーシャ。目の前の師匠の顔がどんどん険しくなっているぞ。えっと、えーっと……!
「わ、分からな……あうっ!?」
師匠の人差し指が、円を描くように敏感な部分に直接触れる。同時に膣内を中指で愛撫され、腹部にじんわりと熱が込み上げた。
「んっ、あ、うっ」
「……ナーシャ。一つ、問おうか。俺がお前以外の女と抱き合っていたらどうする」
「へ、ほ、他の?」
師匠が……他の女の人と抱き合う……?
頭の中に浮かぶ、師匠と顔にモザイクが掛かった女性の姿。二人見つめ合って、仲睦まじく抱き合って、そのまま、あっ、あっ、あっ。
「い、嫌です!」
思っていた以上に大きな声が出てしまった。師匠は分かりやすく大きな溜め息を溢し「そういうことだ」と呟くと──
「ひゃうっ!」
蕾を上下に弾き、膣内を指の腹でぐっと押し上げた。同時に敏感な部分に刺激を与えられ、壁に沿ってずり落ちるようにへたり込む。
師匠は私に目線を合わせるように屈むと、自らの太股の上へと私の身体を抱き寄せた。
「ナーシャ。どうして欲しい」
熱の帯びた瞳で真っ直ぐ見つめられ、身体が震える。
指だけじゃ、足りない。もっと深くまで、熱が欲しい。奥まで突いて、ぶつけて、昨日愛し合った時みたいに──
「し、しょ……の……しいで……」
「聞こえないぞ」
服越しに聳える師匠を求めるように股関を密着させ、無意識に秘部を擦り合わせてしまう。身体を、脳を、侵食していく快楽が、理性が段々と薄れさせていく。もう身体は我慢の限界だった。
「ししょ、んっ、のっ」
「何だ」
「師匠の、大きいの、あ、うっ、私の中に、くださ、いっ……!」
声を震わせながら、唇が掠る寸前まで顔を近付ける。そのままむにゅりと唇がくっ付き、師匠の熱い息が口内に落とされた。そしてあっという間に下の服を脱がされ──
「あ、っう!」
待ち詫びていたものが膣内を突き抜け、一気に奥まで達した。子宮の入り口が雄の先端に潰され、腹部を疼かせていた刺激が、雷のように身体に飛散する。
背中を反らせる私を、師匠は逃さないと言わんばかりに腰をぐっと抱き寄せた。はぁ、と息を漏らしながら瞳を細めて私を見つめる師匠の姿に、胸が苦しさに苛まれる。
「ナーシャ……っ」
「し、しょ……」
性器をより深くまで繋げようと、互いの恥骨をぐりぐりと押しつけ合う。そしてどちらからともなく腰を揺さぶり、互いの呼吸が乱れていった。
「はっ、あっ、うっ」
「ぐ、うっ、ナーシャ……」
半分抜かれては奥まで突かれ、何度も何度もそれを繰り返される。部屋に響き渡る肉と肉がぶつかり合う音が、一層行為を激しいものへと変えていく。
「ししょ、わ、たし、今、師匠と、繋がって、こんな、ことっ、はぁっ」
「煽る……なっ……」
師匠は息を切らしながら、私を押し倒す。身体を繋げた状態で、腰を打ち付け合って。ベッドが直ぐ側にあるのに、私達はこんな冷たい床の上で身体を求め合っている。下半身だけ晒して、こんな情けない姿で、でも、でも……!
「師匠、もっと、もっと……っ」
「はぁ、ナーシャ……」
師匠の腰に足を絡ませ、目の前の愛おしい顔を両手で包み込む。師匠はゴクリと喉仏を上下に動かすと、触れるだけの口づけを落とした。
「あ、んっ……」
ちゅっ、とリップ音を立てて交わされるキスが気持ち良くて、もう一回、またもう一回と求めてしまう。最後にもう一度だけ──と、師匠に自ら顔を近付けたその時、師匠の唇がゆっくりと開いた。
「ナーシャ。何故俺が怒っているか、分かったか」
……え?
そのお話、まだ終わってなかったの?
暫く黙り込んだ後、小さく首を傾げてみた。が、通用するはずも無く。師匠の顔がどんどん険しくなっていく。
「……もう少し分からせてやる必要があるようだな」
「えっ、あっ、あっ」
待って。何で師匠が怒っているか?
さっき、師匠は女の人と抱き合っていたらどうとか聞いていたけど、それとなんの関係が、って、あっ──
「きゃっ!」
思いっきり服を引き裂かれ、上半身までもが露に。師匠の不意の行為に呆然としている間に、身体を繋げたまま抱きかかえられ、ベッドの上へと連れていかれる。
「あ、ししょ、待って、や、やっ」
「駄目だ。お前は自分の無自覚ぶりを身体に染み込ませて覚えろ」
「あ、あっ」
師匠に身体の至るところを這うように触れられ、淫らな声が漏れる。
結局、師匠に身体を奥の奥まで貪られ、強烈な快楽に何度も蝕まれ──次に意識が戻ったのは、その日の夜となった。
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