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第1話 恋する幼なじみ

恋する幼なじみ

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「えー、何か怪しいけど・・・・・・。でも、このクラスの男子は、パッとしない子ばかりだよねぇ。せっかくの高校生活なのに、どこかにいい男はいないものかなぁ」
「井上さん・・・・・・その中に俺も入ってるのかな?」
「なーに言ってるの。入学式早々に、ラブラブ登校でおまけに遅刻した神崎君が、そんな訳ないじゃない」
「亜子・・・・・・その話題は私にも飛び火するからね? 」
 亜子に釘を刺した優子は、平静を装いお弁当を片付け始めたのだ。

(ラブラブ・・・・・・そうなんだ・・・・・・周りからはそう見られてるんだ。何だか嬉しい・・・・・・けど直哉は全く鈍感なんだから)

 入学式から一ヶ月程すると、クラスではいくつかのグループが作られていた。しかし、一際目立つ少女だけは誰とも接しず、周りからはクールビューティと呼ばれていた。

 くりっとした瞳に茶色のショートヘアー。スタイルはモデルと遜色がなく、その美しさから放たれる独特のオーラが周りを寄せ付けなかった。

 男子にはモテていたのだが、その少女から発せられる独特なオーラが一般男性から守る様に出ており、男子生徒は全く近づく事が出来なかった。

「澤村さんって、不思議なオーラがあるよね。美人独特というか・・・・・・」
「へー、直哉ってああいう子がタイプなの? ふーん、やっぱり男子って、胸の大きいこの方がいいのね」

「そうは言ってないじゃないか。それに、優子は気にしすぎだよ。だって、女性の価値は胸で決まるもんじゃないよ」
「神崎君が言っても・・・・・・説得力に欠ける様な気がするのは私だけかな。いつも目線が・・・・・・ね?」
「た、たまたまだよ。なぁ、優子も何か言ってくれよ」
「どうせ私は、亜子や澤村さんの様に見る価値もない胸ですからねっ」

 顔を膨らませそっぽを向いてしまう優子を、慰めようと努力したが一向に機嫌が良くならなかったのだ。そんな二人を亜子は、微笑みながら静観しながら二人を観察していた。

 幼なじみだから仲が良いのか、それとも・・・・・・別の感情を抱いているのか。亜子は妄想を膨らませながら、自分でも気が付かないうちにニヤケ顔をしていたのだった。

「どうしたの亜子? いきなりニヤケて・・・・・・何かあった?」
「え? う、ううん。何でもないよ、何でも」
「ふ~ん、まっいっか。そうだ直哉、部屋は綺麗に片付けてる? 直哉のお母さんが、きちんとしてないと家に連れ戻すって言ってたよ」
「げ、あ~・・・・・・うん、た、多分綺麗に片付けてるよ。多分・・・・・・」

「・・・・・・その様子じゃ散らかしてるんでしょう。もう、しょうがないなぁ。幼なじみの好で片付けを手伝ってあげるよ。感謝しなさいよね?」
「助かるよ~、流石、優子だよね。名前の通り優しい!」
「褒めても何もないからね? ふぅ、全く、世話のかかる幼なじみだこと」
「う~ん・・・・・・やっぱり二人って・・・・・・付き合って・・・・・・」
『付き合ってません』

 直哉と優子が同時にすごい剣幕で否定し、その迫力に亜子は身を引いてしまう程であった。
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