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第四章
パンツの話
しおりを挟む灼熱の杭が深く埋められている。
「うっ……あぁ、……ぁい、あっ……くっ……」
馴染まない硬い肉杭が、内がわの肉を擦りあげる。熱情に浮かさた頭はぼんやりして、口からは断続的に声がもれた。顔を見られたくなくて手で覆うと、腕を頭上で戒められてしまった。灼けつく肉杭は抜き挿しをくり返し身体の奥を穿つ。
「あぅっ――――ああっ」
「明っ……!」
「っ……あ……きら、と呼ぶ……な……っ」
突き上げられながら呼ばれた名に頑なな反応をしめした。けれども九郎は弱いところを責め、卵の殻をむくよう簡単に理性を剥がしていく。ますます腰の動きは激しくなり、意識が遠のき果てた。
彼の鍛えた体は赤く燃える鋼のごとき肉体だった。体内の熱を発散させるセックスとは違い、九郎との交わりは甘い疼きのようなものが奥底へ溜まる。熱を出した後にのこる疼きは月読を切なく震わせた。
そのまま眠ってしまい、熱い身躯に抱かれた体勢で意識は浮上した。布団のすきまへ流れる冷気に身じろぎ、ぬくぬくとした熱源を逃すまいと身を寄せる。
「あきら」
ひっそり囁く声がして目を開ければ、九郎は半身を起こした。部屋は明るくなって朝を迎えていた。寝ぼけ眼で見つめていたら瞼へキスされる。
「すまない。あとで起こしに来るからゆっくり休んでろ」
物欲しげな顔でもしていたのだろうか、優しげにほほ笑んだ九郎に頭をなでられた。布団を掛けなおした九郎は扉を静かに閉め、シャワーの音が遠く反響した。聞いているうち月読の意識は微睡み、ふたたび目を閉じた。
1日が終わり、日もとっぷり暮れる。風もない静穏な夜は星々が限りなく冴えていた。明日は厳しく冷えこみ霜柱が立つだろう。
湯気の立ちこめる浴槽へ沈むと芯から温まる。風呂をあがった後は脱衣所で保湿剤をつける。ほのかによい香りのする保湿オイルは叔父の会社の特注品、子供の頃から習慣的に塗っている。残り少なくなり、また新しい物を発注しなければいけない。
手を伸ばした棚が空で着替えを忘れたことに気付いた。髪の水分をしっかり拭い、タオルを腰へ巻いて脱衣所の扉を開けた。幸い月読のほかに誰も居ないので廊下へ足を踏みだす。
風呂へ入って温まり、肌寒さも感じない。
ガチャ。
東の裏玄関が開いた。
玄関で靴を脱いでいた九郎は一瞬動作を止める。月読はデジャブを感じて固まり、出来るだけ男前の笑顔で廊下を横切った。
「待て」
上着を脱いだ九郎が背中にピタリと張り付き、恐ろしい声が耳へひびく。ものぐさを説教されるのかと考えていたら、後ろから抱きしめられた。九郎はうなじへ顔を埋め、身ぶりとは裏腹にドスの効いた声がする。
「横着するなと言わなかったか? 」
「わかった、悪かった。せめてパンツだけでも履きたい……」
今さらだが、素っ裸の野性味あふれる姿が恥ずかしくなり懇願した。烏の屋敷へ出入りしている時は修練が終わってシャワー室へいっしょに通った。男同士裸を見られることなど当り前で意識もしていなかった。
ゆっくり解放され、タンスを開け素早くパンツを身に着ける。浴衣を取り出したところで再び捕らわれた。本当にパンツだけだったかと、月読は項垂れる。
「前から思っていたが、お前、これ……」
パンツの横紐を引っぱられた。
月読が着けていたのは横が紐になってる股上の浅い褌パンツだ。際どいけど、いちおう尻は布地で隠れている。褌を着用しはじめたのはごく最近、それまではボクサーパンツを履いていた。
「着物に線が出ないし、最近のは意外と収まりが良くてな。蒸れないし快適だぞ」
月読は出来るだけ褌の良さを伝える。きわどいが収まりは良く通気性もいいのだ。
耳元で大きな溜息を吐かれた。
ふだん洋服を着ていたら確かに褌は履かない、九郎に大きなため息を吐かれた事で意気消沈する。ファッションカルチャーの相違かと思い至り、洋服のときは普通のパンツも履いていると言い訳のように付け加えた。
九郎の嘆息がもう1度聞こえる。耳に唇の体温を感じた。
「これは……反則だろう」
「え? 何が――――」
言い終わる前に横を向かされ唇が重なる。掌が敏感な部分を布越しにやさしく撫でさする。厭きれていたのではなく、ふんどしの誘惑で悩ましげに溜息を吐いていたらしい。
