双子の鬼(月読シリーズ)

風見鶏ーKazamidoriー

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後編

鬼神合一

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 熱く瘴気しょうきにまみれた精を流しこまれ、ふくれた腹は内側から浸食される。灼けつく重だるさをともない、月読つくよみは龍神の守りが次第しだいに弱くなるのを感じた。

多娥丸たがまるは時間をかけてゆっくり楽しんでいる様子だった。しかし時は無限ではない。

何者かが侵攻してくる不穏さを感じとった鬼たちは騒然そうぜんとして、とりでのどよめきが寝室まで伝わった。



「多娥丸よ、鬼平おにへいが洞窟まで攻めて来たぞ!! 」

 けたたましい声をあげて方鬼ほうきが部屋へ飛び込んできた。

「もう時間がないっ。従順にさせる呪具を作った、これを使うのじゃ!」

 多娥丸のやり方にしびれを切らした小鬼は、金属の板で作られた首輪のような物を取りだす。方鬼の作った呪具で人の精神を支配する首輪、つけられた者は意思を奪われ命令に逆らえない。方鬼が装着するため近づくと、舌打ちした多娥丸はその手から首輪を奪い取った。

「ちっ、わかってる。俺がつけるからよこせ」

 憔悴しょうすいして横たわる月読の首へ黒い手が伸びた。パチンと音がして、瞳はくもり表情がなくなる。鬼の長い牙が唇へ触れて、める舌の感触がした。感覚は失われていない。

状況は分かるものの、指一本自由に動かすことは出来ない。人形のようになった月読に、多娥丸は腹の中にある角を要求した。

隼英はやひでの角をわたせ」
「…………はい」
 心では否定しても言葉に逆らえなくて、月読は脇腹へ手を当てた。腹の辺りがまぶしく光って白い角が現れる。

白い角を両手でかかげ、黒い角をもつ鬼へ差し出した。

「とうとう一つになる時が来たのか」
 牙をみせて笑った多娥丸は、白い角をわしづかみ右額へあてがう。白い角は鼓動を脈打ち、額へ根をはるようにメリメリと喰いこんだ。

「おおお……」
 方鬼が感嘆の声をあげた。



 2本の角を生やした多娥丸から放出される気の質は変化して、相反する力が1つになりうずを巻いている。両角の間に電流がバチバチとぶつかり弾けて摩擦まさつを起こす。強大な力に空気が静電気をび、黒い鬼は青白く発光する。

 ほうけた表情で見ていた月読の首は大きな手につかまれた。

「これで用済みだな」
 首をつかむ手に力が入り、耳元で多娥丸の声がした。抵抗できない月読は助けられなかった千隼ちはやを想うけれど、最後に名を呼ぶことさえ出来なかった。

鋭い爪が首を引っいたので目を閉じる。ところが待っていても、一向いっこうに痛みも意識の途切とぎれもなかった。

ビッと音がして首が軽くなる、引き裂かれたのは首輪だった。

「人形みたいなのを抱くのはしょうに合わん」
 多娥丸だった者――白と黒の2本角の鬼は月読を抱きよせ、紙のように裂いた金属の首輪を床へ投げすてた。

静電気に触れたみたいに合わさった肌はピリピリとして、多娥丸はあきらかに変化を起こしていた。隼英の角を取り込むことで混ざりあい、白い角から右目まで根のように伸びた肌の色は白く、右の瞳はよく知る薄茶色へと変容した。

2種類の虹彩こうさいの異なる眼に見つめられ、月読は目を見開いたまま動けなくなった。



 多娥丸は身体を割りこませる。我に返った月読は抵抗しようとしたけれど、足首をつかまれ広げられた。向き合う姿勢でひらかれた足の付け根へ、たかぶった雄が押し当てられる。

黒い肉棒は、ズッとし込まれた。

「うああっ!! 」
 さっきまで抱かれていた身体は容易たやすく雄を根元まで受け入れる。黒い肉棒が最奥へ穿うがたれ、待ち望んでいた甘い感覚が背筋を這いのぼりよろこびへと変化する。

「はっ……こんな、いやだぁっ!! うあっ……ぁくっ! ――――ああっっ!! 」

 下から突かれるたび月読は先端から液体をはしたなくしたたらせ、多娥丸の強靭な腹へ濡れたすじをのこす。激しく突き上げられて下肢に淫らな悦びがあふれ、屹立きつりつしたものから熱い粘液をほとばしらせた。

背を弓のようにしならせ快楽にわななく月読を見て、多娥丸が唇の端を上げる。



 同じ体格に同じ顔。右角付近は白く変色して、なつかしい薄茶の瞳をのぞかせる。相手は多娥丸だと分かっていても、隼英に抱かれているような錯覚さっかくおちいった。

最奥を突かれる衝撃で意識も飛び、何かを口走って懇願こんがんしていたかもしれない。月読の頬を流れる涙を多娥丸の舌が沿う。

――――壊れる。

「がっ……くろっ……たすけ――」
 助けを求めて藻掻もがき伸ばした腕を黒い手が掴んだ。身体ごと手の平をシーツへ押しつけられて、指1本動かせないように組み合わされる。

駄目だめだ」
 爛々らんらんと目を光らせる鬼が耳元で笑う。

 快感の大きな波が月読の内側なかを押し上げた。精にぬかるんだ奥を突き上げられ、腰が打ちつけられるたびに絶頂を迎えた。知っている赤毛の男と同じ匂いで頭の中がフラッシュバックして、腸の内襞うちひだが突きあげる雄を包みこみ締め付ける。

「っあああ――――っっ!! 」

 月読は痙攣して背を弓のようにしならせる。多娥丸のたくましい腕に抱き留められ、腕の中で恍惚感こうこつかんひたる。

 熱く重い液体が最奥へ放たれた。
「――――っ……」
 快楽に満たされおとがいを仰け反らせた月読は、口の端から涎をたらし無防備に喉をさらす。腕の中でちゆく月読、多娥丸は――多娥丸だった鬼は満足そうに牙をのぞかせ笑った。



 要塞の門で何かが爆発する音がとどろく。

「来たか」
 2本の角の間で火花が弾け、不敵に笑った黒い鬼は立ち上がった。

 意識をうしない横たわる月読へ近づき唇を舐め取って、舌を差しこみ口付けを交わす。十分に堪能たんのうした多娥丸は、方鬼を連れて部屋から出ていった。
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