盲目の公爵夫人

たかはし

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そもそもの始まり

ようこそ、異世界へ

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「おはよう、麻理」

 背後からパタパタと走る音がして振り返ると、親友の小山田 夏穂が声を掛けてきた。

 小さな山々に囲まれるこのクソど田舎で唯一の友人である夏穂は、身長も152cmと小さく、おまけに程よく長さのある上向きまつ毛に縁取られたクリクリなおめめ、ぷっくりとした形の良い唇と何とも可愛らしい美少女である。
 対してわたし、鈴木 麻里はというと、167cmという女にしては高い身長に一重、薄い唇と、夏穂とは正反対な見た目をしている。
 吹奏楽部に入っている夏穂に対して陸上部に入っているわたしは、小麦色を通り越してガングロという程肌が焼けている。色白な夏穂を見て羨ましいと感じることもあったが、陸上はそれ以上に楽しいのでもうそう思うことも辞めた。

 そんな正反対なわたし達は、周りに不思議がられる程仲が良い。家が近いのもあるが、ウマが合うというか、可愛らしい見た目に反してサバサバした性格の夏穂とは話していて楽だし楽しいのだ。

 わたし達の住んでいる町は、本当に何も無いところだ。スーパーが1軒あるだけで、一番近いコンビニまで歩いて1時間弱。遊べるような公園もないため、わたしの遊び場は山の中だった。木に登ったり、虫を追いかけ回したり。男の子のように遊んでいたため、町に住むご老人達からは中学に入るまで男の子だと思われていたくらいだ。
 町にある唯一の小学校は全校生徒合わせて5人で、ついに運営できなくなったのか5年生の時に隣町の小学生と合併した。他所から来たわたし達を、最初は皆歓迎してくれた。
 しかし可愛らしい夏穂が人気になり、大人しい性格で地味なわたしがいじめられるのにそう時間はかからなかった。
 小学生は残酷だ。「楽しそうだから」という理由だけで全員参加する。隣の隣のクラスの子までわたしのことを無視したり、ばい菌扱いしたり。わたしが怯えるのでいじめっ子はさぞかし楽しかっただろう。
 さすがにそこまで思いつかなかったのか教科書が破れたり体操服に落書きされたりはしなかったから親には幸いバレていなかった。言えるわけがない。自分の子どもがいじめにあっているなんて知れたらお母さんに
 そんな時夏穂はというと、もちろんわたしを心配してくれた。クラスが違ったため最初はバレなかった。というより、可愛い見た目に反して気の強い夏穂に逆らえなかったようで、夏穂にバレないようにわたしのことをいじめていたのだ。
 それでもわたしと夏穂は幼なじみで、夏穂はわたしの異変にすぐ気づいた。いじめっ子に注意してくれたようだが、注意されたいじめっ子は逆上して更にいじめは酷くなった。
 上履きを隠され、掃除を押し付けられる。窓ガラスを割ったのをわたしのせいにされたこともあった。

 そんなことが1年くらい続いた。6年生に上がった時に夏穂と同じクラスになったことでいじめはパッタリなくなった。後から聞いた話だが、夏穂が主犯を呼び出してくれたらしい。
 6年生の時は穏やかに過ごした。夏穂は過保護になりわたしと一時も離れくなった。

 それからわたしは人と深く関わることを辞めた。夏穂以外の人間が怖く感じるようになった。あんなに無視してきた子達が普通に話しかけてくるのが恐ろしい。
 表面だけ笑っていれば、人間関係を難なく過ごせることに気づいたので、常に笑っているようになった。
 そして無事にわたし達は中学生になり、2年が経つ頃だった。


 夏穂と一緒に片道1時間の通学路を歩いていると、突然耳障りな音が辺りに響いた。
 通学路とは言えほぼ山道で、辺りに建物はほとんどない。音が鳴っているのは森の奥の方のようだ。

「な、何この音」
「麻里も聞こえる!?何これめちゃくちゃ耳痛い!」

 不快なほど高いキーンという音は、夏穂にも聞こえているらしい。夏穂は痛い痛いと言いながら耳を塞いでいる。
 しばらく音のなる方に目を凝らし、耳を塞いでいると、音がはたと止んだ。と同時に森の奥から光が漏れだした。相当光っているのか、木々の間からここまで光が届いている。
 その光は眩しい程光っているが、不思議と優しい光に見えた。本能が求めている感じ。上手く言えないけど、どうしてもその光に包まれたいと思ってしまっていた。
 不自然なほど光り輝いている森に、わたし達は惹かれるように入っていった。


「ここら辺だと思うんだけど…」

 森の中の道とは呼べない道を進み、脚に擦り傷ができ始めた頃、光源である場所にたどり着いた。わたし達はこの後ある学校のことは頭になかった。とにかく、街灯に群がる蛾のように、フラフラと惹かれるように光を追いかけていた。

 たどり着いたそこは、不自然に拓けていて、地面に光で書かれた魔法陣のようなものが書いてあった。突然現れた非現実的なものにわたし達は口を開くことすら出来なかった。
 この中に入ったら何かが起きることはなんとなく予想ができた。夏穂もそれは分かっているだろう。
 2人で目を合わせ、手を繋いだ。

 そしてわたし達は、光の中に飛び込んで行った。
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