おーばー!〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生前編】

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夏が来た。

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 ミーティングが終わり、辺りが暗くなっている中、帰路を辿る。

 隣にはいつものように珠姫がいた。

「もう私も引退かぁ……」

 感慨深いように珠姫は呟いた。巧はそんな珠姫の頭に軽くチョップを入れた。

「終わらせないよ」

 巧は怒っているわけではない。ただ、弱気な珠姫に喝を入れた。

「珠姫はまず、県大会と甲子園で打ちまくって、都道府県代表戦にも出て、日本代表になるんだ。それくらいの気持ちでやりなよ。弱気になってどうすんの」

 監督と選手という立場だが、一年生が三年生を諭すという状況は、この二人の関係を知らない人から見ればおかしな話だろう。……もっとも、二人が先輩後輩に見えるかは別としてだけど。

「俺はまだ終わらせたくない。来年も再来年も楽しみだけど、一試合でも多くこのメンバーで戦いたい」

 勝ち進めば勝ち進むだけ、新チームとして体制が整うのが遅くなる。しかし、強い相手と戦うということは、なにものにも変え難い貴重な経験でもあった。

「正直、私、まだ怖いんだよね」

 不安そうに話す珠姫。その口から溢れる言葉の続きを巧は黙って聞いていた。

「復活したってなってるけど、まだ練習試合の一試合だけ。公式戦でどうなるかはわからない」

 確かにそれは言う通りだった。

 絶対に大丈夫だという保証はどこにもない。

 それでも巧は自信を持って言い放った。

「珠姫は大丈夫だ」

 あまりにも自信満々すぎるこの言葉に、珠姫はキョトンとした表情を見せる。

「中学までの経験がある。それは間違いなく今でも珠姫の中で生きている。それで、イップスで打てなかった期間も何もしてなかったわけじゃない。中学の頃の栄光も、高校での挫折も、間違いなく珠姫の力になる」

 何もしてこなかったわけじゃない、ということが重要だ。

 実戦で打てなかったというところで、経験という点では周りよりも出遅れているだろう。しかし、人生を左右するような大きな挫折を味わったというのは、恐らく全国を探しても多くはない、下手すると珠姫だけが持っている経験だ。

 プロでも、何年も燻っていた選手が突然覚醒することがある。もちろん何かきっかけがある場合もあるし、日々の積み重ねがそうさせた可能性はある。珠姫はこの二年間貯めてきた経験と挫折がそうさせる可能性がないなんて、誰も否定はできない。

「俺が自信を持って何度でも言ってやる。絶対に珠姫なら大丈夫だ。……まあ、俺が言っても説得力ないかもしれないけどさ」

 まだほんの数ヶ月前までは中学生だった巧だ。人生経験は珠姫の方が二年も豊富だ。

 たった二年。大人になればこの二年なんてすぐにひっくり返るが、高校生の二年は大きい。

 巧だって実際のところ自信はない。それでもこうやって、選手が安心できるような言葉を投げかけることくらいならできる。

「それに、珠姫がまだダメでも、周りのみんながいるよ。みんなこの三ヶ月で成長してるし、頼りない人なんて一人もいない」

 巧は正直、みんなを侮っていたのかもしれない。ここ最近、そう感じていた。

 自分が中学時代に良い成績を残したという自負があるため、天狗になっていたのだろう。

 これくらいには成長してほしいな、と思っていたレベルを、部員全員が超えてきた。自分は他人を見る目がなく、自分の実力がまだまだだと痛感している。

 そして、背番号を発表してからというもの、それぞれ自分の立場をしっかりと理解していた。

 レギュラー陣は、自分がこの学校の、この部の代表なのだと、強くあろうとしている。

 そして、レギュラー番号をもらいながらもベストメンバー落ちした煌や光。レギュラー番号をもらえているということもあって、もしレギュラー陣から不調の選手が出れば自分が出れる可能性があるという意識で大会に臨む姿勢が見える。

