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4、あれ、この世界って……

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 気がつくと自室のベッドで寝ていた。
 手にぬくもりを感じて確かめると、ベットサイドでルイスが私の手を握ったまま静かな寝息をたてていた。
 そっと頭を撫でていると、「ん……」とくぐもった声をもらして目を覚ました。

「リィ! 大丈夫? 痛いところない? 僕のこと分かる?」

 起きた途端、私の顔を見るなりすごい剣幕で尋ねてきたルイス。大きなエメラルド色の瞳から今にも涙があふれだしそうなくらい潤んでいる。どうやらかなり心配をかけてしまったようだ。

「私は大丈夫だよ、ルイス。心配かけてごめんね」

 不安を拭ってあげたくて笑ってそう答えると、彼は安心したようにほっと息をもらした。
 あれから一週間、私は眠りっぱなしだったようだ。お医者様からの診察を受けていた頃、登城していたはずのお父様とお母様が血相を変えて駆けつけてくれた。
 温かい家族に包まれて、生まれ変わった私もやはり幸せだ。幸せだけど、翼の事を考えると胸が痛くて仕方なかった。

 (翼……)

 心にぽっかりと穴が開いているような感じがしたのは、前世の私の無念な思いから来ていたものだったようだ。
 小鳥が去って行くのを見て胸が痛んだのは、その姿を翼と重ねてしまっていたからだ。
 そして壊れたヴァイオリンを見て感じた既視感は、前世の記憶だったのか。

 最後に翼はなんて言っていたんだろう。私がこうして生まれ変わってしまったって事は、翼もきっと……助かってはない、よね。

 (楽しみにしてたのにな……結婚式。翼……つばさ……っ)

 左手の薬指を見たって、生まれ変わった七歳のリオーネである私の指には翼がくれた婚約指輪なんてあるはずがない。

 涙があふれて止まらなかった。全身の水分がすべて失われてしまうんじゃないかってくらい一晩泣き続けた。


 どれだけ泣いたって翼はもう帰ってこない。いつまでも泣いていたら家族に心配をかけるだけだ。それに、こんな姿を見たら翼だって悲しむだろう。

 進まなきゃ、前に……美月はもう死んだんだ。早すぎる死だったけど、最愛の人と一緒に最後を迎えたのなら、彼一人を残して寂しい思いをさせることもなかっただろう。家族や友達には申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、それだけは──不幸中の幸いだったのかもしれない。

 強くなろう。今生では、大切な人を守り抜けるように。もう二度と、こんな思いをしなくてすむように。


 翌朝、一晩泣きはらした顔は酷いものだった。侍女のメアリーに心配されらながら赤く腫れた目を、氷水につけた布で冷やした。
 クールダウンして、冷静になってそこでようやく私は重大な事実に気付いた。

 ここ、翼が好きだった「ウィーンブルクの錬金術士」に出てきた音楽の都と称されたウィルハーモニー王国──そのものだ。
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