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9、錬金術士は体力勝負
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エントランスまできて外に出ようとしたら、執事長のリチャードに呼び止められた。
「お坊ちゃま。そろそろ剣術の稽古のお時間です。どちらに行かれるのですか……って、お嬢様?!」
普段クールなポーカーフェイスを崩さないリチャードが、私が振り向いた瞬間あいた口が塞がらないのかぽかんとした顔でこちらを見ている。
確かにこの服装なら多少髪の長さが違ってもルイスと間違えられてもおかしくはない。
でも顔を見てきちんと見分けられるリチャードはすごいと思う。
「も、申し訳ありません。お嬢様。使用人として主を呼び間違えるなど言語道断。このリチャード一生の不覚。かくなる上は……」
何も言わなければ、人一倍責任感の強いリチャードのことだ。けじめと称してナイフを自らの胸に突き立てかねない。自殺願望でもあるのかと最初は驚いたけど、そういうわけではないらしい。
今は亡きとある島国出身である彼は昔、とても厳しい軍隊に所属していたとお父様から聞いたことがある。
行き倒れていた所をお父様が保護して屋敷に連れてきたらしく、その恩義から堅い忠誠を誓っていて、真面目すぎる性格故にミスが許せないようだ。
「驚かせちゃってごめんね。後でカンパーナが食べたいな。だから休憩の時にセシル先生の分も一緒に持ってきてもらえる?」
「かしこまりました。ですがお嬢様、この無礼を働いたけじめはきっちりと……」
「じゃあその時にとびりき美味しいハーブティーを作って。リチャードの煎れてくれるミックスブレンド美味しいから、楽しみにしてるね」
「勿体なきお言葉……誠心誠意煎れさせて頂きます!」
やった、休憩の楽しみが増えた。ミルクもブレンドしてもらおうっと。
玄関の扉を開けると、セシル先生がもういらっしゃっていた。私を見るなり笑顔で挨拶してくれる。今日も相変わらずの美人さんだ。
「こんにちは、リオーネ」
「こんにちは、セシル先生。今日も一日よろしくお願いします」
「はい、頑張っていきましょう。それではリオーネ、昨日話したとおりしばらくは体力強化を行っていきます」
先生は腰に下げた布の鞄から、小さな指輪を取り出した。
「これはステータスを視覚化出来るアイテム『真実の指輪』です。まずはこれをはめて『ステータスオープン』と心の中で唱えてみて下さい」
指輪……はっ、いかん。前世の事を思いだし思わずウルッときそうになった。今の私はリオーネだ。美月はもう死んだんだから。
先生から受け取った指輪を人差し指にはめて、言われたとおり『ステータスオープン』と心の中で唱えてみる。
すると、全身をスキャンされたかのようにぶわっと冷たい風か肌を掠めていった後、目の前に視覚的に表示された。
リオーネ
属性:古
冒険者レベル:1
錬金術レベル:1
HP:23/23
MP:30/30
STR:3
VIT:2
DEX:3
INT:5
LUK:4
状態:通常
本当に古の属性なんてあるんだ。属性の横に円のチャートグラフがあって今はまだどの属性にも伸びていない。努力すればこれを全て埋めることも可能なのか。改めて考えるとすごいな。
「その指輪はリオーネに差しあげます。錬金術を極めていけばもっと精度の高いものを作れるようになりますので、自分なりにカスタマイズしていくと良いでしょう。ちなみに、調べたいものに触れて同じように唱えると、アイテムの説明なども見ることが出来るので分からないものがあったら調べてみて下さい」
「はい、ありがとうございます」
それは便利だ。確かこの指輪、ゲーム内では素材の品質を確認するのに使ってたんだよな。品質の良い素材を使うことでより品質の高いアイテムが作れるから。序盤では手に入らない貴重なアイテムをありがとうございます、先生。
「冒険者レベルは身体を鍛えたり、モンスターを倒して経験値を貯めることによって上がります。それと連動してHP(体力量)とMP(魔力量)など他のステータスも増えます。錬金術では主にMPを消費しますが、体力が一定量ないとそもそも錬金術自体が出来ません。なのでしばらくは、その冒険者レベルを上げるための訓練だと思っておいて下さい」
「はい、先生」
「では、軽く走り込みからやっていきましょう」
それから、先生の後について広大なお屋敷の周りを三周ほど走った。
運動なんて週に二回、午前中のダンスレッスンしかしていない今の私にとって、もうそれだけの距離を走っただけでヘトヘトだ。すみません、錬金術士なめてました。
よくよく考えてみるとゲーム内の主人公達は最初、どこへ行くにも徒歩だ。何日も掛けてその道のりを歩き、行く先々でみつけた素材を調合して少しずつ便利な道具やアイテムを作っていく。
確かにこれは体力がないとやってられない。こんな序盤で挫けるなんて嫌だ。そんな気持ちとは裏腹に足が持ち上がらなくなってきた。
ステータスを確認すると私のHPが赤表示で3と書かれている。やばい、これ0になったら倒れるのかな? し、死んだりしないよね?