 棗も、リリーフエースと言明しているため、自分の役割を全うしようとしながら、先発の伊澄や黒絵に食ってかかろうという勢いだ。

 鈴里は夜空に代わる守備力を持っている。そうでなくとも、白雪からショートの座を奪うことだってできる。

 代打の切り札と言った梨々香も、のんびりとしたように見えるが、心の中が熱く燃えているのはわかる。ムラっけのある調子が安定すれば、打撃だけでもレギュラーに入れる可能性を秘めている。これに関しては瑞歩も同じく、魅力の長打力を活かせば、亜澄と成り変わることだって可能だ。

 甲子園に出場した頃のエースが一年生の頃に背負っていた番号を現在背負っている黒絵も、伊澄からエースを奪うつもりだ。普段は自信がないような弱々しい雰囲気だが、マウンドに立てば一気に雰囲気が変わる。

 伊澄も黒絵も、自分がエースだと言わんばかりの威圧感を纏いマウンドに立つ姿は、紛れもなくエースの資質だ。

 これだけの人材がいて、不安になることなんてない。

「四番として一番適任なのは珠姫だ。俺も含めてみんなが珠姫を支える。だから珠姫もそのバッティングでチームを支えてくれ」

 これは巧個人の、珠姫に対するお願いだ。

 全員珠姫の事情は知っている。打てなくても誰一人責める人はいないだろう。だからこそ、珠姫には自分の思う通りにやって欲しい。

「珠姫は自分ができることをすれば良い。みんなそうだ」

 何でもかんでも自分一人でやろうとしなくてもいいのだ。それぞれに自分の役割があり、それを全うすることでチーム全体が回っていく。

 それはまるで大中小と様々な歯車が混ざり合って動く機械のようなもの。選手が歯車だ。

 そしてそこに、巧や美雪先生のように、潤滑油を差すことによってその歯車は回っていく。

 珠姫は小さく「……うん」と返事をする。

 気がつけば二人の足は止まっていた。それぞれ家まで徒歩で五分程のところだが、三分も歩けば二人の家の分かれ道だ。そこに立ち止まりながら話し込んでいた。

 巧が「そろそろ帰ろうか」と切り出そうとしたところ、先に珠姫の口が開いた。

「……もうちょっとだけ、一緒にいてくれないかな?」

 珠姫はジャージの袖をギュッと握りしめながら上目遣いでそう言ってきた。身長はそこまで変わらないが、俯いていた珠姫が顔を上げたことでこのような状況となっている。

 その仕草や表情で、巧はノーとは言えなかった。



 来た道を戻り、学校横にある公園のベンチに腰をかける。公園は周りには多少の遊具があり、その真ん中辺りは城跡となっている。階段を登った先にある城跡にあるベンチで二人は座っていた。

 二人の間には荷物が置けそうなくらい微妙な間が空いている。しかし、お互いそこには何も置かず、荷物は反対側に置いてある。

 しばらく無言が続いたが、やがて珠姫が口を開いた。

「何か楽しい話しようよ」

 先ほどまで暗い雰囲気だった珠姫が明るく笑い飛ばす。色々とプレッシャーを感じて悩んでいるところだろう、空元気にも見えるが、巧はわかった上でそれに合わせるようにして返した。

「楽しい話かぁ……。やばい、野球しかしてないから面白い話ないな」

 最近までテストはあったが、それ以外はほとんど野球に時間を費やしているため、特にこれといった話がない。

「そうだなぁ……。あ、コイバナとかは?」

 コイバナ……恋の話か。それを聞いて巧はドキッとする。つい先月、明音から初恋だったと明かされたことが頭によぎったものの、特に何もなく終わっている。勝手に話すことでもないため、巧はすぐに頭から振り払った。

「巧くんは好きな人とかいるの? それか昔の彼女の話とかでもいいよ」

 巧は自分の現状と過去を振り返る。改めて考えたところでそんな相手はいなかった。

「野球バカだから、俺。いなかったよ。珠姫はどうなの?」

 巧が聞き返すと、珠姫は黙り込んだ。……もしかしてそういう相手がいるのか?

