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二回戦開始!
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二回戦、明鈴高校が後攻だ。
日程的な問題で今日も第一試合、二回戦一番最初の組み合わせだ。
そして、一回戦のこともあってか、ギャラリーが多い。
「相手に研究される可能性もあるから、手の内は出し尽くさない方がいい。かと言って負ければおしまいだから、危ないと思ったら全力でいこう」
巧は選手に声をかけた。これは主にピッチャーではあるが、バッターにも言えることだ。ピッチャーであればわかりやすく変化球の球種やキレ具合だが、バッターだと得意コースや苦手コースだ。バッターの場合難しいが、得意なところだけではなく、打てる時に打つという対策しか取れない。
それでも、極力自分たちの全ては見せたくない。こちらも研究するが、相手に研究されれば地力の差が出る。強豪ともなれば、流石に力量が勝っているとは声を大にして言えない。
昨年度に光陵が勝ち進んだ理由の一つとも言えよう。新設部でほとんどが一年生という異色のチームだ。予選の数試合だけでは完璧に研究しきれないため、隠し球が多くて勝ち進めたという理由もある。もちろんそれだけではなく、神代先生の采配や指導、選手の実力があってこそだ。
夜空や珠姫、伊澄、陽依のように元々注目されていた選手たちは以前のデータから研究されているだろうが、それでもパワーアップはしている。簡単には攻略させない。
「巧くん」
試合が始まろうとしている時、夜空に名前を呼ばれた。
「どうした?」
「試合前に、みんなに一言ちょうだい」
夜空がそう言うと、巧に視線を向ける全員と目が合った。
気の利いた言葉は言えない。それでも簡潔にただ一言だけを放った。
「勝ってこい」
試合が始まる。
初回、鳥田高校の攻撃は一番ショート長谷から始まる。
今回のオーダーは一回戦とほとんど変わらず、ピッチャーにエースではなく三番手の岡を起用してきたくらいで、それ以外は全く一緒だ。
どう攻めてくるのか。打ってくる選手のため、出来る限り定位置でいたいところだが、足を警戒してやや浅めの守備位置を取る。
『一番ショート長谷さん』
「プレイボール!」
場内アナウントとともに放った審判のコールによって試合が開始される。
初球は大切に、サインを交わし、司が構える。
陽依が振りかぶり、初球を投げた。
その瞬間だ。
「なっ……!」
長谷はバントの構えをした。セーフティバントだ。
陽依も初球から際どいコースに変化球。その球を長谷はバットに当てた。
「サード!」
バントの構えを見た七海は即座に前進していた。
三塁線ギリギリに転がる打球。七海はファウルゾーンから膨らむように捕球すると、すぐさま一塁へ送球した。
「セーフ!」
判定はセーフ。初球からの奇襲のようなバントに意表を突かれてしまう。
長谷も、俊足を警戒してやや浅めの位置を守っていたにも関わらず、強気にバントをしてくる。よほど足に自信があるのだろう。そして現に出塁している。
勝つために貪欲。それならこちらも勝つためにやることをやるだけだ。
『二番ライト坂井さん』
続く打者は二番ライト坂井。三年生だ。この選手も足が速いため、セーフティバントには警戒が必要だが、警戒しすぎて打たれれば一気に二塁まで行かれるかもしれない。
ここは陽依と司のバッテリーに判断を委ねる。
初球。外角高めのボールゾーンからストライクゾーンに入っていくカーブだ。バッターの坂井はこれを見逃してストライクとなる。
「攻めたなぁ……」
巧は思わず呟いた。カーブという緩い球を飛ばしやすい高めに投げるのは危険ではある。ただ、意図はわかる。
二球目、セットポジションから陽依が足を上げた瞬間……。
「走った!」
ファーストランナーの長谷が走る。盗塁だ。
しかし、二球目、全力でストレートを外したウエストボールだ。司は立ち上がり、ミットを引きながら捕球をする。そして、ミットに収まったボールを、そのまま流れるように持ち替えて二塁へと放った。
ノーバウンドで二塁上に待ち構えていた鈴里の足元、ランナーが滑り込めばちょうど足が来る位置、そこにほぼドンピシャで鈴里のグラブにボールが収まった。
「はぁ!?」