ゲームの中だと移動ぐらいじゃHPは減らないけど、現実だと削られる。運動すればするだけごりごり削られる。
まさか、これが難易度MAXといわれる理由だったのだろうか。移動だけでHPが減る仕様だったとしたら、回復アイテムの消費量が増える分、費用がかさむ。思っていたより現実はシビアだな。
でも、もうすぐレベルが上がりそうだ。後1! 後1経験値を手に入れたらレベルが2になる! 頑張れ自分!
鼓舞しながら一歩一歩足を踏み出すと、陽気な音が鳴って身体が軽くなった。
「おめでとう、リオーネ。レベルが上がりましたね」
「ありがとうございます、先生」
早速ステータスを確認すると、冒険者レベルが2になってHPが23→34、MPが30→45に増えていた。他のステータスは2~3程度伸びた感じだ。
それからまた走り込みを再開し、さっきまでは三周でヘトヘトだったのに五周まで走れるようになった。
限界の直前、先生が休憩を挟んでくれてリチャードの煎れてくれたミックスハーブティとカンパーナを食べたら体力が全快。走り込みを再開してその日は冒険者レベルを3まで上げることが出来た。
ゲームが現実になると、レベル上げは思った以上にシビアできつい。でも積み重ねていけば確実に強くなれる事が数値化して見える。それが楽しくて仕方なかった。
「お坊ちゃま。そろそろ剣術の稽古のお時間です。どちらに行かれるのですか……って、お嬢様?!」
普段クールなポーカーフェイスを崩さないリチャードが、私が振り向いた瞬間あいた口が塞がらないのかぽかんとした顔でこちらを見ている。
確かにこの服装なら多少髪の長さが違ってもルイスと間違えられてもおかしくはない。
でも顔を見てきちんと見分けられるリチャードはすごいと思う。
「も、申し訳ありません。お嬢様。使用人として主を呼び間違えるなど言語道断。このリチャード一生の不覚。かくなる上は……」
何も言わなければ、人一倍責任感の強いリチャードのことだ。けじめと称してナイフを自らの胸に突き立てかねない。自殺願望でもあるのかと最初は驚いたけど、そういうわけではないらしい。
今は亡きとある島国出身である彼は昔、とても厳しい軍隊に所属していたとお父様から聞いたことがある。
行き倒れていた所をお父様が保護して屋敷に連れてきたらしく、その恩義から堅い忠誠を誓っていて、真面目すぎる性格故にミスが許せないようだ。
「驚かせちゃってごめんね。後でカンパーナが食べたいな。だから休憩の時にセシル先生の分も一緒に持ってきてもらえる?」
「かしこまりました。ですがお嬢様、この無礼を働いたけじめはきっちりと……」
「じゃあその時にとびりき美味しいハーブティーを作って。リチャードの煎れてくれるミックスブレンド美味しいから、楽しみにしてるね」
「勿体なきお言葉……誠心誠意煎れさせて頂きます!」
やった、休憩の楽しみが増えた。ミルクもブレンドしてもらおうっと。
玄関の扉を開けると、セシル先生がもういらっしゃっていた。私を見るなり笑顔で挨拶してくれる。今日も相変わらずの美人さんだ。
「こんにちは、リオーネ」
「こんにちは、セシル先生。今日も一日よろしくお願いします」
「はい、頑張っていきましょう。それではリオーネ、昨日話したとおりしばらくは体力強化を行っていきます」
先生は腰に下げた布の鞄から、小さな指輪を取り出した。
「これはステータスを視覚化出来るアイテム『真実の指輪』です。まずはこれをはめて『ステータスオープン』と心の中で唱えてみて下さい」
指輪……はっ、いかん。前世の事を思いだし思わずウルッときそうになった。今の私はリオーネだ。美月はもう死んだんだから。
先生から受け取った指輪を人差し指にはめて、言われたとおり『ステータスオープン』と心の中で唱えてみる。