 そう思ったが、それは杞憂に終わる。

「いませんよー。私も野球バカだから、むしろ野球という元彼と復縁したみたいなもんだよ」

 言い得て妙だ。

 確かに一度選手として挫折したところを別れたと例えるなら、ある意味復縁かもしれない。

「巧くんって結構モテそうだけど、告白とかもされないの?」

「んー、なくはないけど、なんか違うなぁって思って断ってる」

 巧が好きというよりも、野球で成功していて日本代表になっているちょっとした有名人が彼氏ということを自慢できるだろう、というような打算的な告白に感じるものも多かった。

 野球が一番で、彼女がいたとしても優先順位としては野球の方が上だったろう。そこを理解してくれそうな人がいなかったことや、いたとしてもそもそも巧自身がその人を知らないというところも断った理由だ。

「そういう珠姫はどうなんだ?」

 珠姫は美人だ。以前クラスメイトで男子野球部の春川透にも言われたが、顔が整っている。その上性格も良い。モテないはずがない。

「うーん、告白されたことはあるよ。でもなんか、そもそも私がその人たちに興味がないっていうのと、ただヤリたいだけなんじゃないかなぁって感じの人もいて即答で断ってる」

 珠姫の爆弾発言に巧は思わずむせてしまった。男子同士で下ネタを言っているのを聞くことはあるが、巧はあまり好まない。もちろん男子高校生なので興味はあるが、大っぴらにしたくもなく、友人とも下ネタで盛り上がりたいとも思わない。あまり耐性がないのだ。

