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丙と弥彦と山の神さんのはなし
後日談2※
しおりを挟む「――――あきら、明っ」
頬をかるく叩く感触、少しのあいだ意識が飛んだようだ。黒い双眸がこちらをのぞき込んでいた。表情はかわらないのに、どうしてこんなに心配そうな顔にみえるのだろう。
月読のノドは酷くかすれていた。
「……大丈夫……ちょっと飛んだだけだ」
「加減できなかった――すまん」
消沈して声のトーンがおちた九郎は、やや視線を下へ向ける。余裕のなさを後悔している様子だけど、彼が自分を責める謂れはない。
よく分からない体勢で痛くなった腕を持ちあげ、下を向いた顔へふれた。まっすぐ視線がまじわり、体の奥へのこる熱が疼く。
「俺たちのあいだで気をつかう必要はない」
「しかし」
「……気持ちよかったんだ。歯止めがきかなくて、めちゃくちゃだったのは俺もいっしょだ」
「――っ」
抱きかかえた九郎の頭を引きよせ、彼も重みを胸元へあずける。繋がり、しばしの安息のときを得る。
「だるぃ……」
月読は湯ぶねへ浸かり、これ見よがしに後ろの男へ体重をかける。動じない九郎は腰へ手をまわし、おちた髪をなでつける。
湯ぶねのサイズを交換したから、体格のいい男2人でも余裕がある。ところがこの男たちは1カ所へかたまり、重なっているのだ。
「それで山の神が男か女か、という話か」
「そう。弥彦が出会った女の人は、子だくさんの乙女な大イノシシだったって話さ。九郎はどうだ?」
「シカに狼と大蛇、老翁とキツネの化けた女官……キツネは使いだな、今までに会ったのを挙げるとキリがない」
そこへ住む者たちによって形を変える。山の神は元々そこへある何かが力をもち、主や神格化された姿、根源が異なれば生き物とは呼びがたいモノも存在する。
月読の知るなかでは、異様な存在感をはなつ岩、土中の透明なブヨブヨ、御山のオカミにしても生物とはかけ離れている。周辺の土地や空間を支え、一帯へ君臨するパワーをもつモノ。
「そもそも俺たちの認識する形が正しいとはかぎらないだろう……御山の龍神なら、しくみを教えてくれるのではないか?」
「オカミは、わりと本気で「わかんない」ってはぐらかされる予感がする。羽の翁のほうが詳しいんじゃないかな? 聞きたいときは絶対に現れないけど」
当りまえに在るがゆえ深く追求することはない、真理へたどり着くのは何時だって持たざる者たちだ。
笑った月読は九郎へもたれかかる。湯はぬるくなり、おい炊きのスイッチが入った。
「そろそろ上がろう」
「……お先にどうぞ」
「この体勢なら、明が先でいいだろう?」
「避けるから、さっさと上がれって」
まっ赤になった月読は湯ぶねを転がり脇へしずんだ。いまさら尻や前をさらすのが恥ずかしいとは言えない。
眉をしかめた九郎だが、湯ぶねを上がり脱衣所へむかった。シャワーでかるく流した月読もあとを追う。
湯のぬくもりが恋しく、風呂を上がっても離れずにいた。座る九郎へ月読が倒れこみ、座イスはひっくり返る寸前でバランスを保った。乾いたばかりの髪を九郎が梳く。
「短いのも良かったが、だいぶ伸びたな」
九郎が髪へ顔をうずめる。
撫でられる感触は心地よかったけれど、気恥ずかしくなった月読は身を起こした。幼少よりの付き合い、よく知る間柄でも初々しさは残る。学生の時分はこのような甘え方、絶対にしなかった。もっと小さいころは――――覚えてない。
手首を引っぱられて、ふたたび身をあずけた。もの言いたげな彼はこちらを見つめ、しばらくして口をひらいた。
「どこを触られた?」
「丙との事は聞きたくないって言ったろ?」
「上書きしたい」
「おま……そういうトコあるよね」
言うまで解放されない。丙とは何もなかった、ということもない。ためらった後、話せば九郎は月読の手を下半身へみちびいた。
すでに硬いものが手にふれる。どうしてこんな時にかぎって九郎は浴衣なのだろう。ほどけた帯、浴衣のあいまに鍛えた腹筋が見える。色気のないボクサーパンツなのがせめてもの救いだ。
「どうやって触った?」
「当てられただけだって」
「こうやって擦ったのではないのか?」
「そんな事してな……って、なんで起ってるんだよ!?」
手を重ねられ起ったものを上下にこする。あまりの卑猥さに直視できなくて目を逸らせばアゴを掴まれた。ねっとりと舌がからみ、甘い吐息をもらす。
「つづきを話せ」
「すそに手を入れられて……」
熱い吐息と、低い声が耳たぶをなでる。
話すとおりにすそへ手が侵入し、布に隠された部分へふれた。体温がたかく骨ばった指の感触がつたわる。
「ひゃ! じかに……じゃない」
抗議の声はちいさく消え、扱かれながら相手のものを握る。触れられたところは悦びにふるえ、熱くなった目じりを唇で吸われた。
先端から半透明の液がたれて九郎の手を汚し、くちゅくちゅと音を立てた。
「すこし触られただけなのに、こんなに濡れてるのか? 我慢のできないヤラしい棒だ」
「……そんなコトない……あうっ、うっ」
目じりへ涙を溜めたくらいでは、九郎はゆるしてくれない。蜜のあふれる部分を引っかき指先でいじる。さんざん弄って強くしごいた。身を硬直させた月読は下半身を痙攣させ、あっけなく果てた。
ぐったりとしな垂れた月読は下へ誘導される。
目のまえには屹立する男根、亀頭をあらわにして存在感をしめす。熱がつたわるほど近く、浮きでる血管の脈まで感じられそうだ。
ゴクリと唾を飲むと、表情もかえない男は冷静に見ていた。
「欲しいか?」
ためらっていたら頭を押され、屹立したものが頬と唇へふれる。
ただの雄ではない、これは自分だけの男の匂い、堕ちるのは早かった。口を開け舌をのばすと、入浴剤の残り香がただよう。
夢中で舐めまわし、奥まで咥えた。頭をおさえられて引くこともできず凶器がノドを突く。解放されるころ、よく知る男の味がノド奥へひろがった。
口元を手でふさがれ、中にあるものを飲みこむ。鋭い双眸がこちらを見ていた。
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