悪役令嬢は隣国で錬金術を学びたい!

花宵

文字の大きさ
43 / 79

40、平常心! 平常心!

しおりを挟む
「おはよう。リィ、クマが酷いけどどうしたの? 具合悪いなら式典休む?」

 翌朝。部屋を出ると廊下でばったりルイスに会って、心配そうに顔を覗き込まれた。
 しまった、今日は建国記念式典があるんだった。クマは後でメアリーに隠してもらおう。

「おはよう、ルイス。大丈夫だよ。気になった事があって、あまり眠れなかっただけだから」
「何がそんなに君を悩ませたの? 僕に出来ることがあるなら言ってね」

 隠しても、ルイスには結局バレちゃうんだよな。心配かけるより、話した方が早い。そう思った私は、キョロキョロと周りに誰もいないのを確認して口を開いた。

「ルイス」
「うん、なんだい?」
「私が前世の話したの、覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「そこには『ゲーム』っていう架空の物語を楽しむ遊びがあって、物語の主人公になって色々行動することで物語を進めて遊んでいくの。その物語の登場人物に、私やルイス、リヴァイ、セシル先生が登場するよく似た物語があったって言ったら、信じてくれる?」
「もちろん、信じるよ」
「昨日の夜ね、そのゲームの中の物語で、衝撃の事実を思い出したの」
「衝撃の事実?」
「そう、リオーネってキャラがね……セシル先生と将来結婚してたの……」
「え、リィが先生と!?」
「あくまでも架空の物語の中でだよ。それを思い出して、一体何があってそうなったのか気になって、気になって、眠れなかったの」
「どうしよう、僕にはその答えは分からないや」
「私にも分からないの……」
「要するに、確認のしようがない物語の真相が気になるって事だよね?」
「うん、そんな感じ」

 ルイス、頭いいな。私の分かりにくい説明を瞬時に理解してくれた。

「仮説を考えるのはどう? 例えば二人には、錬金術っていう共通の趣味があるから、一緒に最高のアイテム作る約束して成し遂げてそうなったーとか」

 その世界線で、リオーネは錬金術には出会ってなかったと思うって説明するのもややこしいな。

「おはようございます。リオーネ、ルイス君。楽しそうに何の話をしているのですか?」
「おはようございます、先生」

 びっくりした。まさか先生が後ろから現れるとは。
 
「あ、先生! おはようございます。今ちょうど、架空の物語の中でリィと先生が結婚していたって話を……」
「ちょっと、ルイス!」

 慌ててルイスの口を塞いだ。

「あれ、先生もリィの前世知ってるんでしょ?」
「それはそうだけど……」

 それを本人に言わないで!
 先生はルイスより色々『ゲーム』の知識を知っている。
 ルイス的にはあくまで架空の物語の話だから、隠すことでもないって判断したんだろうけど――本人に聞かれたら恥ずかしいよ!

「興味深いお話ですね。リオーネの知っているゲームの中では、私と君は結婚していたのですか?」
「……はい」

 うぅ、恥ずかしくて先生の顔が見れない。

「それは良い事を聞きました」

 でも心なしか、先生の声がいつもより弾んで聞こえたのは何故だろう?

「何でそうなったのか、理由が分からないって言うから仮説を考えて遊んでたんです」
「私もその遊びに参加してもいいですか?」
「え、先生も?!」
「わー面白い! 本人から聞けるって、面白いよ、リィ!」

 ルイス、楽しんでるな。

「それでそれで、先生の見解は?」

 先生は何て答えるのだろう。

「そうですね。その架空の物語の中で私は、リオーネのひたむきに真っ直ぐ頑張るところを応援したくなり、錬金術を誰かのために役立てようとする優しい姿勢に感銘を受け、年齢に似つかわしくない大人びた思考や言動で時には諭し驚かせてくれる、そんな彼女と過ごす日々が、刺激的でとても楽しかったのでしょうね。だからリオーネと共に、もっと錬金術を楽しみながら歩んでいきたかったのではないかと思います。それで私から、プロポーズしたのではありませんか?」

 まるで自分の事を言われているような気がして、無性に恥ずかしくなった。心臓がバクバクしてる。
 だって先生は知っているはずだ。ゲーム中のリオーネは奇跡の双子と称されるヴァイオリンの名手であった事を。錬金術を学んでないことを。

「確かに! 先生の見解が説得力ある! リィはどう思う……って、リィ顔が真っ赤だよ!?」

 もしさっきの発言が、先生の本音だったとしたら……? いやいや、あくまでも先生は遊びに付き合ってくれただけだ。架空の物語の中でって前置きしてたし。真に受けたらだめだ。平常心、平常心!

 ゲームはゲーム、現実は現実だ。
 ゲームの物語は、あくまでもたくさんあるうちの一つの可能性を示した未来にしか過ぎない。それを現実に無理やり当てはめて考えるから、おかしくなってるんだ。

「架空の物語でも、何だか想像したら恥ずかしくなっちゃった。だからこの話はもうおしまい! 先生、アトリエに私が作りたいアイテムの設計図を置いているので、後で確認してもらってもいいですか?」

 普通に話せてるかな? 若干声が上ずってしまったような気がしないでもないけど、これ以上この話題に触れちゃダメだ。心臓に悪い。

「ええ、もちろんですよ。今日は確か、建国記念の式典がある日でしたね。講義はお休みにしましょう」
「はい、分かりました」
「そういえば、後でリヴァイが迎えに来るって言ってたよ」
「え、わざわざ?! 王城で開かれるのに?!」
「少しでも、リィと長く過ごしたいんだってさ。愛されてるね」
「もぅ! からかわないでよ」

 私は誓った。ルイスに良い人が出来たら、目一杯からかってやろうと!

「あはは、ごめんごめん。そろそろ食堂に行こうか。遅いとリチャードが呼びに来るし」

 噂をすれば、リチャードの姿が。

「朝食の準備が出来ております。皆様、そろそろ食堂の方へお願いします」
「うん、分かった。ほら、やっぱりね」

 式典に参加するのは億劫だけど、今は外に出れて良かった。変に意識してしまって、先生の顔がまともに見れない。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!

くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました! イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。 あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!? 長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!? 二人共あの小説のキャラクターじゃん! そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!! へっぽこじゃん!?! しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!? 悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!! とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。 ※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。 それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください! ※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい ※不定期更新なります! 現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...