「何? 照れてるの?」

 面白いものを見つけたと言わんばかりに珠姫の顔がニヤッとする。

「突然言われたから、そりゃビックリするよ」

 身近で、しかも昔から知っている女の子の口からそんな言葉を聞くとは思ってもいなかった。それもあって驚いた。

「女子高校生だし、それなりに知識はあるよ? 知識だけだけどね」

 意味深な感じで珠姫は言う。そして、「巧くんは?」と尋ねる時の表情は、暗くて見にくいが、照れていて赤いようにも見えた。

「あるわけないよ」

 そもそも彼女がいたことない時点でそんな経験があるわけはない。当たり前のことを当たり前のように返した。

「……ねえ、経験してみない?」

 突然の言葉に、巧は「……え?」と言うのが精一杯だ。

「キス、してみる?」

 巧は頭が真っ白になり、声が出なかった。目の前に見える珠姫の顔だけしか見えない。大きな目、長いまつ毛、そして……柔らかそうな唇。巧の心の中を珠姫が支配していた。

「……っあは、あはは!」

 二人は見つめ合っていた。……巧は頭が回っていなかっただけだが。

 そんな時に珠姫が笑い始めた。

「冗談だよ、冗談。ファーストキスはちゃんと彼氏としたいし」

 笑い飛ばす珠姫。からかわれた恥ずかしさから、巧は若干イラついた。

「純情な男子高校生の心を弄んで楽しいか?」

「巧くんにしかしないよ、こんなこと。なんか巧くんの反応面白かったし」

 なおも笑い続ける珠姫の頭にチョップを入れる。

「痛いなぁ」

「力入れてねぇよ」

 からかわれたのだ、これくらいのことをしても許されるだろう。

「まあ、彼女欲しくて仕方なくなったらモテる方法教えたげるから、お姉さんに言いなさい」

「珠姫も恋愛経験ないんだろ……」

 ここぞとばかりに年上をアピールしてくるが、何の威厳も感じない。

 変な雰囲気だったが、それもなくなった。ただ、巧は少しドキドキしてしまった。

 そんな気持ちを振り払うかのように、巧の携帯電話が震えた。

「ん、着信だ」

「え、彼女?」

 まだしつこく話をその方向に持ってきたがる珠姫に「いないって」と言いながら、巧は携帯を確認した。

「あ、神代さんだ」

 神代先生はゴールデンウィークに行った合同合宿で、一緒に合宿を行ったうちの一校、光陵高校の監督を務めている人だ。

 そんな人が『一体何の用だろうか?』と思ったが、この時期なので夏の大会のことだろう。そう思って巧は通話ボタンを押した。

「はい」

『あ、巧ー。久しぶり』

「お久しぶりです」

 友人に話しかけるように話す神代先生に、巧は普通に返事をした。

『今時間大丈夫だった?』

「あ、はい。大丈夫ですよ」

 隣にいた珠姫に一瞬視線を向けたが、巧はすぐに電話の方に意識を戻した。珠姫は不貞腐れている。

 しかし、神代先生の言葉で再び珠姫に意識が向けられた。

『珠姫の状態良くなったんだよね? 最近はどうなの?』

 皇桜との試合があってから神代先生と水色学園の佐伯先生には報告していた。あとは鳳凰寺院学園の白夜楓にも。

 ただ、簡単な報告ということもあって、その後が気になっていたのだろう。
 
「状態は良いと思いますよ。明後日の初戦次第ですけど。ちょうどそのことについて珠姫と話してたところです」

『へー、こんな時間に一緒にいるんだ? デート?』

 話の後半部分だけを抜き出して聞いてきた。時刻は……七時を回っている。六時過ぎには部活は終わっていたため、一時間は一緒にいたことになるだろう。

「そんなわけないですよ。家が近いんで話してただけです」

 わざわざ場所を移動して公園まで来ているので、家が近いということは関係ないことだが、それは伏せておく。

『そうか、それならとりあえず復活おめでとうと伝えといて』

 その声が聞こえたのか、珠姫は「ありがとうございますー!」と元気に返事をした。

『ところで、水色と鳳凰は初戦が先週だったけど、結果は知ってる?』

「はい、両方初戦は突破ですよね?」

『そうだね』

 司の一件があって以来、近藤明音とはたまに連絡を取っているため、その際に聞いていた。

 そして、休部状態だった鳳凰寺院学園についても、顧問が退任したことをきっかけに、離れていった部員がそれなりに戻ってきたという話を楓から聞いていた。

 ただ、戻ってきた部員は全員ではない。

 鳳凰寺院学園の背番号1には誰も登録されなかった。

 それでも先週の土日から始まった愛知県大会と京都府大会は、水色学園のエース平河秀、鳳凰寺院学園の実質現エースの三好夜狐の活躍もあり勝利を収めた。

 水色は五対一と誰が見ても内容だが、鳳凰は三対二と僅差での勝利だった。

 愛知県や京都府のように、出場校が多い都道府県は甲子園に合わせて早めに大会が始まる。

 明鈴と光陵、三重県と徳島県は同日に始まるが、三重県が六十二校、徳島県が三十一校と出場校の数が違い、徳島県の方が早めに大会が終了する。

 光陵高校は前年度の甲子園出場校ではあるが、春季大会では準々決勝で優勝チームに敗れており、ベスト4に終わっている。そのため、この夏の大会で一回戦が免除されるシード枠に光陵は入っていない。

『とりあえず、うちらも勝たないとだな』

 結局のところ、話はここに行き着く。水色と鳳凰が勝ち進むことは、間違いなく喜ばしいことなのだが、試合は自分たちにも迫っている。他校のことよりも、目先の自分たちのことを一番に考えないといけない。