「そんなバカな……」
月読の嘆きは、九郎の唇にかき消された。
キスで下肢へ熱があつまり、むくりと反応を示した。隠すため身を捩るけれど、引き戻されて深く口づけられる。昂りに気づいた手のひらは硬くなった部分を包んだ。後ろから抱きつかれたまま腕に留められ、逃れられず身悶えする。
「見てみろ」
九郎が見るようにうながす。月読が恐る恐る視線をやると、陰茎は起ち布ごしに形がハッキリ分かる。布を押しあげて尖る先端はぬめりを帯び染みていた。羞恥で顔を背ければ、待ち構えていたように九郎が口を吸う。
九郎の手は布越しにそれを握り、ゆるく扱いて弄ぶ。扱かれたものは張り詰め天を仰いだ。突っ張った布の湿りがひろがり、九郎がぬめりの先端を指でひっかく。
「ぅっ」
身体をずらそうとしたら強くつかまれた。九郎の手は布ごと握った手を激しく上下する。
「はぁっ……嫌っ――――あっ」
布をはさんだ焦れったい刺激に腰が浮き、快感を待ちのぞむ先端から熱い液体が迸る。あふれた粘液はさらに布地を濡らし、ぐしょぐしょになった褌の横紐を引っ張られた。
布はパサリと落ちる。身を覆うものが無くなり、月読の顔に含羞の色が浮かぶ。九郎の優しげな唇が背後からうなじへ落とされる。けれども後孔へ忍び寄った指に容赦なく貫かれた。
「あうっ」
窄まりを筋張った指で突かれ奥を広げられる。弱い分部を探るように責められて身体はビクリと跳ねた。立っていられなくなり目の前にあるタンスへ手を付くと、尻を突きだす前傾姿勢になった。
「まるで誘ってるみたいだな」
否定しようとしたら九郎の手が腰を引き、さらに尻を突きだす恥ずかしい格好になった。かたく反った肉杭が窄まりへ擦りつけられる。窄まりを押しひらく感覚に下肢へ電流がはしり背筋をしならせて震えた。
ゆるりと緩急をつけた肉の杭が内側を暴く。月読の欲望も張りつめ先端から涎みたいに雫を垂らした。焦れる月読は腰をよじるが、九郎の手がそこに触れることは無かった。イクことも出来ずもどかしくなり月読は腰を押しつけて動かす。
「あ……も、たのむ……おねが、い……」
羞恥心より肉の欲望が勝った。九郎の手で陰茎を扱かれ射精する直前、根元をきつく絞められた。
「あぐっ!? うぁ……やめっ」
イけずに根元へ熱が溜まる。後ろから突く肉杭の動きが速くなり、最奥を激しく穿ちはじめた。吐き出せない熱と後ろへ与えられる快感に板ばさみになり、抑えきれない甘い嬌声を出した。
「ああ――――っ、――――っっ!! 」
背筋がしなって内側が締まる。肉の杭は突いた最奥へ熱い液体を吐き出した。茎の根元を絞めていた指から解放され、白濁した蜜がドロリと溢れて陰茎をつたい流れる。
「っあ……ふぅ……」
月読は快楽の余韻で小刻みに身体を震わせる。溜まった涙を九郎の唇でちゅうと吸われ、幼い頃に戻ったような安心を感じた。
月読は顔半分を水面から出し、ブクブクと泡を吐く。けっきょく湯冷めして風呂に入り直す羽目になった。不満気な月読の髪を後ろから伸びた手が梳いて上方で括った。
「しっかり温まれよ」
「誰のせいだと思っているんだ!? 」
湯冷めした元凶が一緒に風呂へ入っていた。月読は抗議したけれど表情も変えない九郎は図々しくそこへ座っている。体格のいい男2人だと狭い、後ろから伸びてくる手をふり切って三角座りをした月読は溜息をついた。
後ろにいる男の体が触れると先程の行為を思い出し、恥ずかしさで顔を湯へ沈める。そんなことを繰り返しつつ冷えた体は温まってゆっくりとした時間が流れる。
今度は一緒に入ったせいで浴槽から出るに出られず、逆上せてぐったりとなった。
「のぼせたのに何故出なかった? 」
「……うるさい……お前が入ってるからだろ」
翻弄されっぱなしの月読は脱力しながら呟く。上半身を廊下へだして寝転び、板のひんやりした感触を味わう。九郎は持ってきたドライヤーで月読の毛を乾かしはじめた。髪を梳く指の感触が心地好くて目を瞑る。
「明、ここで寝るな。また湯冷めするぞ」
耳元できこえる声に返事をしたつもりで唸っていたが、ドライヤーの音は徐々に遠のき月読は寝息を立てた。
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