ファーストランナーの長谷は思わず声を上げた。それもそうだ。滑り込もうとした直前、滑り込むことすらできないまま、ボールを掴んだ鈴里にタッチされたのだ。
「アウトォ!」
見事に刺した。
恐らく、こちらが盗塁を警戒しているのを向こうもわかっていただろう。だから初球から走らず、いつ走るかわからないようにしていたのかもしれない。かと言ってカウントが増えればバッターが勝負しないといけないため、追い込まれる前には走っておきたいという心情もある。だからワンストライクとなった二球目に走ってきたと考えていいだろう。
司はそこまで考えて初球から入れていったと巧は考えた。
それでも甘い球であれば打たれてしまう。そのため、ウエストボールにも見える外角高めのボールゾーンからストライクゾーンに入れるようなカーブを選択したということだ。
もちろん初球から狙われていれば打たれていた。しかし、一回戦は伊澄だけで投げかっており、陽依は練習試合でもほとんど投げていない。データは中学時代のものしかない。一番の長谷が初球からセーフティバントを決めたため、球筋を見るためにも二番の坂井が出来るだけ球数を投げさせたいと考えるのも自然だ。
相手の考えを逆手に取った司の配球は見事と言える。もちろん、相手がそう考えてなければしてやられていただろうが、そうなっていても結果論だ。確率が一番高い選択をして、相手の考えを読んだ。
そして、俊足の一番打者、長谷の盗塁をいきなり刺したことで簡単に盗塁はさせないという意思表示をした。
これで相手も警戒してくるだろう。
ランナーがいなくなったところで陽依はバッターに集中する。
走ってチャンスを広げる、といういつもの攻撃パターンに失敗した鳥田高校の坂井は攻撃の方向性を失い、あえなく空振りの三振に倒れた。
『三番レフト水戸さん』
水戸はバランス型だ。基本的な攻撃は一番二番でチャンスを作ったり得点して、この水戸でさらにチャンスを広げる。それがいつも通りの攻撃だ。出塁を許しても四番で勝負するだけ。
そう思ったのが間違いだった。
二球を簡単に見逃してカウントツーストライク。追い込んでからの三球目。陽依が振りかぶって放った投球は、司のミットに収まらずに消えた。
「は……?」
ドゴンという打ち付けた音が響く。それは白球がバックスクリーンに直撃した音だった。
日程的な問題で今日も第一試合、二回戦一番最初の組み合わせだ。
そして、一回戦のこともあってか、ギャラリーが多い。
「相手に研究される可能性もあるから、手の内は出し尽くさない方がいい。かと言って負ければおしまいだから、危ないと思ったら全力でいこう」
巧は選手に声をかけた。これは主にピッチャーではあるが、バッターにも言えることだ。ピッチャーであればわかりやすく変化球の球種やキレ具合だが、バッターだと得意コースや苦手コースだ。バッターの場合難しいが、得意なところだけではなく、打てる時に打つという対策しか取れない。
それでも、極力自分たちの全ては見せたくない。こちらも研究するが、相手に研究されれば地力の差が出る。強豪ともなれば、流石に力量が勝っているとは声を大にして言えない。
昨年度に光陵が勝ち進んだ理由の一つとも言えよう。新設部でほとんどが一年生という異色のチームだ。予選の数試合だけでは完璧に研究しきれないため、隠し球が多くて勝ち進めたという理由もある。もちろんそれだけではなく、神代先生の采配や指導、選手の実力があってこそだ。
夜空や珠姫、伊澄、陽依のように元々注目されていた選手たちは以前のデータから研究されているだろうが、それでもパワーアップはしている。簡単には攻略させない。
「巧くん」
試合が始まろうとしている時、夜空に名前を呼ばれた。
「どうした?」
「試合前に、みんなに一言ちょうだい」
夜空がそう言うと、巧に視線を向ける全員と目が合った。
気の利いた言葉は言えない。それでも簡潔にただ一言だけを放った。
「勝ってこい」
試合が始まる。
初回、鳥田高校の攻撃は一番ショート長谷から始まる。
今回のオーダーは一回戦とほとんど変わらず、ピッチャーにエースではなく三番手の岡を起用してきたくらいで、それ以外は全く一緒だ。
どう攻めてくるのか。打ってくる選手のため、出来る限り定位置でいたいところだが、足を警戒してやや浅めの守備位置を取る。
『一番ショート長谷さん』
「プレイボール!」
