おーばー!〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生前編】

文字の大きさ
22 / 150

三年生と一年生⑤ 一年生対一年生

しおりを挟む
 珠姫が凡退に終わったため、巧には打席が回らずに攻守交代をする。ここでピッチャーは代わるため巧の守備位置も変わった。

 ショートの晴がピッチャー、ピッチャーの秀はレフトへ、レフトの巧はショートに入る。巧は深い位置のゴロを捌いても内野安打にはなるだろうが、普通のゴロであれば問題なく処理できると判断して自らそのポジションに入った。

 続く三回表は八番の柚葉から始まる。柚葉はバランス型ではあるが、ややバッティングは苦手としているようだ。バッテリーも水色学園の二人、柚葉も晴の特徴を知ってはいるが、バッテリーも柚葉のことを熟知している。特に手こずることもなく、四球で三振に仕留めた。

 九番は未紗。未紗は晴に対抗心があるようで、それを逆手にとりボール球を先行させるものの見事に打ち損じ、ショートゴロに抑える。久しぶりの守備でちゃんと捌けるか不安ではあったが、肩が弱くなったというところ以外は今まで通りの捕球、送球と動作は体に染み込んでいる。

「ツーアウト、ツーアウト!」

 巧は指で示しながら叫ぶ。ブランクがあった中思い通りに体が動いたことが思ったより嬉しかったのか、いつもよりも大きな声を張っていた。

 しかし、続く打者は一年生チームでヒットを唯一打っている楓だ。上位打線は厄介だ、そうでなくとも一年生チームは人数が多いためどこで仕掛けてくるかわからない。

 楓に対する初球、内角高めのストレートだ。

「ストライク!」

 楓はピクリと反応するが、初球からの難しい球には流石に反応しない。

「天野さん、ナイスボール」

 巧が晴に声をかけると、晴は手を挙げて返事をする。

 二球目、今度は外角への緩い球だ。ボールはホームに近づくとググッと変化し、内角へ向けてカーブする。楓はそれを一打席目と同じように外側に足を踏み込みスイングする。

 ボールは鈍い金属音とともにレフト方向にフラフラっと上がる。ジャストミートとはいかず微妙な当たりだ。巧は打球方向とレフトの秀の動きを見る。秀はボールに向かって一直線だ。

「オーライ!」

 巧が叫ぶと秀はピタッと動きを止める。捕れるかどうか。微妙な打球ではあるが、秀が捕球してもヒットは確実だ。

 巧は打球に突っ込み、スライディングをしながら落下地点へと到達する。なんとか間に合い巧のグラブには打球が収まった。

「アウト!」

 セカンドの審判をしていた二年生チームの光が拳を挙げてアウトを宣言する。

「っし!」

 巧は難しい打球を処理できたことに小さく声を出し、心の中でガッツポーズをした。

「ナイスプレー」

 スライディングして捕球したため、座った状態となっていた巧に秀が手を差し出す。

「ありがとうございます」

 巧は差し出された手を取り立ち上がる。明鈴の選手ともこのように手を取ることはなかったが、秀の手は女性的な柔らかさはあるものの、掌はバットで出来たマメがあり、指先も硬く、その練習量を実感させられる。高校での三年間、そしてそれ以上小中学生の頃から積み上げられてきた努力の証だ。

 一年生には負けてられない。この一試合限りのチームを勝たせなければと実感する。

 そして、三回裏は巧からの打席だ。ベンチに戻るとグローブを外し、バッティンググローブをはめ、ヘルメットを被る。久しぶりの実践の打席に高揚感を隠しきれない。

 黒絵は続投だ。投球練習が終わり、巧は打席を踏み締める。練習とはいえこの場所に帰ってきた。それも打席勝負とかではなく試合でだ。

 初球、まずは一球見逃すのは決めていた。最初から来たのはチェンジアップで、甘めのコースだったがそれは見逃す。カウントはストライクを一つ点した。

「ふう」

 一旦打席を外し、体を動かす。再度打席に入るとヘルメットをしっかりと被り、足元をならす。バットを立てながらピッチャー、黒絵に睨みをきかせる。「ストレートを投げろ」巧は目でそう訴えかけた。黒絵も意図に気付いたのか、一度身震いするとニヤリと笑う。

 何打席も勝負した疲労や負けるわけがないという油断があった。しかし、黒絵は巧から一度三振を奪った。

 勝負だ。

 二球目。黒絵は振り被り、全体重を乗せて指先からボールを放つ。一瞬消えたかのように見えるが、それはストレートの球速やノビ、回転量が増しているということだ。以前に比べて確実にパワーアップしている。

 巧はもうその球をどう打とうかなんて考えなかった。ただ感覚のままに自分の信じたようにバットを振り切る。

 足を踏み込む。肘を畳む。足から腰、腕へと全身の力をバットに集約させる。

 ボールが来る。バットに当たる。そして、止まる。やがて反発する。

 黒絵から放たれた外角低めのストレートのは琥珀のミットに収まらない。弾丸ライナーで外野フェンスに到達すると、そのままボールは外野を転々と転がる。

「ライト!」

 打たれた。それを理解しいち早く声を上げたのは黒絵だった。ライトを守る未紗がボールを処理する頃にはすでに巧は一塁を蹴っていた。巧は余裕で二塁に到達すると、遅れてボールが二塁上まで届いた。

 中盤に差し掛かる三回裏。盛り上がりも落胆もそれほど大きなものではない。ただマウンドの黒絵と二塁上の巧は笑いながら睨み合っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ツルギの剣

Narrative Works
青春
 室戸岬沖に建設された海上研究都市、深水島。  舞台はそこに立つ女子校、深水女子高等学校から始まる。  ある日、深水女子高等学校の野球部に超野球少女が入部した。  『阿倍野真希』と呼ばれる少女は、ささいなことから本を抱えた少女と野球勝負をすることになった。  勝負は真希が勝つものと思われていたが、勝利したのは本の少女。  名前を『深水剣』と言った。  そして深水剣もまた、超野球少女だった。  少女が血と汗を流して戦う、超能力野球バトル百合小説、開幕。 ※この作品は複数のサイトにて投稿しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

処理中です...