すると、全身をスキャンされたかのようにぶわっと冷たい風か肌を掠めていった後、目の前に視覚的に表示された。
リオーネ
属性:古
冒険者レベル:1
錬金術レベル:1
HP:23/23
MP:30/30
STR:3
VIT:2
DEX:3
INT:5
LUK:4
状態:通常
本当に古の属性なんてあるんだ。属性の横に円のチャートグラフがあって今はまだどの属性にも伸びていない。努力すればこれを全て埋めることも可能なのか。改めて考えるとすごいな。
「その指輪はリオーネに差しあげます。錬金術を極めていけばもっと精度の高いものを作れるようになりますので、自分なりにカスタマイズしていくと良いでしょう。ちなみに、調べたいものに触れて同じように唱えると、アイテムの説明なども見ることが出来るので分からないものがあったら調べてみて下さい」
「はい、ありがとうございます」
それは便利だ。確かこの指輪、ゲーム内では素材の品質を確認するのに使ってたんだよな。品質の良い素材を使うことでより品質の高いアイテムが作れるから。序盤では手に入らない貴重なアイテムをありがとうございます、先生。
「冒険者レベルは身体を鍛えたり、モンスターを倒して経験値を貯めることによって上がります。それと連動してHP(体力量)とMP(魔力量)など他のステータスも増えます。錬金術では主にMPを消費しますが、体力が一定量ないとそもそも錬金術自体が出来ません。なのでしばらくは、その冒険者レベルを上げるための訓練だと思っておいて下さい」
「はい、先生」
「では、軽く走り込みからやっていきましょう」
それから、先生の後について広大なお屋敷の周りを三周ほど走った。
運動なんて週に二回、午前中のダンスレッスンしかしていない今の私にとって、もうそれだけの距離を走っただけでヘトヘトだ。すみません、錬金術士なめてました。
よくよく考えてみるとゲーム内の主人公達は最初、どこへ行くにも徒歩だ。何日も掛けてその道のりを歩き、行く先々でみつけた素材を調合して少しずつ便利な道具やアイテムを作っていく。
確かにこれは体力がないとやってられない。こんな序盤で挫けるなんて嫌だ。そんな気持ちとは裏腹に足が持ち上がらなくなってきた。
ステータスを確認すると私のHPが赤表示で3と書かれている。やばい、これ0になったら倒れるのかな? し、死んだりしないよね?
ゲームの中だと移動ぐらいじゃHPは減らないけど、現実だと削られる。運動すればするだけごりごり削られる。
まさか、これが難易度MAXといわれる理由だったのだろうか。移動だけでHPが減る仕様だったとしたら、回復アイテムの消費量が増える分、費用がかさむ。思っていたより現実はシビアだな。
でも、もうすぐレベルが上がりそうだ。後1! 後1経験値を手に入れたらレベルが2になる! 頑張れ自分!
鼓舞しながら一歩一歩足を踏み出すと、陽気な音が鳴って身体が軽くなった。
「おめでとう、リオーネ。レベルが上がりましたね」
「ありがとうございます、先生」
早速ステータスを確認すると、冒険者レベルが2になってHPが23→34、MPが30→45に増えていた。他のステータスは2~3程度伸びた感じだ。
それからまた走り込みを再開し、さっきまでは三周でヘトヘトだったのに五周まで走れるようになった。
限界の直前、先生が休憩を挟んでくれてリチャードの煎れてくれたミックスハーブティとカンパーナを食べたら体力が全快。走り込みを再開してその日は冒険者レベルを3まで上げることが出来た。
ゲームが現実になると、レベル上げは思った以上にシビアできつい。でも積み重ねていけば確実に強くなれる事が数値化して見える。それが楽しくて仕方なかった。
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