つくよみ閑話

風見鶏ーKazamidoriー

文字の大きさ
14 / 42
丙と弥彦と山の神さんのはなし

後日談2※

しおりを挟む


「――――あきら、あきらっ」

 頬をかるく叩く感触、少しのあいだ意識が飛んだようだ。黒い双眸がこちらをのぞき込んでいた。表情はかわらないのに、どうしてこんなに心配そうな顔にみえるのだろう。

 月読のノドは酷くかすれていた。

「……大丈夫……ちょっと飛んだだけだ」

「加減できなかった――すまん」

 消沈して声のトーンがおちた九郎は、やや視線を下へ向ける。余裕のなさを後悔している様子だけど、彼が自分を責めるいわれはない。

 よく分からない体勢で痛くなった腕を持ちあげ、下を向いた顔へふれた。まっすぐ視線がまじわり、体の奥へのこる熱がうずく。

たちのあいだで気をつかう必要はない」
「しかし」
「……気持ちよかったんだ。歯止めがきかなくて、めちゃくちゃだったのは俺もいっしょだ」
「――っ」

 抱きかかえた九郎の頭を引きよせ、彼も重みを胸元へあずける。繋がり、しばしの安息のときを得る。





「だるぃ……」

 月読は湯ぶねへかり、これ見よがしに後ろの男へ体重をかける。どうじない九郎は腰へ手をまわし、おちた髪をなでつける。

 湯ぶねのサイズを交換したから、体格のいい男2人でも余裕がある。ところがこの男たちは1カ所へかたまり、重なっているのだ。

「それで山の神が男か女か、という話か」

「そう。弥彦やひこが出会った女の人は、子だくさんの乙女な大イノシシだったって話さ。九郎はどうだ?」

「シカに狼と大蛇、老翁ろうおうとキツネの化けた女官……キツネは使いだな、今までに会ったのをげるとキリがない」

 そこへ住む者たちによって形を変える。山の神は元々そこへある何かが力をもち、ぬしや神格化された姿、根源が異なれば生き物とは呼びがたいモノも存在する。
 月読の知るなかでは、異様いような存在感をはなつ岩、土中の透明なブヨブヨ、御山おやまのオカミにしても生物とはかけ離れている。周辺の土地や空間を支え、一帯へ君臨するパワーをもつモノ。

「そもそも俺たちの認識する形が正しいとはかぎらないだろう……御山の龍神なら、しくみを教えてくれるのではないか?」

「オカミは、わりと本気で「わかんない」ってはぐらかされる予感がする。羽のおきなのほうが詳しいんじゃないかな? 聞きたいときは絶対に現れないけど」

 当りまえに在るがゆえ深く追求することはない、真理へたどり着くのは何時だって持たざる者たちだ。
 笑った月読は九郎へもたれかかる。湯はぬるくなり、おい炊きのスイッチが入った。

「そろそろ上がろう」
「……お先にどうぞ」
「この体勢なら、明が先でいいだろう?」
けるから、さっさと上がれって」

 まっ赤になった月読は湯ぶねを転がり脇へしずんだ。いまさら尻や前をさらすのが恥ずかしいとは言えない。
 眉をしかめた九郎だが、湯ぶねを上がり脱衣所へむかった。シャワーでかるく流した月読もあとを追う。



 湯のぬくもりが恋しく、風呂を上がっても離れずにいた。座る九郎へ月読が倒れこみ、座イスはひっくり返る寸前でバランスを保った。乾いたばかりの髪を九郎がく。

「短いのも良かったが、だいぶ伸びたな」

 九郎が髪へ顔をうずめる。

 撫でられる感触は心地よかったけれど、気恥ずかしくなった月読は身を起こした。幼少よりの付き合い、よく知る間柄でも初々ういういしさは残る。学生の時分はこのような甘え方、絶対にしなかった。もっと小さいころは――――覚えてない。

 手首を引っぱられて、ふたたび身をあずけた。もの言いたげな彼はこちらを見つめ、しばらくして口をひらいた。

「どこを触られた?」
ひのえとの事は聞きたくないって言ったろ?」
「上書きしたい」
「おま……そういうトコあるよね」

 言うまで解放されない。丙とは何もなかった、ということもない。ためらったのち、話せば九郎は月読の手を下半身へみちびいた。
 すでに硬いものが手にふれる。どうしてこんな時にかぎって九郎は浴衣なのだろう。ほどけた帯、浴衣のあいまに鍛えた腹筋が見える。色気のないボクサーパンツなのがせめてもの救いだ。

「どうやって触った?」
「当てられただけだって」
「こうやってこすったのではないのか?」
「そんな事してな……って、なんで起ってるんだよ!?」

 手を重ねられったものを上下にこする。あまりの卑猥ひわいさに直視できなくて目を逸らせばアゴをつかまれた。ねっとりと舌がからみ、甘い吐息をもらす。

「つづきを話せ」
「すそに手を入れられて……」

 熱い吐息と、低い声が耳たぶをなでる。
 話すとおりにすそへ手が侵入し、布に隠された部分へふれた。体温がたかく骨ばった指の感触がつたわる。

「ひゃ! じかに……じゃない」

 抗議の声はちいさく消え、しごかれながら相手のものを握る。触れられたところは悦びにふるえ、熱くなった目じりを唇で吸われた。
 先端から半透明の液がたれて九郎の手を汚し、くちゅくちゅと音を立てた。

「すこし触られただけなのに、こんなに濡れてるのか? 我慢のできないヤラしい棒だ」
「……そんなコトない……あうっ、うっ」

 目じりへ涙を溜めたくらいでは、九郎はゆるしてくれない。蜜のあふれる部分を引っかき指先でいじる。さんざんなぶって強くしごいた。身を硬直させた月読は下半身を痙攣けいれんさせ、あっけなく果てた。

 ぐったりとしな垂れた月読は下へ誘導される。
 目のまえには屹立きつりつする男根、亀頭をあらわにして存在感をしめす。熱がつたわるほど近く、浮きでる血管の脈まで感じられそうだ。

 ゴクリと唾を飲むと、表情もかえない男は冷静に見ていた。

「欲しいか?」

 ためらっていたら頭を押され、屹立したものが頬と唇へふれる。

 ただの雄ではない、これは自分だけの男の匂い、堕ちるのは早かった。口を開け舌をのばすと、入浴剤の残り香がただよう。
 夢中で舐めまわし、奥まで咥えた。頭をおさえられて引くこともできず凶器がノドを突く。解放されるころ、よく知る男の味がノド奥へひろがった。

 口元を手でふさがれ、中にあるものを飲みこむ。鋭い双眸そうぼうがこちらを見ていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

【完結】エデンの住処

社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。 それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。 ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。 『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。 「兄さん、僕のオメガになって」 由利とYURI、義兄と義弟。 重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は―― 執着系義弟α×不憫系義兄α 義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか? ◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·

処理中です...