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すれ違い
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朝の6時半、携帯の着信音で目を覚ます。着信画面には君の名前。迷わず拒否を押し、ボソッと声を漏らす。
「あぁ、怠いな。」
通話履歴には数十件の通知……もう別れたはずなのに。待ち受け画面にはベゴニアの花があの頃のまま、ずっと咲いている。
あの頃って一体何だったっけ?何故、君と付き合ってたんだっけ?そんな気持ちが頭をよぎる。確かに好きではあった。でも、「恋」だとか「愛」のか、そんな綺麗な一言では片付けられない、言葉にできないものがそこにはある気がしてやまない。
とても深いため息をついて、冷蔵庫を開ける。中にはミルクとお酒、卵とちょっとした調味料、ただそれだけ。腹の足しになるものを買うために外に出る。薄いTシャツにすすけたズボン、ボロボロのスニーカーで都会にくり出した。雲が鉛のように重い点をあおぐ。真っ暗な心の中、たった一つの考えがよぎった。
「俺ってなんだ?」
家に着いて、ドアを開ける。真っ先に目についたのは散らかったリビング。ティッシュまみれの床に、机の上はビールの空き缶がたくさん倒れている。改めて自分の家がとても汚いことに気づいた。買ってきたカップラーメンにお湯を入れて3分待ちながら思った。
「こんな俺を見たら、君はどう思うのかな?」
いつもそうだった。それは同棲してた時も変わらない。部屋を汚す俺に対し、いつも腹を立てていた君……ごめん。そんな記憶と楽しかった思い出が蘇る。遊園地や水族館、そのようなベタなスポットで見た、君の笑顔がとても可愛らしかった。お家デートで見せてくれた、君の頭は何か新鮮だった。そうか、あの頃付き合ってたのは、単なる「愛」とか「恋」とか「好き」っていうわけではなく、君と居た日々が「楽しい」ものであって、「幸せ」だったんだ……。それに気づいた時、耳の近くで
「やっと分かってくれたんだ。」
と、そう聞こえた気がした。
そこから数日後の話だ。君が吐血をしたと聞いて、急いで君のもとへ行った。なのに、もう手遅れみたいだ……。先に着いてた医師が、申し訳なさそうな顔をして俺に言った。
「残念ながら……。」
この一言で俺は全てを察した。もう君はこの世に居ない……。イヌサフランの咲く原、現実なんて受け止められないままで、まだ、どこかで君が生きてることを信じたくて、俺は、今日も1日1日を過ごしている。
「あぁ、怠いな。」
通話履歴には数十件の通知……もう別れたはずなのに。待ち受け画面にはベゴニアの花があの頃のまま、ずっと咲いている。
あの頃って一体何だったっけ?何故、君と付き合ってたんだっけ?そんな気持ちが頭をよぎる。確かに好きではあった。でも、「恋」だとか「愛」のか、そんな綺麗な一言では片付けられない、言葉にできないものがそこにはある気がしてやまない。
とても深いため息をついて、冷蔵庫を開ける。中にはミルクとお酒、卵とちょっとした調味料、ただそれだけ。腹の足しになるものを買うために外に出る。薄いTシャツにすすけたズボン、ボロボロのスニーカーで都会にくり出した。雲が鉛のように重い点をあおぐ。真っ暗な心の中、たった一つの考えがよぎった。
「俺ってなんだ?」
家に着いて、ドアを開ける。真っ先に目についたのは散らかったリビング。ティッシュまみれの床に、机の上はビールの空き缶がたくさん倒れている。改めて自分の家がとても汚いことに気づいた。買ってきたカップラーメンにお湯を入れて3分待ちながら思った。
「こんな俺を見たら、君はどう思うのかな?」
いつもそうだった。それは同棲してた時も変わらない。部屋を汚す俺に対し、いつも腹を立てていた君……ごめん。そんな記憶と楽しかった思い出が蘇る。遊園地や水族館、そのようなベタなスポットで見た、君の笑顔がとても可愛らしかった。お家デートで見せてくれた、君の頭は何か新鮮だった。そうか、あの頃付き合ってたのは、単なる「愛」とか「恋」とか「好き」っていうわけではなく、君と居た日々が「楽しい」ものであって、「幸せ」だったんだ……。それに気づいた時、耳の近くで
「やっと分かってくれたんだ。」
と、そう聞こえた気がした。
そこから数日後の話だ。君が吐血をしたと聞いて、急いで君のもとへ行った。なのに、もう手遅れみたいだ……。先に着いてた医師が、申し訳なさそうな顔をして俺に言った。
「残念ながら……。」
この一言で俺は全てを察した。もう君はこの世に居ない……。イヌサフランの咲く原、現実なんて受け止められないままで、まだ、どこかで君が生きてることを信じたくて、俺は、今日も1日1日を過ごしている。
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