場内アナウントとともに放った審判のコールによって試合が開始される。
初球は大切に、サインを交わし、司が構える。
陽依が振りかぶり、初球を投げた。
その瞬間だ。
「なっ……!」
長谷はバントの構えをした。セーフティバントだ。
陽依も初球から際どいコースに変化球。その球を長谷はバットに当てた。
「サード!」
バントの構えを見た七海は即座に前進していた。
三塁線ギリギリに転がる打球。七海はファウルゾーンから膨らむように捕球すると、すぐさま一塁へ送球した。
「セーフ!」
判定はセーフ。初球からの奇襲のようなバントに意表を突かれてしまう。
長谷も、俊足を警戒してやや浅めの位置を守っていたにも関わらず、強気にバントをしてくる。よほど足に自信があるのだろう。そして現に出塁している。
勝つために貪欲。それならこちらも勝つためにやることをやるだけだ。
『二番ライト坂井さん』
続く打者は二番ライト坂井。三年生だ。この選手も足が速いため、セーフティバントには警戒が必要だが、警戒しすぎて打たれれば一気に二塁まで行かれるかもしれない。
ここは陽依と司のバッテリーに判断を委ねる。
初球。外角高めのボールゾーンからストライクゾーンに入っていくカーブだ。バッターの坂井はこれを見逃してストライクとなる。
「攻めたなぁ……」
巧は思わず呟いた。カーブという緩い球を飛ばしやすい高めに投げるのは危険ではある。ただ、意図はわかる。
二球目、セットポジションから陽依が足を上げた瞬間……。
「走った!」
ファーストランナーの長谷が走る。盗塁だ。
しかし、二球目、全力でストレートを外したウエストボールだ。司は立ち上がり、ミットを引きながら捕球をする。そして、ミットに収まったボールを、そのまま流れるように持ち替えて二塁へと放った。
ノーバウンドで二塁上に待ち構えていた鈴里の足元、ランナーが滑り込めばちょうど足が来る位置、そこにほぼドンピシャで鈴里のグラブにボールが収まった。
「はぁ!?」
ファーストランナーの長谷は思わず声を上げた。それもそうだ。滑り込もうとした直前、滑り込むことすらできないまま、ボールを掴んだ鈴里にタッチされたのだ。
「アウトォ!」
見事に刺した。
恐らく、こちらが盗塁を警戒しているのを向こうもわかっていただろう。だから初球から走らず、いつ走るかわからないようにしていたのかもしれない。かと言ってカウントが増えればバッターが勝負しないといけないため、追い込まれる前には走っておきたいという心情もある。だからワンストライクとなった二球目に走ってきたと考えていいだろう。
司はそこまで考えて初球から入れていったと巧は考えた。
それでも甘い球であれば打たれてしまう。そのため、ウエストボールにも見える外角高めのボールゾーンからストライクゾーンに入れるようなカーブを選択したということだ。
もちろん初球から狙われていれば打たれていた。しかし、一回戦は伊澄だけで投げかっており、陽依は練習試合でもほとんど投げていない。データは中学時代のものしかない。一番の長谷が初球からセーフティバントを決めたため、球筋を見るためにも二番の坂井が出来るだけ球数を投げさせたいと考えるのも自然だ。
相手の考えを逆手に取った司の配球は見事と言える。もちろん、相手がそう考えてなければしてやられていただろうが、そうなっていても結果論だ。確率が一番高い選択をして、相手の考えを読んだ。
そして、俊足の一番打者、長谷の盗塁をいきなり刺したことで簡単に盗塁はさせないという意思表示をした。
これで相手も警戒してくるだろう。
ランナーがいなくなったところで陽依はバッターに集中する。
走ってチャンスを広げる、といういつもの攻撃パターンに失敗した鳥田高校の坂井は攻撃の方向性を失い、あえなく空振りの三振に倒れた。
『三番レフト水戸さん』
水戸はバランス型だ。基本的な攻撃は一番二番でチャンスを作ったり得点して、この水戸でさらにチャンスを広げる。それがいつも通りの攻撃だ。出塁を許しても四番で勝負するだけ。
そう思ったのが間違いだった。
二球を簡単に見逃してカウントツーストライク。追い込んでからの三球目。陽依が振りかぶって放った投球は、司のミットに収まらずに消えた。
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