「そうですね。甲子園で会いましょう」

『ああ、甲子園で会おう』

 その言葉を交わすと、神代先生は電話を切った。

 甲子園で会う。それは難しいことだが、やはり一番の目標と言ってもいいだろう。どのチームも目指すべき場所はそこなのだ。

「ねえ、巧くん」

 蚊帳の外にしてしまっていた珠姫から声がかかる。珠姫の方に視線を向けると、珠姫はジッと巧の目を見つめていた。

「……やっぱりなんでもない。そろそろ帰ろっか」

 何かを言いたそうにしていた珠姫が言葉を止めた。気になるところではあるが、言いたくなさそうな雰囲気で聞くのを憚られた。

「そうだな、帰るか」

 再び帰路を辿る。その間、二人は無言だった。



 私は巧くんが好きなのかもしれない。

 高校で再会してからふと感じていた。出会ったのは小学生の頃、その時はまだガキっぽくて弟のように思っていただけだった。

 ただ、私が怪我をしてから二年半は、怪我をした際に連絡を取ったキリで、一切連絡を取っていなかった。

 出会いも野球、それ以降の繋がりも野球だ。野球部のマネージャーをしていたとはいえ、選手でなくなり、野球を失った私がどんな顔して会えばいいのかわからなかった。

 そして連絡を取らなかった期間、巧くんは成長していた。

 男子中学生という成長期なので、当然と言えば当然だけど、それでも弟っぽかった少年が、立派な男になっていたというところで少しドキッとしてしまった。

 日に日にカッコいいと思う時が増え、いつの間にか好きだと気づいてしまった。

 野球が好きで、私も巧くんもお互い野球のことが一番だ。それでもお互いのことを一番に考えながらも野球のことも一番に考えられるかもしれない、ある意味矛盾だけど、私はそう思えた。

 他の人はどこか違うと感じた。

 だからこそ、からかい半分で言った言葉も、半分は本気だった。冗談で流すだけじゃなくて、最後にこの気持ちを伝えるべきか悩んだ。

 でも今はその時じゃないと思った。

 その時がいつ来るのかはわからない。

 私が引退したらなのか、
 プロになれたらなのか、
 それかもう野球を辞めて大学生になったり就職したらなのか、
 巧くんが卒業する時なのか、

 そもそもその時なんて来るのか。

 わからないけれど、大会前に浮き足立って伝える言葉ではない。結果がどうなろうが、巧くんも私自身も、集中しきれないだろうから。

 その時が来たら伝えよう。それか、このまま心の中にこの気持ちはしまっておこう。

 そう思いながらも、私は少し照れ臭く感情が抑えきれなくて、ベッドにダイブして枕に顔を埋めながらバタバタとしていた。



 帰宅してから巧はベッドに腰掛けながら、一息ついていた。

 多分、あのままお互いが本気になっていれば巧は平常心ではいられなかった。

 少なくとも三年生になって引退するまでは、というよりも部内で恋愛をするつもりはなかった。だからこそ先ほどの珠姫の態度には困惑していた。

 冗談のつもりだったのだろうが、もし本気なら断ることで珠姫が傷ついて試合に影響が出たら困る。それでも受け入れれば巧自身の采配に影響が出るだろう。

 とにかく、何事もなく終わったことに安心した。

 それよりも今は大会に集中だ。

 色々と悩むところではあるが、水色と鳳凰が初戦を突破していることを伝えて発破をかけよう。プレッシャーに感じるかもしれないが、初戦のプレッシャーで負けるようであればそもそも甲子園には行けないだろう。冷たいような判断かもしれないが、甲子園への期待があるからこそだ。

 巧が物思いにふけっていると、呼ばれる声がする。

「お兄ちゃん! 練習手伝ってー」

 部屋の外から妹のまつりの声が聞こえる。

「はいはい、今行くよ」

 まつりはシニアに所属しているが、シニアの練習は基本的に土日祝日だけだ。そのためまつりは中学校では陸上部に所属しているため、その練習が終わってから巧を誘って野球の練習をする。

 巧は中学時代には部活に所属していなかった。正確には校外活動部という形で、たまにボランティア活動をしながら基本的にはシニアの活動を優先していた。

 それでもシニアに入っている人は陸上部に入る人が多い。走ることが練習にもなるし、個人競技のため、リレーメンバーなどでなければ休んでも影響は少ない。学校側が理解してくれればそういった選択肢がある。ただ、巧は自分で練習をしたいために所属しなかっただけだ。

 まつりに呼ばれたため、巧は手早く準備を済ませて部屋を出た。

 今日はミーティングで動き足りないと感じていたため、ちょうどいい。

 家から出ると夜というにも関わらず、微妙な暑さだ。少し体を動かせば汗が滲む。

 巧が怪我をしたきっかけとなった中学最後の夏の大会からもうすぐ一年が経とうとしている。

 この暑さ。一年前のことを思い出しながら、巧は実感した。

 夏が来た。
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