おーばー!〜弱小女子野球部の監督に元最強選手の男子高校生が就任してハーレムになった件〜【明鈴高校女子野球部一年生前編】

文字の大きさ
100 / 150

VS中峰高校 真夏の白い雪

しおりを挟む
 私は打席に向かう。

 期待を背負って打席に向かう。

 私は二回戦で怪我をしている。それでもこの三回戦で出してもらった。その期待に応えたい。

 二回戦での怪我はもう大丈夫。硬球という石のような硬さのものが目の近くに当たって、そのショックで一時的に目はボヤけたけど、眼球に異常はなく、当日中には視力も戻っていた。

 もう大丈夫。それでも巧くんは心配してくれた。心配してくれるのと同時に、私の出たいという気持ちにも応えてくれた。

 そして、夜空さんにも心配をかけた。確かに至近距離での速い球だったけど、安全にゲッツーを狙うとなれば、その送球も納得できる。私が怪我をしてから夜空さんが落ち込んだということは、後から巧くんに聞いて、申し訳ない気持ちになった。私が捕り損ねたせいで勝手に怪我をして、夜空さんを悩ませたのだから。

 全部自業自得だ。夜空さんは悪くない。私のミスなのだから。

 夜空さんはもう普段通りで、私に謝罪をしてくれて、いつも通り話しかけてくれる。私も普段通りにしている。

 ただ、やはり自分のせいで迷惑をかけたのだから、自分ができる時に、しっかりと挽回したい。

 そして九番打者として打順を任された今、私にできることはただ一つだ。絶対にランナーを返してはいけない。フォアボールでもデッドボールでも、ただ自分が出塁するだけで、ランナーを返してはいけない。

 珠姫さんに、満塁で回すために。

 私は打席に入る。そして、バットを構える前に、全身の力を全て抜くように息をめいっぱい吐き切った。

 力が抜ける。そして、息を吸い込み、バットを構えた。

 リラックスできている。良い状態だ。

 相手ピッチャーを睨みつけ、初球を迎えた。

 初球、デッドボール覚悟で内側ギリギリにバットを構える私に対して、相手は内角を攻めてきた。

「ストライク!」

 審判のコールが響く。少し外れれば当たるかもしれない、そんなコースに相手は自信を持って投げ込んだ。

 内側で構えていれば、相手は内角のコースに投げにくい。しかし、その反面内角の球は打ちにくくなる。でも私はやめない。何がなんでも出塁するために、出来る限りの手段を尽くすのだ。

 二球目、今度も内角だ。しかし今度はやや低めに外れてボール球となった。

 ボールは見えている。

 ワンアウトランナー二、三塁。そして明鈴の一点リード。この状況に相手ピッチャーも絶対に点はやらないという気迫を感じる。

 出塁。出塁。出塁。

 私の頭の中はそれだけしかなかった。

 巧くんは、正式に入部する前から私に期待していてくれた。

 打てる二番バッター。それが私に寄せられた期待だ。しかし、私の実力がその理想には追いつかない。中学時代、私はなんの期待もされず、ただただ何も考えずに練習をして、普通に試合をして普通に負けた。そんな私をレギュラーとして使って、役目をくれた。

 ただ、なんとなくで野球をしていた私に、理由をくれた。

 単純かもしれないけど、嬉しすぎて、巧くんのことが好きなのかもしれないと思った。初恋なんてまだだから、ハッキリとは言えないけど、優しくしてくれて、期待してくれる、そんな巧くんの期待に応えたいと思うのは、仕方ないことだろう。

 期待に応えようと気持ちで三球目を迎えた。

 内角低め、今度は変化球だ。手元で動くカットボールに、私はそれを見送った。

「ストライク!」

 ワンボールツーストライク。追い込まれた。

 でも、このまま終わるわけにはいかない。ただ、一つだけ策はあった。それを実行するためには、余裕を見せてはいけない。ギリギリを狙っていると思わせなければいけない。

 この球が勝負だ。

 そして四球目、今度も内角低めに向かってボールはやってくる。

 このままでは打てない。

 だから私は賭けに出た。

 私は左足を踏み込んだ。内角のコースが拓ける。そして、その投球に合わせるようにして、私はボールを叩きつけた。

「サード!」

 叩きつけたボールのバウンドは高い。そうなるように狙ったのだ。

 私は一塁へと全力疾走する。そして一塁を駆け抜けた。

 送球はやってこない。ランナーは動かない。これでワンアウト満塁だ。

「よしっ」

 私は誰にも聞こえないように、小さな声で呟きながら心の中でガッツポーズを決めた。

 これで、満塁で珠姫さんに打席が回る。

 巧くん。期待に少しでも応えられたかな?



「おぉっ!」

 白雪の技アリの内野安打にベンチがどよめいた。

 それもそのはず、本来左打者の白雪が踏み込む足は右足だ。左足を軸にして、右足で踏み込み、体重を乗せて打球を放つ。それが本来の打ち方だ。

 しかし、今回の打ち方は、その常識を無視した打ち方だった。

 内側に寄って構えれば内角は打ちにくくなる。そしてコースを打ちやすくするために右足を外側に踏み込んだとしても、詰まった当たりか、ファウルになるだろう。ただ、今回の打ち方であれば、まるでど真ん中の球を打った感覚だっただろう。

 左足を軸にして、右足を踏み込むのが普通の打ち方だとして、つまり打つ前のバットを構えている状態であれば、左足に体重が乗り、右足は自由に動かせる。その右足をやや外側に白雪は置いていた。

 そして、左足をさらに外側に踏み込むことで、内角にスペースが生まれた。外側に軸足を置いて内側に踏み込んだような打ち方となった。

 もちろんそんな打ち方をすれば、力は入らない。ただ、今回に限っては、外野へ運ぶのではなく、内野に叩きつけることが目的だったため、なんとか打つことができたというところだろう。

 そして、サードランナーの光の動きも良かった。

 飛び出して本塁へ突入するように見せかけて、三塁へと戻っている。そして飛び出しすぎた光を刺そうと、相手サードは、三塁へベースカバーに入ったショートに送球している。光の足が速いからこそ、その送球を誘えたのだ。

 ただ、一つだけ、美雪先生が疑問を投げかけた。

「光ちゃんが還れば一点なのに、良かったの?」

 今の打球、際どいながら光なら還れただろう。しかし、巧は事前に、「ホームに還るな」と言ってあった。これは美雪先生も知っているが、何故そのような指示をしたのかわからないといった様子だ。

「塁が空いてたら、珠姫は敬遠されますから。ランナー一、二塁だと普通は敬遠しないですけど、万が一のことを考えて、ですよ」

 もし光が還ってきていれば、珠姫を敬遠しても得点には繋がらなくなる。しかし……、

「満塁なら敬遠しにくいですし、したとしてもこっちとしてはさっきのプレーで光が還ってきたのと同じ状況になります」

 一点を追加してランナー一、二塁となった状況で珠姫を敬遠すれば、結果的に一点を追加して満塁で由真を迎える。

 今の状況で珠姫を敬遠しても、一点を追加して満塁で由真を迎えるため、同じ状況となる。

「じゃあ、ヒットでも返さなかったの?」

「いや、それだと相手を舐めてる侮辱行為にも捉えかねないので、あくまでも『無理して還らなくてもいい』ってだけの指示です」

 そんなプレーをしてしまえば、観客や他校からも批判を浴びる可能性もあるだろう。勝つためとはいえ、学校の代表として、学校を背負ってプレーしている以上、そんな真似はできない。

「巧くんって結構大人?」

「まだまだ子供ですよ。でも最低限守るべきことは守りますよ」

 学校のイメージが悪くなれば、今後の新入生が入学することに躊躇したり、練習試合も組みにくくなる。そんな打算的な理由もあった。

 美雪先生は納得し、話はこれで終わる。

 白雪の策と光の走塁のおかげで、満塁で珠姫に回すことに成功した。

「ここからは、珠姫の領域だ」

 チームの期待を背負い、珠姫は打席を迎えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...